外科医の平均年収は?地域別の年収や収入をアップする方法も紹介

数ある診療科のなかでもハードワークのイメージが強い外科医。
独り立ちするまでの修行期間が長く、多忙な割に低賃金というイメージを持たれがちです。こうしたイメージは、果たして外科医の実態に即したものなのでしょうか。

今回は、外科医の年収相場や働き方について詳しく解説すると共に、年収アップの方法についてもご紹介します。

医療施設に従事する医師の総数

厚生労働省「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、2022年末時点での全国の届出医師数は34万3,275人です。そのうち、病院やクリニックなどの医療施設に従事する医師は32万7,444人となっており、全医師の約95.4%が医療施設に従事する形となっています。

主たる診療科別に見ると、医療施設に従事する医師のうち、臨床研修医を除いて一番多いのは内科の6万1,149人で全体の18.7%を占めています。次いで整形外科の2万2,506人(8.5%)、小児科の1万7,781人(5.4%)となっており、外科は8番目に多い1万2,775人(3.9%)です。

また、外科・呼吸器外科・心臓血管外科・乳腺外科・気管食道外科・消化器外科(胃腸外科)・肛門外科・小児外科を合わせた外科医の数は、2万7,634人となっています。

現状の課題

日本では医師数は年々増加しているものの、地域や診療科の偏在による医師不足が深刻化しています。外科医も例外ではなく、厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、20年前と比較して外科医の平均年齢は47.4歳から53.7歳に上がっており、外科を志望する若手医師が減っていることがうかがえます。

日本外科学会は、このまま外科医の減少が続くと地域医療の維持にも深刻な影響を与える恐れがあると危惧しており、若手外科医の確保は外科医療を遅滞・衰退させないための重要課題であると述べています。

外科医の平均年収

少し古いデータになりますが、労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、病院に勤務する外科医の平均年収は1374.4万円となっています。この調査における全診療科を含めた平均年収は1261.1万円であることから、外科医の年収は平均よりも高い水準にあることがわかります。

また、年収分布については以下の通りとなっています。

▼ 外科医の年収分布

主たる勤務先の年収 全体に占める割合(%)
300万円未満 2.1%
300万~500万円未満 2.4%
500万~700万円未満 4.7%
700万~1000万円未満 11.8%
1000万~1500万円未満 27.9%
1500万~2000万円未満 39.1%
2000万円以上 12.1%
500万円未満・計 4.5%
1000万円以上・計 79.1%

出典:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査

最も多いのが1500万~2000万円未満の年収帯で、全体の約40%を占めています。次に多いのが1000万~1500万円未満の年収帯で、全体の約30%です。1000万円以上の割合が全体の約80%と大部分を占めており、逆に500万円未満の割合はわずか4.5%となっていることから、多くの外科医が平均以上の年収を得ていることがわかります。

外科医の平均年収が高い理由は、勤務内容や勤務時間が関係していると考えられます。外科は手術による治療を特徴としており、高い技術力が求められるほか、緊急対応などで時間外の勤務も発生しやすい診療科です。比較的ハードな働き方を求められる傾向にあり、こうした外科ならではの勤務特性が給与にも反映されていると考えられます。

また、外科医の平均年収が高い一因として、外科医の高齢化も挙げられます。先述の通り、近年は若手の外科医が減っており、外科医の平均年齢が上がっています。こちらの調査が行われたのは2011年と少し前になりますが、「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、2012年時点でも全科の医師の平均年齢が46.5歳であるのに対して、外科医の平均年齢は51.6歳と高めです。医師の年収は基本的に年齢と共に上がっていくことから、若手医師が減少している外科においては、年収水準の高いベテラン層によって平均年収が引き上げられている側面もあるでしょう。

加えて、外科医は男性の比率が圧倒的に高いという点にも留意する必要があります。もちろん、性別によって給与自体に差が付くわけではありませんが、女性医師の方がライフステージの変化によって働き方をセーブする傾向が強く、男性医師と比較して年収が低くなりやすいです。男性比率が高いということは、女性比率が高い診療科と比較してそういった影響も反映されにくいため、その点でも平均年収が高くなりやすいと考えられます。

なお、近年は働き方改革の影響などもあり、調査当時とは少し状況が変わっている部分もあるでしょう。詳細な引用数値については大まかな傾向として、あくまでも参考程度にご覧ください。

