給与水準の低い若手医師にとって、貴重な収入源の一つがアルバイトです。
研修医や専攻医として働く先生のなかには、給与が低く不満を感じている方や、奨学金返済のためにもっと稼ぎたいとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。研修を通して医師としてのスキルを習得するのはもちろんのこと、生活するうえでは収入を確保することもまた大切です。
研修医・専攻医がバイトを考える場合、まずはルールを把握することが必要です。そこで今回は、そもそも研修医・専攻医はバイトが可能なのか、それぞれのバイト事情や注意点を解説し、合わせておすすめのバイトについてもご紹介したいと思います。
研修医・専攻医でもバイトはできる?
初期臨床研修中の研修医は、原則としてバイトが禁止されています。一方、初期臨床研修を終え、専門研修を受ける専攻医になれば、バイトをすることが可能です。こちらでは、研修医・専攻医それぞれのバイト事情について解説いたします。
専攻医と研修医の医師は何が違うのでしょうか。この専攻医の流れや新しい専門医制度についてもこの記事で解説していきます。…
研修医は原則バイト禁止
研修医は臨床研修に専念する必要があるため、原則として診療関連のバイトは禁止されています。研修医のバイト禁止については、医師法や臨床研修に関する省令で以下のように明記されています。
医師法 第十六条の二 |
診療に従事しようとする医師は、二年以上、都道府県知事の指定する病院又は外国の病院で厚生労働大臣の指定するものにおいて、臨床研修を受けなければならない。 |
医師法 第十六条の五 |
臨床研修を受けている医師は、臨床研修に専念し、その資質の向上を図るように努めなければならない。 |
臨床研修に関する省令 第十条 |
臨床研修病院は、第四条若しくは第五条において準用する第四条の規定により提出し、又は前条の規定により届け出た研修プログラム以外の研修プログラムに基づいて臨床研修を行ってはならない。 |
出典:医師法|e-Gov法令検索/医師法第16条の2第1項に規定する臨床研修に関する省令
飲食店やコンビニなど、診療以外のバイトについては明記されていませんが、研修医は臨床研修を受けることが第一なので、バイト自体を禁止している病院がほとんどです。研修医の間は研修に専念し、基本的な診療能力を身につけることに力を注ぎましょう。
専攻医はバイト可能
初期臨床研修を修了して専攻医(従来の後期研修医)になれば、診療関連のバイトができるようになります。ただし、勤務先の病院がバイトを禁止しているケースもあるため、事前確認は必須です。
診療のバイトは一般的なバイトより時給が高いため、生活費や奨学金返済のためにバイトをする医師も多くいます。また、バイトは本業以外で給料をもらえるというだけではなく、臨床経験や専門性を磨くことができるというメリットもあります。
バイトには、大きく分けて単発勤務が基本となる「スポット」と、定期勤務が基本となる「非常勤」の2種類があります。バイトをする場合、それぞれの働き方の特徴を理解した上で、本業との両立を前提に無理なく働ける方を選ぶことが大切です。
専攻医(後期研修医)がバイトをする際の4つの注意点
専攻医がバイトをする場合、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。こちらでは、バイトを始める前に確認しておきたい4つの注意点について解説いたします。
事前に就業規則を確認する
先述したように、病院によって初期研修医に限らずバイト自体が禁止されている場合があります。まずは就業規則を確認し、勤務先がバイトを許可しているか必ず調べるようにしましょう。
就業規則で禁止されているのにバイトをした場合、見つかれば解雇などの重い処分が下されることもあります。専攻医の研修を続けられなくなる恐れもありますので、隠れてバイトするといった行為は避けた方が堅実です。
本業との両立を最優先に考える
バイトによっては、業務内容に当直や遠方勤務が含まれていることもあります。勤務条件や勤務内容を確認し、睡眠不足に陥ったり、勤務先に遅刻したりすることがないよう注意が必要です。
慣れるまでは想定以上に疲れが溜まってしまう場合もあるため、本業に支障をきたすような働き方はせず、体調管理を徹底することが大切になります。最初は半日のスポットバイトのように、勤務時間が短いものから始めるのがおすすめです。
医師賠償責任保険への加入を検討する
