メドテックとは?期待される背景と医療にもたらす変化

医療とテクノロジーの融合により、技術革新を目指す取り組みのことを「メドテック」と呼びます。

オンライン診療や遠隔画像診断、AI画像診断、ロボット手術、遺伝子検査、治療用アプリなど、すでに普及が進んでいるものも多数あり、実際に診療で活用しているという先生もいらっしゃるでしょう。テクノロジーの発展に伴い、医療の分野でもさまざまな技術が取り入れられてきています。

医療業界の発展はもちろん、日本経済の発展という視点でも注目されており、メドテックは今後もさらなる発展・普及が期待されています。そこで今回は、メドテックの概要や期待される背景、そしてメドテックが医療にもたらす変化について詳しく解説します。

メドテックとは

メドテックとは、「Medical(医療)」と「Technology(テクノロジー)」を組み合わせた造語です。IoT・AI・ロボティクスなど、最先端のテクノロジーを医療に活用する取り組みのことを指します。 医療とテクノロジーの融合により、業務効率化や新しい治療法の開発など、医療業界に新たなイノベーションを生むことが期待されています。

成長産業として注目が集まるほか、医療費増大や医療従事者の不足、地域格差など、日本の医療業界が抱える課題の解決策としても注目されている分野です。

メドテックとヘルステックの違い

メドテックの類似語として、ヘルステックというものもあります。ヘルステックは、「Healthcare(ヘルスケア)」と「Technology(テクノロジー)」を組み合わせた造語です。両者には共通する部分もありますが、主に以下のように区別されています。

メドテック…病気の診断や治療を目的として使用する技術
ヘルステック…病気の予防や健康管理、診察後のアフターサービスを目的として使用する技術

メドテックは医療従事者の業務をサポートするものが多く、ヘルステックは生活者の自己管理をサポートするものが多くなっています。

日本のメドテック市場

日本は医療改革のスピードが遅く、医療分野の研究開発では諸外国に遅れを取っている状況です。メドテックの分野でも同様に、全般的には日本企業よりグローバル企業の方が存在感を見せています。

しかし、売上高に占める研究開発費率では、国内のメドテック企業もグローバル平均とのギャップが小さいことが分かっています※1。つまり、メドテック分野においては日本も研究開発に十分なコストをかけており、グローバル競争で十分に戦える可能性があるということです。

国内のメドテック市場は今後大きく拡大し、2026年時点では160億円になるという予想もあります※2。大手企業の参入や有力スタートアップの台頭も目立っており、グローバル展開を見据えた事業化をサポートするメドテック支援プログラムも開催されるなど、メドテック市場は今後さらなる成長が期待されています。

※1参考資料:McKinsey & Company「MedTech がもたらす日本企業の成長機会
※2参考資料:矢野経済研究所「診断・診療支援AIシステム市場に関する調査を実施(2022年)

メドテックへの期待が高まる背景

メドテック市場は、なぜこれほど成長が期待されるのでしょうか。ここでは、メドテックへの期待が高まる背景について解説します。

日本の経済発展への期待

日本経済は長らく低迷しており、これを成長軌道に戻すことが喫緊の課題となっています。そのような中で、日本経済の成長につながる分野として期待されているのが医療市場です。

日本の医療市場は世界的に見ても規模が大きく、高齢化による医療ニーズの高まりもあり、今後も成長が期待できる分野です。メドテックの推進によって医療に技術革新が起これば、生産性向上の助けとなり、日本経済の発展にもつながると期待されています。

医療経済の健全化への動き

高齢化社会において、日本では医療費増大が問題となっています。医療経済の健全化には医療費の削減が不可欠で、そのためには国民の健康寿命の延伸も課題のひとつとされています。

健康寿命の延伸には、病気の予防はもちろん、早期発見も大切です。病気を早期に発見できれば治る可能性も高く、治療期間の短縮にもつながり、医療費の削減にもつながります。メドテックが発展すれば今よりも病気の診断精度が向上し、早期発見・早期治療が可能になると期待されています。

