オンライン診療実施の前に医師が知っておきたい基礎知識!受講すべき研修や遵守すべきポイントを解説

オンライン診療実施の前に医師が知っておきたい基礎知識!受講すべき研修や遵守すべきポイントを解説

オンライン診療実施の前に医師が知っておきたい基礎知識!受講すべき研修や遵守すべきポイントを解説

外来診療や訪問診療に次ぐ、新たな診療形態として注目を集める「オンライン診療」。

コロナ禍における医療提供手段としても利用され、今後も普及拡大が期待されています。

しかし、オンライン診療の導入にあたり、疑問や不安を抱えていらっしゃる先生も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、実際にオンライン診療を導入するにあたり受講すべき研修や遵守すべきポイントなど、事前に知っておきたいオンライン診療の基礎知識を詳しくご紹介したいと思います。

オンライン診療の基礎知識

オンライン診療とは?

オンライン診療とは、スマートフォンやタブレット端末などを用いて、対面ではなくオンライン上で診療を行う方法です。

厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、 遠隔診療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為と定義されています。

オンライン診療は、当初は離島・へき地などにおける限定的な実施が想定されており、「遠隔診療」と呼ばれていました。しかし、情報通信技術の著しい進歩に伴い日常的にICTを活用した診療のニーズが高まり、2018年の診療報酬改定で「オンライン診療料」が新設。情報通信機器を用いた診療は「オンライン診療」と定義され、新たにガイドラインが策定されました。

当時は課題も多くなかなか一般に浸透しなかったオンライン診療ですが、コロナ禍において受診控えの対策として利用され、注目を集めました。時限的な規制緩和が行われたこともあり、導入を検討する医療機関も増加し、2022年の診療報酬改定ではオンライン診療の実施ルールが大幅に緩和され、今後さらなる普及が期待されています。

オンライン診療の基本理念

オンライン診療を実施するにあたっては、医師・患者の双方が以下の目的を念頭に置いて診療を行うべきだと定められています。

  1. 患者の日常生活の情報も得ることにより、医療の質のさらなる向上に結び付けていくこと
  2. 医療を必要とする患者に対して、医療に対するアクセシビリティ(アクセスの容易性)を確保し、よりよい医療を得られる機会を増やすこと
  3. 患者が治療に能動的に参画することにより、治療の効果を最大化すること

 

特に、医師においては

  • 医師-患者関係と守秘義務
  • 医師の責任
  • 医療の質の確認及び患者安全の確保
  • オンライン診療の限界などの正確な情報の提供
  • 安全性や有効性のエビデンスに基いた医療
  • 患者の求めに基づく提供の徹底

などの基本理念に従い、安全で適切なオンライン診療を提供することが求められています。

出典:厚生労働省 オンライン診療の適切な実施に関する指針

オンライン診療のメリット

オンライン診療は患者側だけでなく、医療機関にとってもメリットのある診療形態です。

簡単にまとめると、それぞれ以下のようなメリットがあります。

患者側のメリット医療機関側のメリット
・自宅や職場から診察が受けられる
・通院時間や待ち時間、交通費を節約できる
・薬を郵送で受け取ることができる
・感染リスクを抑えられる
・新たな患者獲得が期待できる
・再診率の向上が見込める
・遠方の患者様へのフォローが可能になる
・院内での感染防止対策になる

もちろん、オンライン診療にはデメリットもあります。対面診療に比べて得られる情報が少なく、その場で検査や処置をすることも出来ないため、診療が難しいケースも多いです。しかし、継続的な治療が必要となる慢性疾患などとは相性がよく、上記のメリットを最大限に活かすことが可能です。

オンライン診療の実施には研修受講が必須

オンライン診療を実施する医師には、研修の受講が義務付けられています。

オンライン診療の実施には、医学的知識のほか、情報通信機器の使用や情報セキュリティに関する知識も必要となります。そのため、厚生労働省によるオンライン診療を行う医師向けの研修を受け、オンライン診療を実施する際に必須とされる知識を習得しなければなりません。

