第118回医師国家試験(2024年)の合格率・合格者数は?合格基準についても紹介

2024年に行われた第118回医師国家試験は、過去10年で最高の合格率となりました。一般問題・臨床実地問題のボーダーラインも過去最高水準を記録しており、非常にレベルが高かったと言えるでしょう。

今回はそんな第118回医師国家試験を振り返り、合格率や合格者数・合格基準をご紹介すると共に、前年との比較や来年に向けての考察、そして合格後の手続きについても解説します。第119回医師国家試験で合格を目指す方にも、参考になれば幸いです。

2024年の第118回医師国家試験の合格者数・合格率は?

第118回医師国家試験の合格者数・合格率は、以下の通りとなっています。

▼第118回医師国家試験 合格状況

受験者数 合格者数 合格率
全体 10,336人 9,547人 92.4%
新卒者 9,489人 9,048人 95.4%
既卒者 847人 499人 58.9%

出典:厚生労働省「第118回医師国家試験の合格発表について」を基に作成

受験者数は10,336人(うち新卒9,489人)、合格者数は9,547人(うち新卒9,048人)、合格率は92.4%(うち新卒95.4%)という結果です。新卒・既卒を合わせた全体の合格率は、過去10年で最高となりました。

男女別の合格率は、男性が91.7%、女性が93.6%。合格者に占める女性の割合は34.6%で、前年から大きな変化はありません。
今回の国試では、受験者数・合格者数・合格率の全てにおいて、過去10年で最大値を記録する結果となりました。

合格基準

医師国家試験の合格基準は、必修問題/必修以外の一般問題・臨床実地問題/禁忌肢の3項目それぞれに設けられています。
第118回医師国家試験の合格基準は以下の通りです。

● 必修問題の総得点が160点以上(正答率80%)
● 必修問題を除く一般問題及び臨床実地問題の総得点が230点以上(正答率76.7%)
● 禁忌肢問題の選択数が3問以下

出典:厚生労働省「第118回医師国家試験の合格発表について

必修問題の合格基準は、毎年変わらない絶対基準です。一方、必修問題以外の一般問題・臨床実地問題の合格基準は、毎年変動する相対基準となっています。

今年の傾向や来年の合格基準の予想

今回の医師国家試験は、例年と比べてどのような傾向があったのでしょうか。ここからは、今年の傾向や来年の予想をみていきます。

2024年の傾向と前年との比較

第118回医師国家試験の合格率は、前年の91.6%より0.8%上昇し、92.4%となりました。この数値は、過去10年で最も高い数値となっています。近年上昇傾向にある一般問題・臨床実地問題の合格基準も前年の74.6%から2.1%上昇し、76.6%と過去最高水準となりました。
前年と比較すると、ひねりのある問題や初めて見るような目新しい問題は少なく、問題の難易度がやや易化したという声もあり、ボーダーラインの上昇につながったようです。

また、今回の国試からは、2023年に発表された新たな出題基準(ガイドライン)である「令和6年版医師国家試験出題基準」が適用されています。新たな出題基準が適用された年の国家試験では、過去にも平均得点率や合格基準点が上昇する傾向があったことから、今回のボーダーラインの上昇も同様の流れではないかという見方もあるようです。

来年の合格基準は上がる?

来年の第119回医師国家試験は、過去最高水準の合格基準となった今回と同様に、引き続き高い合格基準になることが予測されています。
国試は年々難化していると言われていますが、問題自体が難しくなっているというよりも、受験生のレベルが上がっていると考えるのが妥当なようです。

低学年のうちから映像授業やクエスチョン・バンクを開始する人が増えており、問題の正答率が上がることでボーダーラインが押し上げられている可能性が考えられます。
高い得点率が求められる試験においては、多くの人が解ける問題を落とさないことが重要になります。

これから医師国家試験を受ける方へのアドバイス

医師国家試験は、概ね9割以上の人が合格する試験です。しかし、ただ単に高い点数を取れば受かるという訳ではありません。
こうした試験では、他の人が解けない難問を解くことよりも、他の人が解ける問題を確実に解くことが重要になります。勉強法に迷ったら、周囲と同じような知識レベル・思考回路を身につけるためにも、王道の勉強法を選ぶのがよいでしょう。