地域別・施設形態別の外科医の平均年収

地域別・施設形態別にみた外科医の平均年収は、以下の通りとなっています。

▼ 地域別・施設形態別にみた外科医の平均年収

平均年収 下限平均 上限平均
関東地方 1861.7万円 1427.4万円 2296.1万円
近畿地方 1621.4万円 1402.5万円 1840.4万円
病院 1620.8万円 1385.1万円 1856.5万円
クリニック 2265.7万円 1652.4万円 2879万円
介護施設 1238.7万円 1166.9万円 1310.5万円
総計 1793.4万円 1449.4万円 2137.5万円

※2024年9月時点の「医師ジョブ」保有求人を基に平均値を算出

なお、上記データは求人を基に算出しており、多くが民間病院やクリニックの求人で、大学病院などの年収データは含まれておりません。そのため、全体的に平均値が高めに出ている点はご留意ください。

地域別にみると、関東と近畿では関東の方が平均年収は高く出ています。関東地方では、郊外やクリニックなどの高額求人に引っ張られる形で平均年収が引き上げられている傾向がありました。また、近畿地方は公的病院などの求人の割合が高かったこともあり、関東と比べて平均年収が低めに出たようです。
施設形態別にみると、クリニック>病院>介護施設の順で平均年収が高くなっています。病院やクリニックでは上限年収と下限年収の開きが大きく、特にクリニックでは院長職の募集なども多いことから、年収幅が広くなっています。一方、介護施設では上限年収と下限年収の開きがあまりなく、年収水準自体が他と比較して低いことがわかります。

年収への満足度

労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」では、給与・賃金の額に対する満足度の調査も行っています。外科は「満足している」「まあ満足」と回答した割合が38.8%となっており、全科平均よりも低くなっています。また、「少し不満」「不満」と回答した割合は42.3%となっており、こちらは全科のなかで3番目に高くなっています。

平均年収は全科平均より高いにも関わらず、年収に不満を抱えている外科医が多いことから、業務量に見合った収入が得られていないと感じている外科医も少なくないことがうかがえます。

診療科別の医師の平均年収

では、外科以外の診療科の平均年収はそれぞれどのくらいの水準にあるのでしょうか。労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、病院に勤務する各診療科の医師の平均年収は以下の通りとなっています。

▼ 診療科別にみた医師の平均年収

診療科 平均年収
内科 1247.4万円
外科 1374.2万円
整形外科 1289.9万円
脳神経外科 1480.3万円
小児科 1220.5万円
産科・婦人科 1466.3万円
呼吸器科・消化器科・循環器科 1267.2万円
精神科 1230.2万円
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 1078.7万円
救急科 1215.3万円
麻酔科 1335.2万円
放射線科 1103.3万円
その他 1171.5万円
全科 1261.1万円

出典:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査

平均年収が最も高いのは「脳神経外科」で1480.3万円、最も低いのは「眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科」の1078.7万円です。外科の平均年収は「脳神経外科」「産科・婦人科」に次いで3番目に高い金額となっています。

外科医の働き方の特徴

外科医といえば、一般的にハードワークのイメージが強い診療科です。厚生労働省「医師の勤務実態について」によると、病院に勤務する常勤外科医の週当たりの勤務時間は61時間54分となっており、全診療科のなかで1番長くなっています。また、週当たりの勤務時間が60時間以上の割合でも、外科は約51%と脳神経外科に次いで2番目に高くなっています。

こうしたデータをみると、外科医=ハードワークというイメージは間違っていないと言えるでしょう。外科医不足に加えて、手術の低侵襲化に伴う長時間化や、患者層の高齢化に伴う周術期管理の負担増なども、外科医の長時間勤務の要因となっています。
こうした多忙を極める働き方は外科学会でも問題として把握しており、勤務改善に向けた取り組みが検討されています。

外科医の専門分野

一口に外科医と言っても、扱う分野によって診療科は細分化されています。大まかな括りとしては、外科全般を幅広く扱う「一般外科」と、専門分野に特化した診療を扱う「専門外科」の二種類に分けられます。

一般外科

一般外科は、外科全般を幅広く扱う診療科です。扱う領域に明確な定義はないものの、一般的に消化器外科と重なる部分が多く、消化器や腹部の診療を中心に、乳腺や甲状腺、また外傷や救急なども含め幅広い疾患を扱います。