医療従事者の負担削減の必要性

高齢化が進む日本では、医療業界の人手不足が深刻化しています。特に地方では人手不足が顕著で、医療の地域格差も問題となっています。また、人手不足によって労働環境が悪化し、それが離職につながるという悪循環も生じています。

人手不足を解消するためには、業務負担の軽減と労働環境の整備が重要です。メドテックの推進により遠隔医療や医療用ロボットの開発などが進めば、人手不足や地域格差の解消にもつながると考えられています。

オーダーメイド医療への転換

より効率的・効果的な新しい医療として、ゲノム医療が注目されています。遺伝子情報のデータベースの充実や、AIによる情報処理能力の大幅な向上などにより、ゲノム医療は近年急激に進歩している分野です。

がんゲノム医療や一般人向けの遺伝子検査サービスも広がりを見せており、今後さらなる普及が期待されています。ガイドラインやエビデンスに基づいた従来の医療から、よりパーソナライズされたオーダーメイド医療への転換が始まっており、それを可能にする手段としてメドテックに期待が集まっています。

メドテックにより医療はどう変わるのか

メドテックによって、医療は今後どのように変わっていくのでしょうか。ここでは、メドテックがもたらす変化について解説します。

遠隔医療を実現

メドテックに活用される技術のひとつがIoTです。IoTを搭載した医療機器や診断機器を使用することで、インターネットを介して医療情報の記録や解析が可能になります。バイタルサインの情報などもリアルタイムで共有できるようになり、遠隔でも行き届いた診療が可能になるでしょう。

また、遠隔地にいる医師同士が連携して診療を行うことも可能になります。画像診断の領域では、放射線診断専門医が遠隔で読影を行うサービスも展開されています。

診断の精度と速度が向上

ビッグデータの分析やAI(人工知能)もメドテックに活用される技術です。医療ビッグデータを分析することにより、これまで気付けなかった病気の関連性や法則を見出せる可能性があり、さらに高度な診断・治療が可能になると考えられています。

また、AIを用いた診断も実用化が進んでいます。AIのわずかな異変を読みとる技術や病気の予兆を察知する技術は、医師の診断の正確性と効率性の向上に寄与します。AIによる画像認識技術を活かせば、レントゲンやCTの画像から自動的に病気を発見する自動診療も可能になると考えられています。

医療従事者と患者の負担が軽減

メドテックでは、ロボティクスも積極的に活用されています。代表的なのは、手術支援ロボットです。手術支援ロボットは作業精度の向上や手術時間の短縮に寄与し、医師の負担を軽減します。また、手術痕の最小化など、患者側の負担軽減にもつながります。

その他にも、看護師や介護士のための動作補助ロボットや、リハビリを支援するパワードスーツなども開発されています。手術からケアに至るまで、ロボティクスの活用は広く身体的な負担軽減に貢献すると考えられています。

診察時間外の疾患管理が可能に

ウェアラブル機器の発達・普及により、生活習慣や睡眠の状態、体調の変化などをリアルタイムに記録することが可能になりました。活動量や日常的な生体情報の変化の把握は、生活習慣病への対処や慢性疾患への細やかなケアの実現につながります。

また、保険適用の治療用アプリも開発されています。服薬状況や食事・運動の情報などを把握し、個々の状態に合わせたアドバイスによって、日常的な自己管理をサポートするものです。従来では難しかった診療時間外の疾患管理が可能になり、より高い治療効果が期待されています。

まとめ

今回は、メドテックについて詳しく解説しました。

メドテックとは、最先端のテクノロジーを医療に活用し、医療業界にイノベーションを生む取り組みのことを指します。成長産業として注目されており、日本が抱える医療費の増大や医療人材の不足、地域格差といった問題の解決策としても期待されています。

メドテックの推進は、遠隔医療の実現や診断精度の向上、治療や施術の負担軽減、新しい医療の実現など、さまざまな形で医療の質の向上につながると考えられています。すでに普及しているサービスや製品もあり、今後もさらに発展・普及が進んでいくでしょう。

メドテックは、医師の働き方や業務内容にも大きく関わる分野です。理解を深め上手く使いこなすことが出来れば、より良い医療の実現と共により良い労働環境の実現にもつながるでしょう。

 

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