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◇ 医師ジョブマガジン 2023.12.05号 ◇
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2023年11月、身体疾患を合併する精神疾患救急患者を受け入れる病院が千葉県千葉市でOPENしたとの報道がありました。
この新病院は、千葉市内にあった三次救急病院と国内初の精神科救急専門病院が統合して誕生しました。
新病院では、同一病院で身体疾患を合併する精神疾患救急患者にも対応していくことが可能となります。
また千葉市内でも海沿い(幕張近く)に開院されたこともあり、病院自体に災害時の医療機能強化も行われました。
いずれ基幹災害拠点病院に指定される予定だそうです。
またDMATとDPAT(災害派遣精神医療チーム)双方を所有しており、同一病院で運用できることも特徴的と言えそうです。
ちなみに言うまでもありませんが、今回の新病院の身体疾患を合併する精神疾患患者救急対応は並列モデルとなります。
念の為記載しておきますが、提唱されている対応モデルとしては下記の2つがあります。
・並列モデル
精神科と身体科の両方の機能を同一医療機関内で対応する自己完結型
・縦列モデル
精神科医療機関と身体疾患の治療が可能な医療機関とで別に対応する連携型
国内では縦列モデルが中心ですが、これは国内の救急のルートが一般救急・精神救急が別で整備されてきた歴史も一因としてあります。
特に精神科単科病院が多い国内においては、そうせざるをえなかったとも言い換えられるかもしれません。
5疾病5事業の一つに精神疾患が置かれてからずっと、身体疾患を合併する精神疾患救急患者への速やかな対応は目下の課題となっています。
しかし以前からも問題視されていますが、身体疾患を合併する精神疾患救急患者の受け入れが可能な医療機関は未だ少なく、受け入れ先を探すのに難航するケースも多いのが現状です。
特に高齢化する国内で、認知症患者の救急搬送は今後更に増えることが予想される一方で、搬送先探しに苦慮することも少なくありません。
今や日本の社会問題のひとつとして考えられている精神疾患患者の増加。
認知症だけでなく、ストレス社会によるうつ病や統合失調症、児童精神領域なども年々増加しています。
そしてそれに比例し、更なる身体疾患を合併する精神疾患救急患者への対応が増えていくことも想定されます。
もちろん、そういった救急対応に対する取り組みも必要ではあるかもしれませんが、必要なことはそれだけではありません。
例えば、合併症患者への対応は医師だけでなく看護師の負担も大きいため、オペレーションの改善、人材確保や教育なども重要となってきます。
つまりは救急医療の現状への課題と改善の動きも同時並行的に必要だと言えるでしょう。
未来の救急医療の在り方がより良い方向へと進むために出来ることは何か、もっと議論自体が進むことを願うばかりです。
このコラムは2023年12月に配信した記事です