外傷については、簡易的な処置は一般外科でも行うものの、骨折や脱臼の手術などは主に整形外科が担うケースが多いです。一方、内臓損傷が疑われるような腹部外傷については、整形外科ではなく一般外科での対応となります。

専門外科

専門外科は、特定の臓器や部位の疾患を専門的に扱う診療科です。主な診療科としては、以下のようなものが挙げられます。

 消化器外科
 心臓血管外科
 呼吸器外科
 小児外科
 乳腺外科
 脳神経外科
 整形外科
 形成外科
 美容外科

また、上記の専門外科からさらに細分化された診療科もあります。たとえば、消化器外科のなかでも肝胆膵外科や肛門外科に分かれていたり、整形外科のなかでも脊椎外科や関節外科、手外科に分かれていたりと、扱う部位ごとにかなり細かく専門分化されている診療科もあります。

外科医に共通する業務

外科医というと手術のイメージが強いですが、手術以外にも多くの関連業務を担当しています。専門によってそれぞれ求められる知識・技術は異なりますが、ここでは外科医全般に共通する主な業務について解説します。

一般外来や入院患者を担当する

外科医も内科医と同じように、外来業務や入院患者さんの受け持ちがあります。外来では手術前後の患者さんの通院治療、病棟では手術前後の患者さんの入院管理というように、手術適応の患者さんをメインに担当することが多いです。

外来では、症状や怪我の状況の聞き取り、各種検査などを行い、その結果から傷病名の診断や治療の調整を行います。病棟では、回診や各種検査などを通じて患者さんの全身状態を把握し、経過観察や処置、コメディカルへの指示出しなどを行います。

治療方法・手術適用の可否を判断する

傷病名の診断が付いたら、患者さんの状態に応じてどのような治療を行うか、手術適応の可否も含めて検討を行います。治療方針の決定は一人で行うわけではなく、必要に応じて複数の医師でカンファレンスを行います。治療方針に迷う患者さんについては各専門医が意見交換を行うことで、患者さんにとって最適な治療法を検討することが必要です。

手術を行う場合には手術計画を立て、手術内容について患者さんやそのご家族への説明を行います。

簡易な処置や手術を行う

外科で行う処置・手術は幅広く、手術室以外で行う簡易な処置もあります。患部の洗浄や切開・縫合といった簡易な処置を外来で行ったり、他の診療科の先生から処置の依頼を受けたりすることもあります。

手術室で行う手術は、事前に立てた手術計画に沿って行います。患部の切除や外傷部位の修復、人工物の留置など、大がかりな手術では複数の医師や看護師が協力し、何時間もかけて行うものもあります。手術内容によって術式はさまざまで、近年は腹腔鏡や手術支援ロボットを用いた手術も増えています。

周術期管理チームの一員を担う

外科医にとって、術前・術後の周術期管理も重要な業務です。術前は手術が安全に行えるよう、徹底的な術前評価を行いリスクの最小化に努めます。また、術後は合併症の兆候がないかも含め経過観察を行い、必要な処置について対応や指示出しを行います。

侵襲性の高い手術や周術期リスクの高い患者さんの手術では、担当医のほか麻酔科医や看護師・薬剤師・栄養士・理学療法士・歯科医など多職種からなる周術期管理チームが介入し、術前から術後まで一貫して専門的なケア・サポートを行うケースもあります。

外科医の年収をアップする方法

外科医として働くなかで、もう少し年収をアップしたいと考えることもあるでしょう。外科医の年収水準は比較的高いものの、環境や働き方を変えることでさらなる収入アップが見込めるケースもあります。ここでは、外科医が年収をアップする方法を4つご紹介します。

転職

一つ目は、より高収入が見込める職場への転職です。医師の年収相場は勤務先の規模や経営形態、地域によっても大きく変わるため、同じような働き方でも環境を変えるだけで年収アップが見込めるケースもあります。

また、当直やオンコールなど、時間外の勤務負担を減らせる職場へ転職するのも一案です。業務量と収入面のアンバランスさが解消されれば、手取り収入はあまり変わらなくても、収入に対する満足度が上がる可能性もあるでしょう。