また、試験を迎えるにあたっては、メンタルケアや体調管理も大切になります。特に直前期になると、不安や焦り、試験のプレッシャーから心身に不調をきたしてしまうケースもあります。体を動かしたり、友達と会ったりと、自分に合った息抜きの方法を見つけておくとよいでしょう。

第118回 医師国家試験の学校別の合格者状況

第118回医師国家試験の学校別の合格状況は、以下の通りとなっています。
合格率が一番高かったのは、新卒・既卒共に100%の自治医科大学です。

▼ 第118回医師国家試験 学校別合格者状況

学校名 総数 新卒者 既卒者
受験者数 合格者数 合格率 受験者数 合格者数 合格率 受験者数 合格者数 合格率
 北海道大学医学部 122 110 90.2% 113 107 94.7% 9 3 33.3%
 旭川医科大学 150 134 89.3% 133 125 94.0% 17 9 52.9%
 弘前大学医学部 163 144 88.3% 147 136 92.5% 16 8 50.0%
 東北大学医学部 140 135 96.4% 130 127 97.7% 10 8 80.0%
 秋田大学医学部 134 129 96.3% 128 126 98.4% 6 3 50.0%
 山形大学医学部 129 124 96.1% 116 114 98.3% 13 10 76.9%
 筑波大学医学専門学群 142 137 96.5% 136 132 97.1% 6 5 83.3%
 群馬大学医学部 139 135 97.1% 129 129 100.0% 10 6 60.0%
 防衛医科大学校 72 70 97.2% 66 64 97.0% 6 6 100.0%
 千葉大学医学部 115 111 96.5% 108 106 98.1% 7 5 71.4%
 東京大学医学部 127 116 91.3% 118 111 94.1% 9 5 55.6%
 東京医科歯科大学医学部 112 107 95.5% 107 104 97.2% 5 3 60.0%
 新潟大学医学部 126 118 93.7% 119 116 97.5% 7 2 28.6%
 富山大学医学部 114 106 93.0% 109 104 95.4% 5 2 40.0%
 金沢大学医学部 138 126 91.3% 121 117 96.7% 17 9 52.9%
 福井大学医学部 125 117 93.6% 120 115 95.8% 5 2 40.0%
 山梨大学医学部 124 117 94.4% 112 109 97.3% 12 8 66.7%
 信州大学医学部 122 113 92.6% 112 109 97.3% 10 4 40.0%
 岐阜大学医学部 120 112 93.3% 112 108 96.4% 8 4 50.0%
 浜松医科大学 125 118 94.4% 119 113 95.0% 6 5 83.3%
 名古屋大学医学部 113 108 95.6% 103 103 100.0% 10 5 50.0%
 三重大学医学部 137 129 94.2% 133 127 95.5% 4 2 50.0%
 滋賀医科大学 124 116 93.5% 119 114 95.8% 5 2 40.0%
 京都大学医学部 123 111 90.2% 108 103 95.4% 15 8 53.3%
 大阪大学医学部 118 110 93.2% 107 104 97.2% 11 6 54.5%
 神戸大学医学部 133 126 94.7% 122 120 98.4% 11 6 54.5%
 鳥取大学医学部 128 117 91.4% 120 111 92.5% 8 6 75.0%
 島根大学医学部 114 103 90.4% 97 93 95.9% 17 10 58.8%
 岡山大学医学部 129 120 93.0% 118 113 95.8% 11 7 63.6%
 広島大学医学部 130 119 91.5% 116 113 97.4% 14 6 42.9%
 山口大学医学部 119 108 90.8% 109 103 94.5% 10 5 50.0%
 徳島大学医学部 126 111 88.1% 122 111 91.0% 4 0 0.0%
 香川大学医学部 123 114 92.7% 117 110 94.0% 6 4 66.7%
 愛媛大学医学部 118 108 91.5% 111 105 94.6% 7 3 42.9%
 高知大学医学部 127 112 88.2% 118 109 92.4% 9 3 33.3%
 九州大学医学部 129 111 86.0% 119 105 88.2% 10 6 60.0%
 佐賀大学医学部 103 98 95.1% 97 95 97.9% 6 3 50.0%
 長崎大学医学部 136 122 89.7% 125 116 92.8% 11 6 54.5%
 熊本大学医学部 119 111 93.3% 107 103 96.3% 12 8 66.7%
 大分大学医学部 113 107 94.7% 103 102 99.0% 10 5 50.0%
 宮崎大学医学部 115 106 92.2% 106 100 94.3% 9 6 66.7%
 鹿児島大学医学部 113 108 95.6% 105 104 99.0% 8 4 50.0%