また、2019年より例外的に可能となった初診からのオンライン診療による緊急避妊薬の処方に関しても、婦人科以外の医師がこの処方を行うには、別途研修の受講が義務とされています。

 

研修プログラムは、それぞれ以下の科目で構成されています。

オンライン診療を行う医師向けの研修
・オンライン診療の基本的理解とオンライン診療に関する諸制度
・オンライン診療の提供に当たって遵守すべき事項
・オンライン診療の提供体制
・オンライン診療とセキュリティ
・実臨床におけるオンライン診療の事例
緊急避妊薬の処方に関する研修
・経口避妊薬(OC)について理解すべき事項-各種避妊法とOC全般
・緊急避妊(Emergency Contraception:EC)

出典:オンライン診療研修実施概要|厚生労働省/オンライン診療研修・緊急避妊薬の処方に対する研修 (telemed-training.jp)

なお、研修はe-learning形式となっています。インターネット上でいつでも受講が可能で、料金はかかりません。

研修の受講申し込みは、以下のページから可能です。
オンライン診療研修お申込み:https://telemed-training.jp/entry

オンライン診療で遵守すべき事項とは?重要ポイントを抜粋

オンライン診療の実施にあたっては、対面診療の際に遵守すべきポイントに加えて、特に注意が必要な点があります。こちらでは、オンライン診療で遵守すべき重要事項のポイントを「オンライン診療の適切な実施に関する指針」からいくつか抜粋してご紹介いたします。

医師・患者双方の合意

オンライン診療の実施にあたっては、オンライン診療を実施する旨について、医師と患者の間で合意が必要になります。合意を行うにあたっては、患者がオンライン診療を希望する旨を、同意書などで明示的に確認する必要があります。また、「診療計画」として定めるオンライン診療の具体的な実施ルールに関しても、双方の合意が必要になります。

オンライン診療は、あくまでも患者側からの求めがあってはじめて成立するもので、医師側の都合で行うことは出来ません。

医師・患者双方の本人確認

オンライン診療で患者が医師に対して心身の状態に関する情報を伝えるにあたり、医師は医師であること、患者は患者本人であることを相手側に示す必要があります。対面診療後のオンライン診療など、当然に医師・患者本人であると認識できる状況においては省略が可能ですが、原則としては医師と患者双方が、医師免許証や健康保険証などの身分確認書類を用いて、互いに本人確認を行わなくてはいけません。

オンライン診療であっても、直接の対面診察と同様に、姓名を名乗ってもらうなどの患者確認をすることが望ましいとされています。

不利益事項(オンライン診療のリスク)の説明

個別の疾病状況にもよりますが、オンライン診療は対面診療に比べて得られる心身状態に関する情報が限定されます。医師はこのようなオンライン診療であるが故の診療の限界などを正しく理解した上で、生ずる恐れのある不利益などに関しても、患者やその家族に対して事前に説明を行わなければなりません。

患者がオンライン診療の利点だけでなくそのリスクも理解をした上で、実施を求めた場合に実施されるべきであるとされています。

診療計画の作成と保存

医師はオンライン診療を行う前に、患者の心身状態について十分な医学的評価を行い、その評価に基いて「診療計画」を定め、2年間は保存することが求められています。診療計画には、疾病名や治療内容・対面診療の頻度やタイミングなど、記載しなければいけない事項が指定されています。

また、診療計画は文書やデータによって、患者が参照できるようにすることが望ましいとされています。

リアルタイムの映像・音声による診療(チャットのみは不可)

オンライン診療では、可能な限り多くの診療情報を得るために、リアルタイムの視覚・聴覚の情報を含む通信手段を採用しなければなりません。直接の対面診療に代替し得る程度の有用な情報が得られる場合には、補助的な手段として画像や文字などの情報を活用することは出来ますが、それのみでオンライン診療を完結させることは禁止されています。

 

