今更聞きづらい「著作権」~病院・クリニックで流す音楽や映像から再確認

今更聞きづらい「著作権」~病院・クリニックで流す音楽や映像から再確認

今更聞きづらい「著作権」~病院・クリニックで流す音楽や映像から再確認

暦上はそろそろ冬に入りますが、いかがお過ごしでしょうか。

これからのシーズンはイベントごとが待ち構えており、特に商戦といわれている時期に入れば、街中で多くの音楽などを耳にすることが増えてきます。

ところで、先生方の中には音楽などを聴いたり、映像を観たりということが趣味という方もいらっしゃるかと思います。

趣味に没頭している際にはあまり気になりませんが、こういったものを利用したいと考える際にはどうしても「著作権」の話はしなくてはなりません。

今回は、改めて「著作権」に関し、病院・クリニックで流れる音楽・映像などの取り扱いの方面から少し考えてまいりたいと思います。

著作権とは

著作権とは、著作者が著作物を創作した際に生じる様々な権利をすべて指します。

「様々な権利すべて」と称したように「著作権は権利の束である」という言葉もあるほどで、著作権には「複製権」や「上映権」などの権利(支分権)があります。

つまり著作物を利用する際には利用目的などによって各権利(支分権)への許諾がそれぞれ必要になります。

そのため、著作権そのものに少しわかりづらい箇所があることも事実です。

法律的には著作権法にて定められており、目的は著作権法第1条で定義されています。

第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

著作権法

著作者・著作物に関しては今さらとなりますが、同法第2条にて以下のように定義されます。

名称意義
著作物思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(第2条1項)
著作者著作物を創作する者(第2条2項)

著作物って具体的には何があるの?と思う方もいらっしゃるかと思いますが、【言語の著作物】、【音楽の著作物】、【映像の著作物】、【建築の著作物】、【写真の著作物】、最近のものでいえば【プログラムの著作物】も入ってきています。

では著作物に永遠に著作権があるのかというと、そうではありません。

著作権には原則的保護期間があり、現在は著作者が著作物を創作した時点から著作者(共同著作権者の場合には最後に亡くなった著作権者)の死後70年までとなっています。

有名な作品などの著作権が切れると少し話題になったりもしますが、この著作権法は罰則規定があり、2018年には一部非親告罪(著作権者等の告訴なく公訴可能)となりました。

著作権・出版権・著作隣接権の侵害には10年以下の懲役刑または1,000万円以下の罰金刑が科せられ、また著作者人格権・実演家人格権の侵害などには5年以下の懲役刑または500万円以下の罰金刑が科せられます。

しかしこれは個人単位の話であり、法人や法人の代表者などが著作権などを侵害した場合には、なんと3億円以下の罰金刑が科せられます。

また近年の改正で、私的利用が目的であっても無断でアップロードされたものと知りながら違法でダウンロードなどを行った場合には、2年以下の懲役刑または200万円以下の罰金刑が科せられるようになりました。

