医師の転科の失敗リスクと注意点、成功させるポイントを解説

医師の転科の失敗リスクと注意点、成功させるポイントを解説

医師の転科の失敗リスクと注意点、成功させるポイントを解説

医師の働き方として、自身の専門診療科を選択した後は生涯その科でキャリアを重ねるのが一般的です。

しかし、医師としてキャリアを積むなかで、様々な理由から転科を考える先生もいらっしゃるでしょう。ただ、医師にとって転科は大きな決断です。これまで、そしてこれからのキャリアを考えると簡単に決められることではありません。

転科には、確かにリスクが伴います。しかし、それでも転科をする医師がいるのは、やはり転科でしか得られないメリットもあるからです。目的がしっかりしていれば、転科は医師としてより成長するための契機にもなります。

そこで今回は、医師が転科する理由、転科のリスクやデメリット、そして転科を成功させるためのポイントなどを詳しく解説いたします。

医師が転科をする理由とは?

医師が転科を考える理由は様々ですが、よくあげられるのが以下の5つの理由です。転科の場合、各理由によって得られるメリットも変わってきます。

いまの診療科が忙しすぎる

日本では、以下のようにさまざまな医師不足が生じています。

医師総数の不足
特定診療科における医師不足
特定地域における医師不足
病院勤務医師の不足
特定時間帯における医師不足

 

これらのなかでも、特に「特定診療科における医師不足」は、医師が転科を考えるきっかけとなる場合があります。人手不足の職場で働き続けると、心身の疲弊や体調不良などが起こることもあるでしょう。地域や職場レベルの人手不足なら、別の病院への転職で悩み・問題が解決できるかもしれません。一方で、特定診療科の医師不足によって自身の過労や多くの負担が生じている場合、職場を変えるだけでは業務過多の状況を解決できないケースも多く、転科を考えざるを得なくなることもあるのです。

ワーク・ライフ・バランスを大切にしたい

この理由は、先述の人手不足や忙殺などと関係する部分でもありますが、どちらかといえば、負担の少ない診療科に移ることで家族との時間を持ちたい、将来の留学に向けた語学の勉強をしたい……といった、自身の希望を叶えるための前向きな理由になります。

たとえば女性の場合、結婚を機に妊娠出産に備えて、当直や残業が少なく家庭との両立が図りやすい診療科に転科をするパターンもあります。また、生涯現役を貫くために、高齢でも負担の少ない診療科への転科を考えるパターンも多いです。

別の診療科に興味がわいた

この理由は、以下のようにきっかけは非常に多彩です。

  • 自由診療の可能性に興味がわいた
  • 高齢化社会への危機感から在宅医療に興味がわいた
  • 予防医療の重要性を感じた
  • 終末期医療の大切さに気付いた など

現在の診療科で働くなかで関連する分野に興味を持ち、本格的にそちらの道に進みたいと考えるケースもあれば、現在の診療科への適性に疑問を感じ、他の診療科に興味がわくこともあります。なかには、自身の家族の闘病や看取りをきっかけに在宅医療や終末期医療などに関心を持ち、転科を考えるケースもあります。

人間関係の悩みを解決したい

医師の場合、同じ診療科であれば、転職をしても学会や地域医療で前職の同僚や上司と顔を合わせることも多くあります。医師は非常に狭い世界なため、同じ診療科にいる限りその関係を断つことは難しいでしょう。そのため、人間関係の問題で悩んだ末に、「もうあの上司と会いたくない」という状況になった場合、断腸の思いで診療科自体を変える選択をすることもあります。

また、職場のコメディカルとの人間関係に悩んだ末に、多職種との関わりが少ない健康診断医や産業医に転科するケースもあります。

年収をアップさせたい

今の診療科では思うように稼げない、開業資金を貯めたい、効率よく稼ぎたい……など、経済的理由から転科を考える場合もあります。一般的に、自由診療に携わる医師の給与は高水準です。そのため、美容皮膚科や美容外科に転科して収入アップを目指すケースも少なくありません。

また、皮膚科医や形成外科医が将来的に開業を目指す場合、保険診療だけでなく美容領域も診ることができれば収益アップが見込めます。そのため、美容スキルの習得を目的に転科するケースも多いです。

医師の転科における失敗リスクと注意点

転科には、上記のような悩みを解決し、希望を叶えられるというメリットがあります。しかし、医師の転科は必ずしもすべての人が成功するわけではありません。こちらでは、転科によって生じるリスクやデメリットを解説いたします。

新しいことを一から勉強する必要がある

新しい診療科では、学び直しが必要なことが多いです。たとえば、内科→老人内科などの類似の診療科に転科した場合は、これまでの経験や知識を活かせることもあるでしょう。

一方で、内科→精神科のように全く異なるカテゴリへの転科や、在宅診療のように患者さんとの関わり方が大きく変わる場合などは、研修医のような気持ちで学び直しをする必要があります。転科先で活躍するためには、人並み以上の努力をする覚悟が必要です。

前の診療科より忙しさが増す可能性もある

転科先として選んだ診療科によっては、転科前より忙しさが増す可能性もあるでしょう。また、転科後の忙しさは診療科だけでなく、新たな職場の環境によっても変わります。たとえば転科と共に転職をする場合、仮に転職先が慢性的な人手不足に陥っていれば、想定以上の業務量に忙殺される事態にもなりかねません。

