休みが多い診療科は?医師の休みが少ない理由や休みを取りやすい職場・働き方

医師が抱える代表的な悩みの一つである「休みの少なさ」。

医師としての仕事にやりがいを感じているものの、休みの少なさや取りづらさには不満を感じているという先生も多いでしょう。また、このままのペースで働いているといつか心身に不調をきたすのではないか、と不安を抱えている先生もいらっしゃるかもしれません。

実際に過労死ラインを越えて働いている医師もおり、医師の長時間労働は深刻な状況です。しかし、診療科や職場・働き方によって勤務実態は異なり、なかにはしっかり休みを取れる職場も存在します。

そこで今回は、診療科による休みの取りやすさの違いや、医師の休みが少ない理由、休みの取りやすい職場や働き方について解説すると共に、転職を検討する場合の注意点についてもご紹介いたします。

休みが取りやすい診療科・取りづらい診療科は?

独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、医師の年次有給休暇取得日数は「年間4~6日」が25.8%で最多となっています。

また、「0日」と回答した医師も22.3%おり、「1~3日」と回答した医師と合わせて全体の約半数近くが3日以下の有給取得となっています。このことから、医師の有給取得率は全体的に低い傾向にあることがわかります。

一方、有給取得日数が7日以上と回答した医師も全体の27%おり、11日以上の有給休暇を取得した医師も9.9%います。傾向として有給取得率は低いものの、職場や働き方によっては問題なく有給取得が可能なケースもあるようです。

診療科別に見た場合、7日以上の有給休暇を取得している割合が最も多かったのは「精神科」「産科・婦人科」で、その次に「麻酔科」「放射線科」「眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科」などが続いています。

▼診療科別:有給休暇取得日数

診療科  7日以上と回答した割合
精神科  35.4%
産科・婦人科 35.4%
麻酔科 33.4%
放射線科 29.9%
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科  28.8%

出典:「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を基に作成

逆に、有給休暇取得日数が3日以下の割合が最も多かったのは「脳神経外科」で、次いで「呼吸器科・消化器科・循環器科」「救急科」となっています。

▼診療科別:有給休暇取得日数

診療科  3日以下と回答した割合
脳神経外科 55.2%
呼吸器科・消化器科・循環器科  52.8%
救急科  50.0%

出典:「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を基に作成

なお、これらのデータはあくまでも目安であり、職場の状況によって大きく変わる可能性があります。また、2011年と少し古いデータのため、近年の働き方改革の推進による多少の変化には留意が必要です。

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医師の休みが少ない理由とは?

厚生労働省「令和元年 医師の勤務実態調査」によると、病院に勤務する常勤医の4割近くが過労死ラインを超えて働いているという実態があります。働き方改革の本格的な運用を目指すなか、医師の過重労働は依然として深刻な状況です。

休日数や休みの取りやすさは職場によって変わりますが、なかなか休みが取れず悩んでいる医師も多いでしょう。

医師の休みの少なさは、患者さん中心の働き方が求められる医師の業務の特殊性や、医師不足・患者数の増加などの医療業界の課題が関係していると考えられます。以下で詳しく見ていきましょう。

当直業務やオンコールがあるため

急患や急変はいつ起こるかわからないため、病院では常に患者さんに対応できる体制を整えておかなければなりません。そのため、医師は日中の通常業務に加えて、夜間や休日にも当直やオンコールを担当する必要があります。

当直で朝方まで働いたあとにそのまま通常業務に入ったり、オンコールの呼び出しで休日に出勤したりすることも多いですが、基本的に代休は取れないケースが多いです。そのため、実質的に休みと呼べる日が少なくなってしまうのです。

医師が不足しているため

厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、日本の医師数は年々増加しており、2020年末時点で約34万人と過去最多を更新しています。

しかし、人口1,000人あたりの医師数は他の先進国に比べると圧倒的に少なく、地域偏在や診療科偏在、業務量の増加なども相まって、医師不足は深刻化しています。

医師不足の現場では心身の負担も大きく、激務やストレスを理由に退職する医師もおり、さらに医師不足が加速するという負の連鎖が起きています。現場を離れる医師が増えても現状働いている医師でカバーせざるを得ず、必然的に休みにくい状況になってしまっているのです。

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患者数が増加しているため

日本は少子高齢化が進んでおり、今は超高齢社会に突入しています。高齢者が増えると病気にかかりやすい人の割合も増えるため、医療機関を受診する患者数も増え、それに伴い医師の業務量も増えています。

高齢者は複数疾患を抱えている場合も多いため、通院頻度も多くなりがちです。また、加齢による感覚の鈍りや回復力の低下により重症化して救急搬送となるケースも多く、救急対応の負担も増加しています。

こうした理由から医師の業務負担は増加傾向にあり、それが休みにくさにもつながっているのです。

患者さんの容体をチェックするため

主治医として患者さんを担当している場合、容体をチェックするために休日であっても自主的に病院へ行くケースがあります。特に手術直後の患者さんや容体が急変する可能性のある患者さんがいる場合は、こまめに様子をチェックする必要があるのです。

このように、休日であったとしても実態としては働いているというケースも少なくないようです。

ダブルワークをしているため

収入アップやスキルアップを図るため、常勤先の勤務がない休日に副業でアルバイトをしている医師も多いです。また、研究や執筆活動、講演会などに勤しむ医師もいます。

常勤勤務に加えて週に数日アルバイトをするという働き方は珍しくなく、結果としてほぼ休みなく働いているという医師も多いようです。

【医師向け】休みを取りやすい職場・働き方6選

病院勤務医は休みが取りにくい傾向がありますが、勤務環境や職場によってはしっかりと休みを確保しながら働くことも可能です。ここからは、医師でも休みを取りやすい職場や働き方について解説いたします。