専門領域を極める

二つ目は、専門領域を極める方法です。外科領域は専門分化が進んでおり、特定の専門領域を極めることは自身の市場価値を高めることにもつながります。基本領域に加え、サブスペシャリティ領域の専門医・指導医を取得するなど、資格の取得によって給与アップが見込めるケースもあるでしょう。

また、難易度の高い手技や術式が可能な医師は少ないため、転職市場でも重宝されます。実績をアピールすることができれば、厚待遇も期待できるでしょう。

診療の幅を広げる

三つ目は、診療の幅を広げる方法です。専門性の高い医師が求められる一方で、幅広く外科領域全般をカバーできる医師も必要とされています。特に中小規模の病院では専門外科を設けておらず、一般外科として外科診療を一手に担っているケースも多いことから、専門にこだわらずフレキシブルに対応できる医師は重宝されます。

地域医療においてもニーズが高く、医師不足の地域では高給与で募集をかけている医療機関もあるため、ニーズを上手く見極めれば収入アップも叶うでしょう。

開業

四つ目は、自身でクリニックを開業する方法です。経営が軌道に乗れば、大幅な年収アップを叶えることも可能でしょう。ただし、開業には多額の資金と入念な準備が必要であり、臨床スキルだけでなく経営スキルも必要になります。少なからずリスクも負うことになりますので、収入アップのみが目的であれば少し慎重になった方がよいでしょう。

また、病院と比較すると、クリニックではできることに限りがあります。設備面や人手のなどの関係で、大掛かりな手術などは難しくなるでしょう。さらに、一般的に外科は継続的な来院がされにくく、集患においてはマーケティングが非常に重要になります。クリニックのコンセプトを明確にしたり、外科単科での開業ではなく内科も標榜したりと、なにかしらの工夫が必要になるでしょう。

外科医の年収が地域によって異なる理由

外科医に限らず、医師の年収水準は地域によってばらつきがあります。では、なぜ地域によって年収差が生まれるのでしょうか。ここでは、外科医の年収が地域によって異なる理由について解説します。

医師が不足している地域では年収が高い

地域によって年収に差が出る理由の一つとして、地域偏在による医師不足が挙げられます。厚生労働省「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、主たる診療科が外科(※)の医師の人口10万人対医師数は、岡山県が最も多く32.2人、埼玉県が最も少なく15.1人となっています。

医師不足の地域ほど人材確保が難しく、各医療機関が高給与を提示するなど市場原理が働きやすいこともあり、地域による年収差が生じると考えられます。

※ 外科・呼吸器外科・心臓血管外科・乳腺外科・気管食道外科・消化器外科(胃腸外科)・小児外科の合計

担う役割が幅広く違いがある

地域によって外科医に求められる役割が異なることも、年収に地域差が生まれる一因です。地方などの医師不足の地域では、地域医療を維持するために医師一人が担う業務の幅が広く、業務量も多くなりがちです。多くの医師で役割分担するということが難しく、ハードワークを強いられる分が年収に反映されている場合もあるでしょう。

こうした役割の違いはもちろん地域内でもあるものの、都心と地方で比較するとその違いはより顕著であると考えられます。

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外科医の仕事にやりがいを感じているものの、年収や待遇には不満があるという場合、一番手っ取り早い解決方法は転職です。転職を検討する場合には、転職エージェントを活用するとよいでしょう。

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まとめ

外科医の平均年収は他科と比較して高めであるものの、長時間勤務になりがちでハードな働き方を求められる傾向があります。専門分野や地域によって担う業務の幅や求められるスキルは異なるものの、業務量と収入のバランスの悪さに不満を抱えている医師も少なくないようです。

さらなる収入アップを目指す場合、経験を積んで専門を極めたり、診療の幅を広げたりとスキルアップを図るほか、転職や開業という選択肢もあります。環境を変えることは収入アップだけでなく、ワークライフバランスの向上にもつながるかもしれません。転職をご検討される場合には、ぜひ医師ジョブにご相談ください。

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▼ 参考資料
労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査
厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計
厚生労働省「医師の勤務実態について
日本外学会「外科医希望者の伸び悩みについての再考
医師の働き方改革に関する検討会「外科医の働き方改革に関する課題と必要な取組
職業情報提供サイト job tag「外科医 – 職業詳細