ほかにも細かな罰則がありますので、気になる方は調べてみてください。

医療機関で音楽・映像を利用したい

ご自身の病院やクリニックをお持ちの先生の中には、待合室で、映画などの映像、テレビ番組、音楽などを流されている方もいらっしゃるかと思います。

それらを利用する際に実際に著作権の侵害にあたらないのか、改めて確認してみましょう。

映像

待合室でテレビ番組や映画などの映像を流す医療機関は多くあります。

特に小児科などでは、お子さんが飽きないようにキッズスペースなどでアニメなどがテレビ画面に映されているのを見かけます。

この件に関してはご存じかもしれませんが、過去に日本医師会からもしっかりと注意喚起がされていました。

結論を申し上げれば、待合室で市販の映像作品・録画物などを流すと、著作権侵害になる可能性が高いようです。

ただしリアルタイムで放送されるテレビ番組を映すことは著作権法上問題ないようです。

詳細に関しては医師会のページにございますので、ご不安な方はご確認くださいますと幸いです。

昨今は、医療機関向けに有料の広告サービスを行う企業もあり、例えば健診クリニックの待合室のモニターに内視鏡検査を行うよう働きかける広告を流すこともできるようです。

また近年当たり前になりつつある動画配信サービスなどは利用に際して各サービス規約を確認すると思いますが、概ね大手のサービスは商業利用が不可と明記されています。

一方で業務用の映像作品やケーブルテレビ契約などは月額の費用がかかるものの、流していても基本的に問題がありません。

基本的に迷ったら「業務用」や「商業利用」向けにサービスを展開しているかをしっかりと確認した方が良いでしょう。

音楽

医療機関で映像ではなく、市販のCD音源などでBGM音楽を流している場合もあるかと思います。

2002年4月まではBGM音楽であれば特にうるさく言われませんでしたが、現在は法律が改正され、一般商店などの概ねの施設では許諾・利用料の支払いが必要です。

しかし結論から言えば、「医療機関でBGM音楽として利用する際には、JASRACが管理している楽曲に関しては許諾手続き・利用料の支払いが当分不要」です。

JASRACへの許諾手続きが不要なBGMの利用方法

2. 使用料規定上、当分の間使用料免除となる利用
(1)福祉施設での利用
(2)医療施設(医療法・介護保険法に基づく施設)での利用
(3)教育機関での利用
(4)事務所、工場等での主として従業員のみを対象とした利用
(5)露店等での短時間で軽微な利用

各種施設でのBGM|JASRAC

市販のCD音源などを使用している場合にはJASRAC管理下の楽曲であれば、現状使用しても問題がないという訳ですね。

しかしながら注意したいのが、JASRAC管理下にない楽曲などもある点と、この利用に関しては「当分の間」という一言が付く(暫定処置に過ぎない)点です。

また著作権が切れた音楽なども特に利用料などはかかりませんが、コンサートなどを録音した音源などの場合には演奏権や著作隣接権などの別の問題が発生する可能性がありますので注意が必要です。

しかしながら先程「市販のCD音源を使用している場合には」という一文があったのを覚えていますでしょうか。

昨今多い「動画サイトに著作者が挙げた楽曲」「ストリーミング配信サービスの音楽データ」に関しては事情が若干異なります。

これらの場合には利用に際して各サービス規約を確認する必要がありますが、概ね先生方が思いつくであろう「大手サービス」は基本的に商用利用が不可と規約に明記されています。

この商用利用には当然ながら施設におけるBGM音楽としての使用も入っています。

この動画サイトやストリーミング配信サービスなどの問題は著作権(JASRACの管轄)ではなく、そもそものサービスの利用理由として適しているかどうかであることはご留意ください。

ただし、有線音楽放送など音源提供事業者の中にはJASRAC許諾(音源提供事業者が利用料を支払い)のため商用利用が可能なケースもあります。(規約をご確認ください。)

設備などの都合により、CDなどから音楽を流すのが難しい方はこちらの利用の検討もいかがでしょうか。

もちろんBGMの音源提供事業者の利用に際して費用はかかりますが、月額料金はCD代だと思えばさほど変わらない金額ですので、そこまで高額ではないとも言えるでしょう。

例外に関して

著作物を利用する際、「私的利用」であれば問題とならないことが多くあります。

例えば、休憩のために自分が楽しむために録画物や動画配信サービスを持ち込むなどの行為は、私的利用となるため問題がありません。

さらに例えば職員用食堂やバックヤードのみで流したりなど、従業員のみがBGM音楽を聴く場合にも「事務所、工場等での主として従業員のみを対象とした利用」となり、問題がありません。

※もともと医療機関で流す分には問題がありませんが、念のための追記です。

またラジオ放送の利用も特に問題がありませんが、インターネットラジオの場合には利用に許諾が必要になるケースも多いのでご注意ください。

最後に

以上、今回は医療機関での利用などを考慮した「著作権」に関して記載しました。

読んでいて、「あれは大丈夫だったかな……」と不安になった方もいらっしゃったかもしれませんが、知っているのと知らなかったのではやはり大きく違います。

もちろん、知らなかったからといって即座にトラブルなどに発展するとはなかなか考えにくいと言えます。

ただもしご不安な方は、是非参考リンクのWebサイトなどを確認してみることをおすすめします。

もし現在のご勤務先に何かしらのご不安を抱えているようであれば、我慢せず、是非とも医師ジョブにご相談ください。


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