【医師ジョブマガジン】「オンライン診療」の展望

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
◇ 医師ジョブマガジン 2023.12.19号 ◇
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

2020年以降、新型コロナウィルス感染症対策として普及が拡大した「オンライン化」。

教育面ではオンライン授業やオンラインレッスン、ビジネス面ではオンライン商談やリモート営業、そして多くの企業で在宅勤務(リモートワーク)が導入されました。

その他にもリモート飲み会、オンライン婚活、オンライン結婚式などなど。
withコロナ時代を通して、あらゆる場面で新たなオンラインビジネスが展開されました。

いうまでもなく、医療現場においてもこのオンライン化(オンライン診療)は継続的に普及しております。

令和3年のオンライン診療の実施要件の緩和により、オンライン診療に対応した医療機関数は緩やかではありますが上昇傾向にあります。

先日、某大学の研究グループがうつ病などの精神科診療において、オンライン診療と対面診療に同等の治療効果がみられたという研究論文を国際的な医学雑誌で発表しました。

この研究では、国内19の医療機関に通院するうつ病・不安病・強迫症の患者様199名を対象に、「オンライン診療と対面診療を併用」と「対面診療のみ」の2グループに分け、半年間の診療を比較していました。

研究論文では、治療の継続率や患者様の満足度において大きな違いはないと結論づけています。

つまり、精神科のオンライン診療においての有効性が証明される結果となりました。

特に精神科では、周囲からの差別・偏見への恐怖や予約が取りづらい等で、通院したくてもできない患者様もいらっしゃいます。

オンライン診療の普及により、対面診療だけでなく他の選択肢の一つとして、患者様側が検討できるのが大きなメリットですね。

またこ研究論文では精神科領域の患者様に限った話となりましたが、もちろん他の診療科目においても医療機関側がオンライン診療を導入する利点はいくつかあります。

・院内感染リスクを考慮した診療が実施できる
・移動時間の制約が軽減できることで患者様も継続的に診察を受診できる
・対面診療と比較すると、時間枠内で効率的に診察を実施しやすい
・患者様の生活環境を把握しやすい
・日常生活する環境での診療のため、患者様がリラックスした状態で受診できる

ただし一方でデメリットも当然あり、その最たるものが触診・検査・処置できないという点です。
そう考えますと、「オンライン診療」には自ずと限界があります。

顔色や症状が画面越しであることで明確に分からないことや、電波状況による音声や画像の不具合なども考慮せざるをえません。
そうなると、対面診療よりも対応が困難になる可能性もあります。

しかしそれらを補うため、多くの医療機関が行っているように「対面診療・オンライン診療の組み合わせ」という選択肢もあるでしょう。
とにかくオンライン診療によって、患者様の利便性はもちろん、診察される先生方にとってもより働きやすい環境につながるといいですよね。

このコラムは2023年12月に配信した記事です