【医師ジョブマガジン】保険適用対象が拡大した不妊治療の現状

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
◇ 医師ジョブマガジン 2023.11.21号 ◇
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

2022年4月から公的医療保険の適用対象が広がった「不妊治療」。
人工授精などの一般不妊治療、対外受精・顕微授精などの生殖補助医療が保険適用化されたことは、世間でも大きく報道されていましたね。

厚労省より先日、対象拡大後に保険提供された医療費は約895億円に達したとの発表がありました。

患者数は全体で37万人に対して治療割合は下記の通りです。
約27万人 体外受精や顕微授精などの生殖医療
約10万人 人工授精・タイミング法などの一般赴任治療
約500名 男性不妊治療

不妊治療が保険適用されたことにより、経済的負担が軽減され、治療へのハードルが下がりました。

医療機関や関係する先生方としては様々思うところはあるかもしれません。
しかし現状、世間的には問題がありつつも、概ね肯定的に受け取られている印象です。

また、以前の助成制度の際にはあった所得制限(夫婦合算730万円未満)が保険適用となって撤廃されたことで、医師の所得でも適用となったこともプラスだと言えます。

ただ、下記の様に保険対象技術の範囲や回数制限については細かい設定があることから、まだ治療を受けたくても受けられていない方がいることも事実です。

◆ 年齢や回数の要件(体外受精・顕微授精)
年齢:治療開始時の女性の年齢が43歳未満であること
回数:治療開始時期の女性の年齢が40歳未満の場合は通算6回まで(1子ごと)
※ 回数に関しては40歳以上43歳未満の場合は通算3回まで(1子ごと)
※ 他にも婚姻関係の確認条件もあり

妊娠は年齢が大きく関係するということもあるため、年齢制限を設定するのは必須です。
ただ今後の医療技術や社会が変動することが考えられる以上、将来的な年齢制限の緩和も検討される可能性があります。

晩婚化・少子化はコロナ禍の影響もあり加速しており、2021年の出生数で過去最少人数を記録したことは記憶に新しいかと思います。

不妊治療の保険適用化は、急務と言われる少子化対策の施策の一つにすぎませんが、社会的理解は不足しているように思います。

こうした治療では、仕事を休んだり、早退したりすることも考えられます。
法人側や同じ職場で働く方の不妊治療に対する「社会的理解」も並行して広げる必要があります。

不妊治療の保険適用はまだ開始したばかりです。
今後どのような政策が進められるのか、出生数への影響や治療の選択肢の拡大の有無など、まだまだ状況は変わりそうですね。

このコラムは2023年11月に配信した記事です