医師のオンコールの過ごし方は?オンコールの実態や向き不向き

多くの医療機関が導入しているオンコールという勤務形態。

夜間や休日の急患・急変に対応するために必要な業務ですが、待機中は常に呼び出しに備える必要があり、医師にとってはストレスの大きい業務でもあります。

精神的にも体力的にも負担がかかる一方で、それに見合った報酬が望めないケースもあり、苦手意識をお持ちの先生もいらっしゃるのではないでしょうか。

オンコールありの職場で働く場合、まずは待機中の過ごし方を知っておくことが大切です。そこで今回は、ンコールの基本的なルールやその実態、向き・不向きやオンコールの少ない働き方についても詳しく解説していきたいと思います。

医師のオンコールの過ごし方は?

オンコールを担当する場合、常に電話に出られる状態で待機し、呼び出しがあれば必要に応じてすぐに出動する必要があります。

いつ電話がかかってくるかわからないストレスもあり、医師にとっては負担の大きい業務と言えるでしょう。プライベートの時間がある程度制限されることも覚悟しなければなりません。

オンコール待機中のルールや呼び出しの頻度は、医療機関によって異なります。こちらでは、一般的なオンコールの過ごし方について詳しく解説いたします。

オンコールの基本的なルール

オンコール待機中は、定められたルールを守って過ごす必要があります。基本的なルールとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 医療機関に30分以内に到着できる場所にいること
  • 飲酒など判断能力に影響する行為を控えること

オンコール待機中にかかってくる電話は、すぐに指示や処置が必要な緊急性の高いものがほとんどです。診療科によっては、そのまま緊急手術に入るようなケースもあるでしょう。そのため、待機中は実際に呼び出しがあるか否かに関わらず、即座に対応できる状態でいることが求められます。
細かなルールは医療機関ごとに異なるため、オンコールを担当する場合には事前に確認しておくことが大切です。

ルールを守れば自由に過ごせる

オンコール待機中は、ルールから逸脱しない限り行動は制限されません。完全なプライベート時間とは言えないものの、ある程度は自由に過ごすことが可能です。
例えば、

  • ゆっくりと過ごして身体を休める
  • 趣味を楽しむ
  • 規定のエリア内で外食や買い物に出かける
  • 学会の支度や論文の執筆、勉強をする

など、時間の使い方は人によってさまざまです。
ただし、いつでも電話に出られる状態で過ごすこと、そして移動手段のある場所で過ごすことが重要になります。また、呼び出し頻度が高い場合などには、実際問題として自由に過ごせない、精神的に休まらないといったケースもあるようです。

いつでも電話に出られる状態で過ごすことが大切

オンコールを担当する場合、外出中・入浴中・就寝中など場所や時間を問わず、電話があればすぐに出なければなりません。電話の取り逃しを避けるためにも、待機中は以下のような点に注意する必要があります。

  • すぐ手に取れる場所に電話を置いておく
  • バッテリー残量に注意する
  • 電波が悪い場所に留まらない
  • サイレントモードにしない(音・バイブ・視覚的な通知などをオンにしておく)
  • お風呂やお手洗いにも電話を持ち込む

また、医療機関によっては、オンコール専用の携帯電話が支給されることもあります。使い慣れていない機種の場合は、操作に戸惑わないよう事前に確認しておくことも大切です。

オンコール待機中に避けるべき行動

オンコールの呼び出しがかかるタイミングは予測できないため、待機中はその点を踏まえて過ごす必要があります。呼び出し頻度が少なく、電話対応のみで済むケースが多かったとしても、万が一の場合を考慮して行動しなければなりません。

例えば、映画館やコンサートは携帯電話の電源を切るのがマナーなので、規定のエリア内であったとしてもオンコールの待機場所には適しません。細かいことを言えば、美容院でのパーマやカラーリング、マッサージ店での長時間の施術なども、急な連絡に対応できない可能性があるため避けた方がよいでしょう。

医師のオンコールの実態4選

オンコールの実態は、診療科や性別・世代、そして医療機関によっても異なります。こちらでは、医師のオンコールの実態を4つの視点からそれぞれ解説いたします。

オンコールの勤務時間

オンコールの勤務時間は、診療科によって大きく差があります。厚生労働省「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」によると、診療科別にみた週当たりの当直・オンコールの勤務時間は以下の通りとなっています。

▼ 当直・オンコールの勤務時間が長い診療科
産婦人科…22.8時間
救急科…18.4時間
麻酔科…16.7時間
外科系…16.5時間
小児科…16.0時間

▼ 当直・オンコールの勤務時間が短い診療科
放射線科…10.2時間
精神科…11.9時間
内科系…12.6時間

こちらはオンコールの待機時間だけでなく当直の待機時間も含まれるデータですが、傾向として急患や急変が多い診療科ほど勤務時間が長いことが読み取れます。

性別・世代による違い

オンコールの勤務時間は、性別や世代によっても差があります。厚生労働省「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」によると、週当たりの当直・オンコールの勤務時間は、女性医師より男性医師の方が長くなっています。また、男女ともに若い世代の医師ほど当直・オンコールの勤務時間が長い傾向があることがわかります。

▼ 常勤勤務医の週当たりの当直・オンコール勤務時間

男性 女性
20代 18.8時間 13.0時間
30代 18.7時間 10.7時間
40代 17.1時間 9.0時間
50代 13.8時間 7.8時間
60代 8.0時間 3.4時間