 琉球大学医学部 107 101 94.4% 100 96 96.0% 7 5 71.4%
 国立 計  5336  4955  92.9%  4937  4732  95.8%  399  223  55.9%
 札幌医科大学 120 114 95.0% 112 107 95.5% 8 7 87.5%
 福島県立医科大学 134 127 94.8% 128 125 97.7% 6 2 33.3%
 横浜市立大学医学部 99 96 97.0% 96 95 99.0% 3 1 33.3%
 名古屋市立大学医学部 115 113 98.3% 111 109 98.2% 4 4 100.0%
 京都府立医科大学 118 111 94.1% 109 106 97.2% 9 5 55.6%
 大阪公立大学医学部 107 102 95.3% 102 99 97.1% 5 3 60.0%
 奈良県立医科大学 117 106 90.6% 109 103 94.5% 8 3 37.5%
 和歌山県立医科大学 113 97 85.8% 107 94 87.9% 6 3 50.0%
 公立 計 923  866  93.8%  874  838  95.9%  49  28  57.1%
 岩手医科大学 130 117 90.0% 112 105 93.8% 18 12 66.7%
 自治医科大学 122 122 100.0% 121 121 100.0% 1 1 100.0%
 獨協医科大学 116 110 94.8% 108 104 96.3% 8 6 75.0%
 埼玉医科大学 136 128 94.1% 125 119 95.2% 11 9 81.8%
 杏林大学医学部 118 111 94.1% 109 108 99.1% 9 3 33.3%
 慶應義塾大学医学部 113 108 95.6% 110 108 98.2% 3 0 0.0%
 順天堂大学医学部 136 134 98.5% 136 134 98.5% 0 0 0.0%
 昭和大学医学部 129 123 95.3% 123 121 98.4% 6 2 33.3%
 帝京大学医学部 122 113 92.6% 100 98 98.0% 22 15 68.2%
 東京医科大学 111 108 97.3% 106 104 98.1% 5 4 80.0%
 東京慈恵会医科大学 109 100 91.7% 103 98 95.1% 6 2 33.3%
 東京女子医科大学 127 117 92.1% 107 103 96.3% 20 14 70.0%
 東邦大学医学部 138 128 92.8% 121 115 95.0% 17 13 76.5%
 日本大学医学部 148 140 94.6% 125 122 97.6% 23 18 78.3%
 日本医科大学 128 126 98.4% 125 124 99.2% 3 2 66.7%
 北里大学医学部 120 116 96.7% 114 112 98.2% 6 4 66.7%
 東海大学医学部 137 129 94.2% 109 109 100.0% 28 20 71.4%
 聖マリアンナ医科大学 121 117 96.7% 107 105 98.1% 14 12 85.7%
 金沢医科大学 118 97 82.2% 107 92 86.0% 11 5 45.5%
 愛知医科大学 122 118 96.7% 120 118 98.3% 2 0 0.0%
 藤田医科大学 123 119 96.7% 120 117 97.5% 3 2 66.7%
 大阪医科薬科大学 119 114 95.8% 111 108 97.3% 8 6 75.0%
 関西医科大学 132 120 90.9% 122 112 91.8% 10 8 80.0%
 近畿大学医学部 106 99 93.4% 100 94 94.0% 6 5 83.3%
 兵庫医科大学 114 113 99.1% 111 110 99.1% 3 3 100.0%
 川崎医科大学 133 120 90.2% 117 107 91.5% 16 13 81.3%
 久留米大学医学部 119 101 84.9% 107 97 90.7% 12 4 33.3%
 福岡大学医学部 126 106 84.1% 113 96 85.0% 13 10 76.9%
 産業医科大学 100 99 99.0% 98 97 99.0% 2 2 100.0%
 東北医科薬科大学医学部 102 97 95.1% 101 96 95.0% 1 1 100.0%
 国際医療福祉大学医学部 132 131 99.2% 131 130 99.2% 1 1 100.0%
 私立 計  3807  3581  94.1%  3519  3384  96.2%  288  197  68.4%
 認定 239 124 51.9% 139 80 57.6% 100 44 44.0%
 予備試験 31 21 67.7% 20 14 70.0% 11 7 63.6%
 その他 計  270  145  53.7%  159  94  59.1%  111  51  45.9%
 総合計  10336  9547  92.4%  9489  9048  95.4%  847  499  58.9%