なお、こちらでご紹介したのはごく一部になりますので、詳細に関しては必ず厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」をご確認ください。

オンライン診療で使うツール

オンライン診療の実施にあたっては、ビデオ通話が可能なアプリやツールが必要になります。

ビデオ通話での診療という側面だけで言えば、LINEやZoom・Skypeなど、一般向けビデオ通話アプリを使うことも可能です。しかし、予約や問診・決済・薬の配送など、一連のシステムを備えた便利なオンライン診療専用のアプリも多数リリースされています。

こちらでは、一般向けビデオ通話アプリを使用するケース、オンライン診療専用アプリを使用するケースのメリット・デメリットをそれぞれご紹介いたします。

一般向けビデオ通話アプリ

オンライン診療における「診療」のプロセス自体は、LINEやZoom、Skypeのような一般向けビデオ通話アプリを使用することも可能です。患者側が普段から使用している割合も高いため、オンライン診療のために新しいアプリをダウンロードする手間がかからないなどのメリットがあります。基本的には無料サービスのため、導入コストがかからないのもメリットと言えるでしょう。

しかし、オンライン診療に特化したツールではないため、診療前の予約や事前問診、また診療後の決済・薬の配送など、診療以外のプロセスは他のシステムと組み合わせて使用する必要があります。複数のシステムを横断しなければいけないため、手順が煩雑になるのがデメリットです。また、一元的なデータ管理が難しくなるため、セキュリティ面にも細やかな配慮が必要になります。

オンライン診療専用アプリ

オンライン診療専用アプリを使用する場合、予約・問診・診療・決済・薬の配送など、オンライン診療の一連のプロセスを一つのシステムで完結させることが出来ます。機能が充実しており、セキュリティ面もあらかじめ配慮されているのは大きなメリットです。また、サポート体制が充実しているツールであれば、導入・運営に際して疑問や困りごとをすぐに相談出来るというメリットもあります。

一方で、一定の運用コストがかかるのはデメリットと言えるでしょう。また、数多くのアプリがリリースされているため、どれを導入すべきかを事前に精査し、目的に応じて選択する必要があります。電子カルテなどの既存システムと連携できるかも、重要なポイントです。

現在リリースされている主要なアプリとしては、「CLINICS」「curon」「YaDoc」などがあります。

確認しておきたい、オンライン診療に関する情報源

スムーズにオンライン診療を導入するには、事前に情報を確認しておくことが重要です。

こちらの記事でご紹介した内容を含め、以下に事前に確認しておきたいオンライン診療に関する情報源をまとめました。まずは確認必須の情報で概要を掴み、確認推奨の情報もご覧いただくと、オンライン診療に対してより理解が深まると思います。

オンライン診療の導入の際には、是非参考にしていただければ幸いです。

確認必須オンライン診療の適切な実施に関する指針

https://www.mhlw.go.jp/content/000889114.pdf

オンライン診療研修実施概要

https://telemed-training.jp/entry

確認推奨オンライン診療入門 ~導入の手引き~

https://www.med.or.jp/dl-med/doctor/omc/guidance_intro.pdf

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A

https://www.mhlw.go.jp/content/000903640.pdf

オンライン診療に関するホームページ

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/rinsyo/index_00010.html

 

まとめ

今回は、昨今注目を集める「オンライン診療」に関して、事前に知っておきたい基礎知識をまとめてご紹介しました。

オンライン診療は、コロナ禍での一時的な規制緩和、2022年の実施ルールの大幅な緩和により、今後さらなる普及が期待されています。対面診療とは異なる側面も多く事前の準備が必要になりますが、専用アプリの台頭など、導入しやすい環境が整えられており、市場としては追い風の状況です。

最近は、業務内容にオンライン診療のある常勤求人や、オンライン診療のみの非常勤求人なども少しずつ増えてきました。オンライン診療関連の求人が出た際に、すぐにご紹介することも可能ですので、ご興味のある先生は是非医師ジョブにご相談ください。

 


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