また、ワーク・ライフ・バランス重視で緩やかに働ける診療科に転科しても、その環境での学び直しの必要性が高ければ、プライベートでの時間は確保しづらくなるかもしれません。診療科のイメージだけで判断すると、理想と現実のズレが生じる場合もあるので注意が必要です。

年収が下がることがある

労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、勤務医で年収が高い診療科は以下の通りです。

年収が高い診療科(勤務医)

1位:脳神経外科

2位:産婦人科

3位:外科

4位:麻酔科

5位:整形外科

出典:勤務医の就労実態と意識に関する調査

そのため、たとえば脳神経外科からリハビリテーション科に転科する場合、年収が大幅に下がる可能性もあるでしょう。また、属性の異なる科目へ転科した場合も、新人として扱われるため年収もそれ相応のものになる可能性が高いです。ただ、年収は勤務先や医師のスキル・経験などによっても変わってくるため、一概に言えるものではありません。

年下の医師が上司や指導医になることがある

高年齢で転科をすれば、自分よりも年下の先輩医師に仕事を教えてもらうこともあるでしょう。一般的に、年下上司・年上部下の組み合わせで仕事をする場合、お互いに気まずさやコミュニケーションの問題などが生じることもあります。特にこれまで自分が指導する側だった場合、年下医師からの指導を苦痛に感じることもあるかもしれません。しかし、転科先で新たにキャリアを築いていくためには、邪魔なプライドは捨てて謙虚に取り組む姿勢が必要になります。

いまの診療科のキャリアが途絶えてしまう

属性が全く異なる分野に転科すれば、これまで積み上げてきたキャリアや実績は失うことになります。また、転科によって別の分野での学び直しを始めると、前の診療科の最新治療法などのトレンドについていけなくなるでしょう。そのため、一度転科をすると、再度元の診療科に戻ることは難しくなります。転科をする場合、キャリアが途絶えるとともに、失敗したときにそう簡単に戻れない覚悟が必要です。

医師の転科を成功させるコツとポイント

ここまで、医師が転科を考える主な理由や、転科のリスクなどをご紹介しました。では、それらを踏まえた上で実際に転科を成功させるには、どのような点に注意すればよいのでしょうか?こちらでは、医師が転科を成功させるポイントについて解説いたします。

そもそも「転科が必要なのか?」を考える

たとえば、僻地医療・在宅医療・終末期医療などへの関心があり、「この分野で自分の力を試したい!」という場合なら、転科によって自己実現できる可能性が高いでしょう。また、将来の開業に備えた美容外科への転科なども、目標達成などのメリットにつながりやすいと言えます。

一方で、たとえば人手不足による過労や忙殺される問題を解消したい場合、学び直しが必要となる転科がベストな選択になるとは限りません。そのため、明確な診療科やビジョンが決まっていない場合、まずは「そもそも転科が必要なのか?」や「転職ではダメなのか?」をじっくり考えた方がよいでしょう。

興味を持った診療科や転科に成功した医師の話を聞く

転科を考える場合には、医師のネットワークのなかで、気になる診療科で活躍する医師や転科の成功者の話を聞いてみるとよいでしょう。その際には、メリットだけでなくデメリットや注意点に耳を傾けることも大切です。転科の成功者に具体的な話を聞くことで、必要な学び直しのレベルや、受け入れ先探しのポイントなども見えてくるでしょう。

医師の求人紹介サービスに登録してみる

転科を考えたことはあっても、実際に転科する医師は実は多くありません。そのため、自身のネットワークに転科成功者がいない場合は、医師のキャリアに詳しい求人紹介サービスに登録するのもおすすめです。担当のコンサルタントに現状の悩みや転科を考えた理由などを伝えると、「そもそも転科が必要なのか?」や「転職ではダメなのか?」の答えも出やすくなるでしょう。

医師ジョブであれば、サービスの利用はすべて無料で、キャリアの相談から転職まで一貫したサポートが受けられます。また、登録したからといって必ずしも転職する必要はありません。まずは相談だけといった場合にも、気軽に利用できます。

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まとめ

今回は、医師の転科に関して詳しく解説いたしました。
転科を考える理由は人それぞれですが、多いのは以下のような理由です。

医師が転科する主な理由
・診療科レベルでの人手不足による忙しさを解決したい
・目標や理想のためにワーク・ライフ・バランスを整えたい
・日々の業務や生活のなかで別の診療科に興味がわいた
・医師同士やコメディカルとの人間関係の悩みを解決したい
・今よりも収入を増やしたい

転科が上手くいけば、上記のような悩みを解決することも可能です。しかし、転科は必ずしも成功するとは限りません。安易な転科には、以下のようなリスク・デメリットもあります。

医師が転科するリスク・デメリット
・新しい診療科で一から学び直しが必要になる
・診療科や職場環境によって忙しさが増す可能性がある
・収入アップが目的でない場合は収入が下がる可能性がある
・自分より年下の医師が指導医になる場合がある
・今の診療科でのキャリアが途絶え後戻りもできなくなる

転科を成功させるためには、上記を踏まえ本当に転科が必要なのかをよく考える必要があります。可能であれば、転科成功者から具体的な話を聞けるとよいでしょう。身近に転科経験者がいない場合は、求人紹介サービスを活用するのも一つの手です。コンサルタントに相談することで自分の気持ちを整理したり、転科すべきか否かを冷静に判断するための一助となるでしょう。

医師ジョブでは、転科の受け入れが可能な医療機関の求人も多数ございます。お悩みがあれば、是非お気軽にご相談ください。


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