出典:厚生労働省「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」を基に作成

男女で差がある要因としては、所属する診療科の割合が男女によって異なることや、女性のほうが子育てなどで働き方をセーブする傾向があることなどが考えられます。

オンコールの報酬

医療機関によって異なりますが、オンコール担当時は「待機料」などの手当が支給されることもあります。また、呼び出しに応じて出動した場合に、1回あたり1~3万円程度の定額の手当や、実働分に合わせて時間外手当が支給されることもあります。

オンコールは多少の制約はあるものの、呼び出しさえなければ自由に過ごせるという勤務形態になっているため、半分勤務・半分休日のような側面があります。

そのため、すべての時間を勤務時間とみなすのは難しく、待機時間がすべて時給換算されることは基本的にありません。ほぼ当直と変わらないような負担があったとしても、泊まり込みの勤務を想定した当直に比べると報酬は低めになります。

オンコール=労働ではない?

先述のようにオンコールは半分勤務・半分休日のような側面があるため、なかにはオンコール待機中の時間を一切労働時間にカウントせず、報酬を出さない医療機関も存在します。これに関しては過去に裁判になり、最高裁判所にて「オンコールは労働時間に該当しない」という判決が出た事例もあります。

しかし、待機中は完全な休日とは言えないことや、精神的な負担も大きいことからこのような状況に不満を持つ医師も多く、医療機関側での配慮が求められています。

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オンコールは向き不向きがある

オンコールをどのくらい負担に感じるかは、その人の性格や置かれている状況によっても変わってきます。こちらでは、あくまでも一例にはなりますが、オンコールに向いている医師・向いていない医師の特徴をそれぞれ解説いたします。

オンコールが向いている医師

オンコールに向いている医師の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

  • フットワークが軽い
  • タフである
  • 責任感が強い

フットワークが軽く行動力がある人は、オンコールの急な電話や呼び出しにも、素早く気持ちを切り替えて対応することができるでしょう。また、オンコールは夜間・休日を問わず出動によって長時間拘束されるようなケースもあるため、精神的にも体力的にもタフな人の方が向いていると言えます。

ほかにも、責任感が強く「自分の担当患者さんに何かあった際には自分が対応したい」という思いが強い場合なども、オンコールに向いていると言えるでしょう。

オンコールに向いていない医師

オンコールに向いていない医師の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 子育てや介護で忙しい
  • オンオフの区別をはっきりさせたい
  • 心配性である

子育てや介護をしていると、実際問題としてオンコールの急な呼び出しに対応できない状況も多いため、オンコールには向いていないと言えます。また、仕事とプライベートをきっちり分けて、オンオフのメリハリをつけて働きたいという場合もオンコールには向いていないでしょう。
ほかにも、待機中ずっと電話を取り逃さないか気になってしまう心配性な人は、オンコールによるストレスが特に大きいかもしれません。

オンコールの少ない働き方はある?

オンコールは心身ともに負担が大きいため、できればオンコールの少ない環境で働きたいと考える先生もいらっしゃるでしょう。こちらでは、オンコールが少ない働き方について解説いたします。

慢性期病院で働く

オンコールは急患対応・急変対応がメインなので、急性期病院だと頻繁に呼び出しがかかる可能性があります。

一方、慢性期病院は状態が落ち着いた患者さんが多く、救急の受け入れをしていない場合もあるため、急性期病院と比べるとオンコールが発生しにくいです。電話があっても口頭指示で済む場合も多く、出動が必要になるケースは少ないでしょう。

ただし、病床数や医師数によっても負担は変わるため、事前に実際の担当頻度やコール頻度を確認しておくことが大切です。

内科や精神科で働く

内科や精神科は急患対応が比較的少ないため、オンコールの呼び出しもかかりにくい傾向があります。ただし、こちらも医療機関の方針や医師数によって実際の負担は変わるため、実態を把握するには事前の確認が大切です。

該当診療科の医師数が少なければ、急患自体は少ない診療科でも負担が集中するケースもあるでしょう。逆に医師数が多ければ、急患が多い診療科でも一人当たりの負担は少ないというケースもあり得ます。

非常勤医や担当患者がいない医師として働く

こちらも医療機関によって異なりますが、基本的に非常勤医師はオンコールを担当しない、あるいは回数が少ない傾向があります。また、主治医制を採用していない医療機関であれば、夜間や休日の対応を自分一人で負う必要がないため、オンコールも少なくなります。

ほかにも、時間外の救急診療を行っていないクリニックであれば、オンコール自体が全くない働き方をすることも可能です。

まとめ

今回は、オンコールの過ごし方やその実態について詳しく解説いたしました。

オンコール待機中は概ね自由に過ごせるものの、完全な休日と同じように過ごすとはできません。いつでも電話に出られるように備えておく必要があり、出動となれば精神的・体力的な負担も大きいです。

また、半分勤務・半分休日のような特殊な勤務形態のため、労働時間として認められないといった問題も抱えています。

オンコールの勤務時間は診療科や性別・世代によって差があるほか、医療機関によってもその実態は異なります。そのため、急患・急変の少ない慢性期病院や、急性期病院であっても当直医制・チーム主治医制などを採用している病院であれば、オンコールの少ない働き方も可能です。

オンコールを負担に感じている場合には、環境を変えることによって負担を軽減できる可能性もありますので、転職も視野に入れて検討してみてはいかがでしょうか。