医療現場にも到来中!「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは?

デジタル技術が生活に浸透してきた昨今。

パソコン、スマートフォン、タブレット端末といった通信機器も当たり前になり、それらを用いた様々なアプリケーションやシステムなどを生活の中に取り入れている方も増えています。

また診療においても、オンライン診療や電子カルテも広まりつつある今では、デジタル技術が当たり前にあるという方も多いのではないでしょうか。

よくそれらのことを「DX」と呼んだりもしますが、今回はその「DX」と医療現場の関係なども併せて説明いたします。

※本記事は2022年7月22日現在の情報をもとに作成しています。

そもそも「DX」とは

近頃、特にテレビCMやWebサイトの広告などでも目にする機会が増えてきた「DX」ですが、理解しないまま何となく見ている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「DX」とは「デジタルトランスフォーメーション」の略語です。

先程も申し上げましたが、これは「新しいデジタル技術の浸透・利用により、人々の生活をより良いものに変革する」ことを指します。

ただし上記のようにおおまかな概念で説明されることが多く、定義や解釈などはその場面などで変化することも多々あります。

各省庁でも担当する業務などの影響から異なる定義付けがされています。

総務省では以下のように定義しています。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

総務省|令和3年版 情報通信白書|デジタル・トランスフォーメーションの定義

また企業などに密接にかかわる経済産業省は以下のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

経済産業省(METI)|デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX 推進ガイドライン)

なお、これまで言われてきた「デジタル技術を用いた自動化や効率化」といったものは「DX」とは呼べません。

大事なのは「デジタル技術を用いて、今までの既存のシステム(レガシーシステム)を根底から変革する」ことです。

「DX」を用いることで社会制度さえも変えてしまえるような世の中にすることが目的であり、「DX」というのはそのために用いる手段のことを言います。

医療現場の「DX」

「DX」の促進自体は平成の終わりごろから言われていますが、令和の今では医療現場にもしっかりとその波が到来しています。

元々2017年頃に厚生労働省がデータヘルス改革推進本部の取り組みから電子カルテの導入などを推進してきました。

その普及などに関しては以前こちらでも解説した通り、当初よりは確実に導入が進んでいますが、十分なものとは言い難い状況です。

医師ジョブブログ

情報化社会において、様々な業界で電子化・データ化が推進される昨今。 医療分野でもICT化が進められており、働く側にもIT…

 「DX」・「ICT化」の違い
似たような言葉で混乱される方もいらっしゃると思いますので、簡潔にまとめておきます。

▼「DX」
新しいデジタル技術の浸透・利用により、人々の生活をより良いものに変革すること

▼「ICT化」
情報通信技術を活用して、情報連携の迅速化・効率化・質の向上や分析の高度化を進めること

政府の指針

実は現在、政府が毎年6月に出している「骨太の指針」の2022年度版(経済財政運営と改革の基本方針2022)で医療現場でのDXの加速を経済財政運営を盛り込むなど、医療現場のDXに意欲的です。

最終的には国民がヘルスケアに主体的に関与できるような環境を整備する目的もあるようで、啓発活動も増えてくると考えることができそうです。

「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の指針2022)」の概要のみ簡単に抜き出してみます。

  • オンライン資格確認
  • 全国医療情報プラットフォームの創設(※)
  • 電子カルテ情報の標準化等(※)
  • 「診療報酬改定DX」の取り組み(※)

など

※促進のために首相を本部長とした「医療DX推進本部(仮称)」を設置

経済財政運営と改革の基本方針2022-内閣府より抜粋

特に下3つは、2022年5月に政党で出されていた「医療DX令和ビジョン2030」の内容をほとんど踏襲したものになっています。

それぞれの項目を細かくみていきましょう。

オンライン資格確認

以前より厚生労働省などを主体にして進めている、健康保険証の資格確認をオンラインで可能にしようという取り組みです。

指針では、2023 年4月から保険医療機関・薬局に対して導入を原則として義務付け、マイナンバーカードの保険証(マイナ保険証)の利用が進むように関連する支援等の措置を見直すとありました。

現状、2024 年度中を目途として、選択制保険証発行の導入を目指していくとのこと。

さらにオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証に関しては原則廃止を目指していくことが明記されています。