バイトであっても診療業務に携わる場合、医療事故が起こるリスクを考慮する必要があります。バイト先でのトラブルの場合、医療訴訟になったとしても、病院の加入している病院賠償責任保険ではカバーされない場合が多いです。
個人で医師賠償責任保険に加入しておけば、バイト先で万が一賠償責任を問わるような状況になってしまった際にも、保証を受けることが可能です。なお、保険の種類によって補償内容や加入方法が異なるため、加入する際には自分にあったものを選ぶようにしましょう。
確定申告を忘れない
バイトの収入が年間20万円を超えた場合、確定申告が必要になります。スポットバイトであっても複数回入れば20万円を超えることがほとんどのため、忘れずに行うようにしましょう。確定申告を行えば、税金が還付されるケースもあります。
忙しくて手が回らない場合、税理士などに依頼することも検討しましょう。確定申告を忘れると、故意でなかったとしても加算税や滞納税などのペナルティが発生するため注意が必要です。
専攻医(後期研修医)向けのおすすめバイト5選
専攻医がバイトをする場合、まずは経験が浅くても問題なく対応できるものを選ぶと安心です。こちらでは、専攻医におすすめのバイトを5つご紹介いたします。
健康診断
病院や学校での健康診断は多くの専攻医が経験しているバイトであり、求人数も豊富です。基本的に健康な方の問診や聴診がメイン業務になるため、研修医時代に身につけたスキルで問題なく対応できます。
ただ、業務は同じ作業の繰り返しが中心で、施設によっては半日で数百人程度を診るケースなどもあるため注意が必要です。事前に対応人数がどのくらいかを確認しておくとよいでしょう。
当直
当直バイトも専攻医のバイトとしてメジャーなものの一つです。夜間の救急外来や急変対応を行いますが、忙しさの程度は病院によって異なります。
救急指定なしの病院では、当直室で待機しているたけで勤務が終わる、いわゆる「寝当直」となるケースも多いです。一方、比較的忙しい救急指定病院では、入院インセンティブなどを設けているケースもあります。
また、当直バイトは忙しさだけでなく、当直室の設備環境や食事の有無なども快適に働けるかどうかのポイントになります。
往診・訪問診療
患者さんの自宅や高齢者施設への訪問診療もおすすめのバイトの一つです。訪問診療の場合、重症患者さんは基本的に常勤医が担当します。そのため、バイトでは基本的に安定している患者さんが対象となり、難しい業務を任されることは少ないです。
看護師や診療補助・ドライバーなどが同行してくれるケースがほとんどで、移動時間があることもあり、実質的な業務負担は意外と少なめになります。
透析バイト
透析バイトは、透析を受けている患者さんの回診がメイン業務です。シャント穿刺は大抵看護師やMEが行いますが、稀に医師が行うケースもあります。回診以外は基本的に待機時間となり、待機室で自由に過ごすことが可能です。
大抵は何事もなく終わることがほとんどですが、患者さんが急変する可能性もあり、いざというときには専門性が求められる場合もあります。そのため、特に腎臓内科や泌尿器科の先生におすすめのバイトです。
自由診療での問診
収入アップが目的であれば、自由診療系のバイトもおすすめです。美容クリニックでの脱毛や、AGA外来などに訪れる患者さんの問診がメイン業務になります。マニュアル仕事が中心で、予約制のクリニックであれば対応人数もある程度決まっており、残業になることも少なめです。
専門スキルがほとんど必要なく、科目問わず勤務可能な場合が多いです。ただし、ある程度の接遇スキルを求められる傾向があります。
まとめ
今回は、研修医・専攻医のバイト事情や、バイトを始める際の注意点、専攻医におすすめのバイトについて解説いたしました。
研修医は研修に専念する努力義務があるため、原則としてバイトが禁止されています。一方、専攻医は勤務先がバイトOKであれば、バイトをすることが可能です。バイトを始めるにあたっては、必ず就業規則を確認することに加え、医賠責保険や確定申告についても理解しておくことが必要です。
専攻医のバイトでは、まずはバイトと本業の両立に慣れるためにも、負担が少ないものから始めるのがおすすめです。どうやってバイトを探せばいいかお困りの場合には、転職エージェントを利用するのもよいでしょう。
医師ジョブでは、健診や当直をはじめ、専攻医の先生でも無理なく始められるバイトを多数取り揃えています。バイト先をお探しの際には、是非お気軽にご相談ください。