近年注目を集める「フリーランス」という働き方。
特定の企業や団体に属さずに個人として仕事を請け負う働き方で、医療業界でも働き方の多様化にともない、フリーランスとして働く医師が増えてきています。自由に働ける・稼げるなどのイメージが先行しがちですが、実際のところはどうなのか、ご興味をお持ちの先生も多いのではないでしょうか。
確かに、フリーランス医師はメリットの多い働き方といえるでしょう。しかし、やはり良いことずくめというわけにはいかず、少なからずデメリットもあります。そこで今回は、フリーランス医師の働き方やそのメリット・デメリットについて、常勤医師との比較も交えながら詳しく解説したいと思います。
フリーランス医師とは?
フリーランス医師とは、大学医局や特定の医療機関に所属したり、自分でクリニックを開業したりすることなく、非常勤やスポットの勤務で生計を立てている医師のことを指します。働き方改革や臨床研修制度、医師向けの人材ビジネスの増加などにより、フリーランス医師は近年増加傾向にあるようです。フリーランス医師は他の業種のフリーランスと同じく、個人事業主に該当します。
フリーランス医師と言えば、フリーランスの外科医を主役とするテレビドラマシリーズをご存じの方も多いでしょう。しかし、現実ではテレビドラマにいるような手術だけを担当するフリーランス医師は存在しません。ご存じの通り、手術には術前術後の管理やフォローが不可欠です。そのため、単発のスポット勤務や出勤日が限定される非常勤の医師が、難しい手術を次々に担当するというのは無理があることが分かります。
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フリーランス医師の働き方
フリーランス医師として活動する場合、大きく分けて4種類の働き方があります。こちらでは、それぞれの働き方の特徴を解説いたします。
定期非常勤
定期非常勤は、週3日や1日5時間といった条件を事前に決めて、定期的に勤務する働き方です。半年~年単位での契約が多いので比較的安定した収入を得ることが可能で、常勤より労働時間が短く、時間外勤務やオンコールも基本的にありません。一つの医療機関で複数日勤務する形のほか、複数の医療機関で定期非常勤を掛け持ちすることも可能です。
スポット
スポットは、いわゆる日雇いのアルバイト・パート勤務のことです。1日だけ・数時間だけなど、一回あたりいくらといった形で単発契約を結びます。学会・休暇・病気などで常勤医師が不在になる際に、そのカバーに入る形で働くことが多いです。突発的なニーズに即戦力として求められる分、時給は高めに設定されます。
夏季休暇の時期や年末年始などは需要が高まるため、その時期に集中して稼ぐことも可能です。ただ、スケジュールの自由度は高いですが、希望する日に必ず仕事に入れる保証もないため、安定性には欠ける部分があります。
定期非常勤+スポット
定期非常勤として働きながら、空いている日時にスポット勤務を入れている医師も多いです。定期非常勤で安定した収入を確保しつつ、スポットで高時給の仕事を得ることが可能で、組み合わせることによって自由な時間も確保しながら効率よく稼げる勤務スタイルになります。
臨床以外のアルバイト・パート
製薬企業や行政機関など、医師のスキルを求めている勤務先は医療機関以外にも多くあります。商品開発や記事作成などの分野でも、医師監修のニーズは高いです。臨床から離れても、医師免許を活かして高時給で働くことが可能です。
フリーランス医師として働くメリット
フリーランス医師として働く場合、一般的な常勤医と比較するとどのようなメリットがあるのでしょうか。こちらでは、フリーランス医師として働くメリットをご紹介いたします。
自由な働き方が実現できる
フリーランス医師として働く一番のメリットは、自由な働き方が実現できることです。フリーランス医師の場合、定期非常勤やスポットなど、自分のスケジュールや都合に合わせて働き方を選ぶことが可能です。勤務日数や時間帯を柔軟に決められる分、ワークライフバランスも整えやすくなります。特定の曜日だけ勤務、半日だけ勤務といったことも出来るため、育児や介護などで長時間勤務が難しい場合にも両立が図りやすいでしょう。
収入アップが期待できる