無床クリニック

外来のみの無床クリニックであれば入院患者さんが存在しないため、夜間や休日に働く必要がありません。当直やオンコールもないのでオンオフのメリハリある働き方が可能で、心身への負担も少ないでしょう。

ただ、クリニックによっては休日診療に対応しており、土日祝も含めたシフト勤務を採用している場合もあります。カレンダー通りの休みを希望する場合には、勤務条件をしっかり確認するようにしましょう。

病院の健診担当医・外来担当医

病院勤務であっても、健診や外来など特定の業務内容に絞って医師を募集しているケースがあります。病棟受け持ちのない健診担当医や外来担当医として採用されれば、当直やオンコールの受け持ちも免除されるケースが多く、平日日勤のみで働くことも可能です。

ただ、病院によっては病棟受け持ちがなくても当直・オンコールの当番が必須の場合もあるため、事前に勤務条件を確認するようにしましょう。

産業医

産業医は企業において、社員の健康管理および職場の衛生管理を担う医師です。勤務形態によって嘱託産業医と専属産業医に分けられ、嘱託産業医は非常勤勤務、専属産業医は常勤勤務になります。

企業の営業日に合わせて平日勤務が基本となり、嘱託産業医は月1~数回、専属産業医は週3~4日の勤務となることが多いです。専属産業医は企業と直接雇用契約を結ぶのが一般的で、有給休暇の取得も可能になります。

産業医になるには規定の要件を満たす必要がありますが、研修によって産業医資格の取得が可能です。

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メディカルドクター

メディカルドクターは製薬会社に属し、薬の研究や治験データの評価に携わる医師です。一般的な会社員と同じく、平日週5日勤務が基本になります。企業によっては、テレワークやフレックス勤務が可能な場合もあるようです。

製薬会社は福利厚生が充実していることが多く、有給休暇も比較的取得しやすい環境です。採用要件としては医師免許のほか、高い英語力や博士号が求められるケースが多いです。

公衆衛生医師

公衆衛生医師は、保健所や本庁などで働く医師です。細かな業務内容は働く自治体や勤務先によって異なりますが、地域医療・生活衛生の向上や課題解決に取り組み、広く地域住民の保健を支える役割を担います。

公務員として採用されるため福利厚生も充実しており、基本的に土日祝休みで有給休暇も取得しやすい働き方です。

医療系サービス企業

医師としての専門知識や経験を活かして、一般企業で働くという選択肢もあります。特に医療系サービスやヘルスケアの分野では、事業の信頼性を高めるという意味でも医師免許取得者は重宝されます。
ただ、休日の制度や実情は企業ごとに異なるため、事前に確認することが大切です。

【医師向け】転科・転職する前の注意点

休みが取れず疲弊しているという場合には、転科・転職なども視野に入れてみると良いでしょう。こちらでは、休みの少なさを理由に転科・転職する前に注意すべきポイントをご紹介します。

収入が減る可能性もある

休みが多い職場に転職すると稼働時間も減るため、収入も減ってしまう可能性が高いです。収入ダウンを避けたい場合には、休日以外の条件もしっかり確認したうえで検討する必要があります。

条件の優先順位をはっきりさせないまま転職に踏み切ってしまうと、転職によって一つの悩みが解消されても、また別の悩みによって再転職に至るという悪循環に陥りかねません。日や収入含め、転職前に希望条件をしっかりと洗い出すことが大切です。

退職理由はポジティブに伝える

退職理由が「休日が少なかった」だけだと、面接官は納得してくれない可能性が高いです。一方的な不平不満と捉えられないためにも、なるべくポジティブに変換して伝えるなど工夫が必要でしょう。

「休日が少なかった」以外にも転職理由がある場合には、退職理由としてあえて休日の少なさという点に触れる必要はありません。臨床医以外への転職を希望する場合には、その職種に転向したい理由をそのまま退職理由として伝えるのも良いでしょう。

専門家に相談する

働きながら転職活動に取り組む場合、なかなか時間を確保できないことも多いです。また、企業への転職を検討する場合には、医療機関への転職と同じような感覚で応募すると、書類選考や面接に通らず苦労することもあるでしょう。

そういった場合、転職エージェントやコンサルタントに相談すると、悩みや課題を解決しやすいです。求人探しや条件交渉、面接日程の調整などを全面的にサポートしてもらえるほか、異職種への転職についてアドバイスをもらうことも可能です。

紹介会社によって、クリニックの求人が豊富だったり、産業医の転職に注力していたりと、それぞれに得意とする分野があります。企業の求人は紹介会社によって扱っていない場合もありますので、自身の希望にあった紹介会社を選ぶと良いでしょう。

まとめ

今回は、医師の休みの実態や休みの多い診療科・働き方などについて詳しく解説いたしました。

医師というと激務のイメージが強く、実際に他業種と比べると休みが少ない傾向があるのは事実です。休日対応の必要性や医師不足の現状など、様々な理由から休みにくいというのは否めません。

しかし、職場や働き方によっては、しっかりと休みを取りながら働くことも可能です。クリニック勤務や病棟受け持ちのない働き方を選んだり、産業医やメディカルドクター・公衆衛生医師など臨床以外の職種へ転向したり、一般企業で医師経験を活かして働く道もあります。

長く働いていくためには、ワークライフバランスを保つことも大切です。休みが取れなくて辛いと感じる場合には、臨床以外の働き方も視野に入れて、転科や転職を検討してみるのも良いでしょう。

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