参考:オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)-厚生労働省

全国医療情報プラットフォームの創設

簡潔に言えば、全国の医療機関・薬局・自治体が、電子カルテやレセプト・予防接種、処方箋、健診データなどの情報を一括で確認できるシステムのことです。

そもそも、医療機関-薬局間、自治体-医療機関間、医療機関同士などで、患者の情報をやりとりするシステムがない問題点は以前より指摘されていました。

とはいえ一番の転機となったのは、昨今のパンデミックでしょう。
自治体や保健所の医療機関との連絡手段が、電話・FAXが主体だったために実態の把握が遅れるなど、機能不全に陥ったことは記憶に新しいですよね。

そのため、マイナンバーカードを活用した「マイナ保険証」などを柱として、2023年4月からオンラインシステムの導入を原則義務づける方針としています。

オンライン資格確認とも結びつくお話でもありますね。

電子カルテ情報の標準化等

現在の電子カルテ情報は各システムによって項目などが異なることから、上記の全国医療情報プラットフォームの創設時に電子カルテ情報を結びつけるのはなかなか難しいという話もあります。

それを解決するために、電子カルテ情報の標準化が必要となるため、そちらも進めようという取り組みです。

「医療DX令和ビジョン2030」では共有項目の策定を厚生労働省が主体として進め、導入が難しい医療機関には官民が連携して開発した低廉で安全な標準型電子カルテの導入を進めたい方針です。

また同じくビジョンには、そののちには電子カルテに記載されたデータのうち、患者自身が許可したデータを治療の最適化などに役立てようという目的も記載されていました。

最終的に電子カルテの導入を推し進め、以前からの2026年までに80%、2030年までに100%の電子カルテの普及を目指す取り組みを達成したい狙いも見られます。

「診療報酬改定DX」の取り組み

デジタル時代に対応した診療報酬の策定・改定作業の効率化、システムエンジニアの有効活用・費用の低廉化を目指すことです。

「骨太の指針2022」によれば、最終的に医療保険制度全体の運営コスト削減につなげることが求められています。

これは医療現場のDXを促進すること自体が、負担が増加している医療・介護費の適正化を進める目的という見方もできます。

 

ちなみに言うまでもありませんが指針では他にも様々な取り組みが記載されていましたので、気になる方はこちらからご確認ください。

注意点

良いことづくめに思えるDXですが、便利になる一方、注意しなければならない点もあります。

DXはつまりデジタル技術が根本にあるため、それらに対してしっかりとしたシステム・セキュリティを要し、常に更新が欠かせないということでもあります。

昨今、特にコロナ禍に入ってから、日本でもランサムウェア(身代金要求型ウイルス)により電子カルテデータなどが閲覧不能になり、病院の機能が停止させられた例もあります。

またトロイの木馬といった従来からよく聞くコンピューターウイルスの被害も引き続き発生しています。

言うまでもありませんが、時代に合わせた「正しいITリテラシー」もDXに必要だと言えます。

他にも、政府が肝いりで進めようとしている「オンライン資格検索」も初期導入としてマイナ保険証の読み込みに必要なカードリーダーの費用なども発生したり、何かと入用である場面も今後増えてくると考えられます。

しかし、DXによって「既存のシステムのままでいい」とも言ってられない未来が来る可能性もあるため、DX自体を無視することもできません。

今後の政府などによる医療現場のDX促進がどこまで医療現場で進むのか、追ってみたいところです。

最後に

今後、DXだけではなく、医療現場では様々な変革が待っています。

しかしながら2024年には医師の働き方改革、2025年には2025年問題の到来などが控えていることから、今後もDX化が止まることはないと思われます。

医療技術・設備が新しくなるのと同じように、診療時にもデジタル技術が溶け込んでいくことでしょう。

実際、医療業界でもメタバースの技術が使われはじめるなど、ヘルスケアに対するデジタル技術の浸透は既に進み始めていると言っても過言ではありません。

こういったデジタル技術などにも、常にアンテナを張っている必要がありますね。

もちろん、現在のご勤務先で先生方が働きやすい環境を整えることが第一ではありますが、止む無く転職することになった際には是非ご相談いただければ幸いです。

医師ジョブ 求人紹介サービス申し込み