収入アップが期待できる点も、フリーランス医師として働くメリットといえます。勤務先や診療科目にもよりますが、定期非常勤やスポット勤務の時給は、常勤医師の給与を時給換算した場合と比べて高めに設定されていることが多いです。そのため、働き方次第で常勤医師より多くの収入を得ることも可能です。
例えば、複数の勤務先で定期非常勤を掛け持ちして常勤と同程度の時間働けば、単純計算で常勤医師を上回る収入が得られます。スポット勤務をコンスタントに入れることが出来れば、かなりの高収入が見込めるでしょう。
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煩わしい人間関係がない
煩わしい人間関係がないことも、フリーランス医師として働くメリットになります。医療業界では人間関係のトラブルも多いですが、組織に属さないフリーランス医師は常勤医師と比べてその心配が少ないです。もちろん業務上のコミュニケーションは必要ですが、ビジネスライクな関係を築けるので、常勤医師よりは気楽であるといえるでしょう。
人脈が広がる
人脈が広がることもフリーランス医師として働くメリットです。フリーランス医師は様々な勤務先で働くので、常勤医師として一つの勤務先で働く場合と比べて、自ずと人脈が広がります。将来的にクリニックを開業したい、医療ビジネスを展開したいといった場合にも、フリーランスとして働くなかで得られた人脈が役立つ場合もあるでしょう。
フリーランス医師として働くデメリット
フリーランス医師にはフリーランスならではのメリットがある一方、やはりデメリットもあります。こちらでは、フリーランス医師として働くデメリットをご紹介いたします。
安定性に欠ける
フリーランス医師として働く一番のデメリットは、安定性に欠けることでしょう。常に仕事がある保証はないため、フリーランス医師の収入はどうしても不安定になりやすいです。ある程度安定した定期非常勤でも、勤務先の都合で仕事がストップする可能性はゼロではありません。
また、病気などで働けなくなった場合にも、休業手当などの補償は受けることが出来ません。常勤医師のような福利厚生がないため、社会保障がかなり手薄になることは理解しておく必要があります。
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個人の責任・負担が大きい
個人の責任・負担が大きい点も、フリーランス医師として働くデメリットといえます。フリーランス医師は個人事業主なので、仕事に対する責任は全て自分で負わなければなりません。医療事故などのトラブルが起こっても後ろ盾がないので、常勤医師と比べてリスクが大きいといえるでしょう。
また、スキルアップのための経費や税金・保険料などの負担が大きいことも難点です。たとえ収入が増えたとしても、そのすべてが手取りになるわけではないということは覚えておきましょう。
煩雑な事務作業をこなす必要がある
煩雑な事務作業をこなす必要があることも、フリーランス医師として働くデメリットといえるでしょう。個人事業主の場合、確定申告や税金処理といった事務作業を自分でこなさなければなりません。忙しい場合は税理士などに依頼することも出来ますが、当然ながら費用がかかります。
常勤医師であれば医師業務以外は勤務先に任せることが可能ですが、フリーランス医師の場合は雑務や事務処理にも時間や費用を割く必要が出てきます。
まとめ
今回は、フリーランス医師の働き方やメリット・デメリットについて詳しく解説いたしました。
常勤先を持たずに定期非常勤やスポットなどで生計を立てるフリーランス医師は、制約が少なく自由に働けるのが一番のメリットです。収入面でも効率の良い働き方と言えますが、一方で安定性に欠け、個人の責任や負担が大きいなどのデメリットもあります。
フリーランスというと、己のスキルを活かしてバリバリ働いて高収入を得るというイメージが強いかもしれませんが、どちらかというとワークライフバランス重視で働きたい方にこそ最適な働き方といえるかもしれません。メリット・デメリットを理解した上で、自身のキャリアプランやライフプランに合わせて選択できると良いでしょう。
医師ジョブでは、常勤転職はもちろん定期非常勤の組み合わせでのご勤務なども柔軟にご紹介が可能です。フリーランスを希望する先生も、逆にフリーランスから常勤への転職を希望する先生も、是非お気軽にご相談ください。