 

出典:厚生労働省「第118回医師国家試験の学校別合格状況」を基に作成

医師免許申請手続きの流れ

医師国家試験合格後は、医師免許の申請手続きを行う必要があります。有資格者として医業を行うためには、免許申請を行い、厚生労働省が管理する有資格者の籍簿に登録(医籍登録)される必要があります。
国試の合格発表から研修が始まるまでは意外と時間がないため、合格後は速やかに手続きを行いましょう。

申請場所・必要書類は以下の通りです。

申請場所

・住所地の保健所(一部県については県庁)
 

 

必要書類

・医師免許申請書

・健康診断書(発行日から1ヶ月以内)

・住民票の写しまたは戸籍抄(謄)本(発行日から6ヶ月以内)

・収入印紙60,000円分

・登録済証明書用はがき(希望される方のみ)

免許申請を行わず登録前に医業を行った場合は、行政処分の対象となります。研修開始までに確実に登録が間に合うよう、国試終了後は合格を前提にあらかじめ必要書類を揃えておき、合格発表当日に手続きを済ませてしまうのが安心です。

免許申請をしてから免許証が手元に届くまでは、2~3ヶ月かかります。免許証の交付前に医籍登録の証明が必要な場合には、登録済証明書が代わりとなります。登録済証明書を発行してもらうには、免許申請時に登録済証明書用はがきを提出する方法のほか、2024年からはオンラインでの申請も可能になりました。研修先の病院から提出を求められる場合があるため、こちらの申請も忘れないようにしましょう。

医師国家試験の歴史

戦後に設置された医師国家試験は、当初こそ低い合格率だったものの、1960年代にもなると9割以上の合格率が当たり前となります。一時期、98%の方が合格されるようになり、1973年には高すぎる合格率から調整が入ることに。その結果、合格率が極端に下がり、1980年代には合格率6割という年も記録されています。そうして何度も出題などへの検討が重ねられ、直近20年は概ね合格率8~9割を維持する形となっています。

国試の相対評価の是非は未だに議論になりますが、人数調整という意味合いでも基本的にはこのままだと考えられます。実際、禁忌肢(今回は選択3問以下)は導入から概ね20年経っていますが、改善検討会の報告書上では撤廃の予定はないとされていました。
引き続き、将来の有資格者数を見据えた相対評価による合格者のコントロールは行われそうです。

まとめ

過去10年で最高の合格率となった第118回医師国家試験は、受験者数も過去10年で最多であったことから、合格者数も過去10年で最多となりました。
近年は概ね90%前後と高い合格率を推移している医師国試ですが、今後もこの傾向は続くものとみられています。

ボーダーラインの高い試験においては、多くの受験生が解ける問題の取りこぼしが致命傷になりかねません。早いうちからコツコツと試験対策に取り組み、網羅的に知識を身につけることが大切です。
晴れて合格した暁には、医師免許の申請手続きや、研修先への連絡も忘れないようにしましょう。