先生方のご転職の支援を行っていると、よくご質問を受けることが多い話題の一つが「年収面」です。
お金のことは、例え親しい同僚の方や友人などにもあけすけとは尋ねづらいもの。
しかし転職活動をするにあたっては、「年収はどのくらいが相場なのか」、「平均年収はいくらなのか」、知っておくことで転職市場や求人の見方も変わってきます。
そこで今回は、医師の年収の相場観はもちろんのこと、年収アップの方法や高年収求人の探し方などについても解説していきます。
医師の平均年収はどのくらいなのか?年収傾向を紹介
医師の年収は基本的に開業医と勤務医では年収も大きく異なります。今回は、勤務医の先生のデータを中心に、企業規模、年齢、性別などの様々なデータから医師の年収傾向を見ていきましょう。
【企業規模別】医師の年収傾向
企業規模 | 年収 |
10人以上の全体平均 | ¥14,403,200 |
10~99人 | ¥20,677,600 |
100~999人 | ¥16,210,200 |
1,000人以上 | ¥12,550,400 |
一目で見ればわかるかと思いますが、企業規模別のデータ上では、10~99人規模の勤務先で働いたほうが、年収が高くなる傾向が浮き彫りになりました。
実際、大きな法人やグループなどのほうが、給与額に関して年次などの細かい要件が定まっている傾向があり、「きまって支給する現金給与額」が大きな規模になればなるほど下がる傾向にあります。
言い換えると、大きな法人であればあるほど、制度面や契約などはしっかりとしており、その面で心配する要素は少ないと考えられますね。
【年齢別】医師の年収傾向
└令和2年賃金構造基本統計調査(企業規模10人以上・男女計)
25~29歳 | 751.4万円(7,514,800円) |
30~34歳 | 1,057.8万円(10,578,400円) |
35~39歳 | 1,283.9万円(12,839,800円) |
40~44歳 | 1,525.6万円(15,256,700円) |
45~49歳 | 1,748.6万円(17,486,100円) |
50~54歳 | 1,794.3万円(17,943,000円) |
55~59歳 | 1,898.0万円(18,980,100円) |
60~64歳 | 1,780.1万円(17,801,300円) |
65~69歳 | 1,830.3万円(18,303,600円) |
70歳~ | 1,546.5万円(15,465,800円) |
20代の内は研修医・専攻医として研鑽を積む時期のため、給与は低い傾向にあり、特に専攻医時代は非常勤勤務・スポットバイトで稼ぐ方も多い状況です。しかしこの時期にしっかりと臨床の場で経験を積んだり、技術面を学んだりすることで、後のキャリアアップの下地となります。
30代に入れば専攻医としての研修も終えて臨床経験も増える頃で、ようやく一人前の医師として歩み始める時期です。そのこともあり、給与は20代から比べれば1,000万円以上と急激に増加傾向にあると言えます。
40代に入ると「年間賞与 その他特別給与額」が跳ね上がることで、30代に比べると一気に年収がアップする傾向にあります。40代~60代の方は、役職に付いている方なども多くなり、年収と比例して責任も大きくなっていくことは言うまでもありません。
【男女別】医師の年収傾向
男性医師の平均年収 | 1,522.5万円 |
女性医師の平均年収 | 1,188.3万円 |
※令和2年賃金構造基本統計調査(企業規模10人以上・男女計)
一時期話題になった性差によるキャリアなどの格差がありましたが、年収という数字でもその傾向が見える結果となりました。
女性でも昨今は私生活と医師としてのキャリアの両立を目指す方も多いですが、同時に育児をされる方にとって、ご専門の科目によってはキャリアの維持は高い壁となっているケースが見受けられます。特に育児中の方は非常勤のみの働き方や、当直・オンコール・早番遅番などがない働き方をする人も多いことから、年収が下がりやすい傾向にあると言えます。
ちなみに男性と女性では、平均年齢も大きく異なることは留意すべき点と言えます。
(男性:47.2歳、女性:40.6歳)
【経験年数別】医師の年収傾向
0年 | 621.0万円 |
1~4年 | 833.1万円 |
5~9年 | 1,049.0万円 |
10~14年 | 1,222.8万円 |
15年以上 | 1,656.8万円 |
※令和2年賃金構造基本統計調査(企業規模10人以上・男女計)
先程の年代別でも説明しました通り、経験年数が増えることで年収も増加することがわかります。(しかし厳密には手取り額+賞与額のデータのため、当直手当などが含まれず、いわゆる手取り額に近い状況です。)
ただし、ある程度のご年齢を過ぎた場合、給与額のダウンは必然的なものと考えていたほうが良いでしょう。
先程の企業規模のところでお話しした通り、大きな法人などではしっかりとした制度を設けているところが多く、そこには「定年の設定」も当てはまります。多くの法人などが策定する60歳定年制+再雇用制度や65歳定年制などで、一旦キャリアが途切れる方も少なくありません。しかしその後のキャリアが全くないということはなく、実際に法人から理事などをオファーされる方、介護老人保健施設の施設長職などにご就任される方、非常勤先のみでゆったりと働く方もいらっしゃいます。
【診療科別】医師の年収傾向
2012年9月と少し古いデータにはなりますが、独立行政法人 労働政策研究・研修機構が公開した「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によれば、診療科ごとの平均年収のベスト5は以下のとおりになっています。
1 | 脳神経外科 | 1,480.3万円 |
2 | 産科・婦人科 | 1,466.3万円 |
3 | 外科 | 1,374.2万円 |
4 | 麻酔科 | 1,335.2万円 |
5 | 整形外科 | 1,289.9万円 |
しかしながら給与額などは診療報酬点数の改定などにも大きく左右される為、上記データから大きく変更になっている可能性は否めません。実際に過去にこのようなデータがあったことはこちらに記しておきます。
【地域別】医師の年収傾向
次に都道府県別の年収傾向をまとめました。
└令和2年賃金構造基本統計調査(企業規模10人以上・男女計)
北海道 | 15,779,200円 |
青森県 | 14,891,400円 |
岩手県 | 15,762,300円 |
宮城県 | 14,888,400円 |
秋田県 | 15,814,800円 |
山形県 | 13,880,500円 |
福島県 | 15,472,100円 |
茨城県 | 14,451,800円 |
栃木県 | 12,039,600円 |
群馬県 | 18,194,000円 |
埼玉県 | 16,019,600円 |
千葉県 | 13,932,100円 |
東京都 | 10,650,600円 |
神奈川県 | 15,299,600円 |
新潟県 | 14,891,300円 |
富山県 | 15,781,900円 |
石川県 | 17,808,500円 |
福井県 | 12,838,700円 |
山梨県 | 18,631,100円 |
長野県 | 14,105,600円 |
岐阜県 | 17,873,800円 |
静岡県 | 14,806,200円 |
愛知県 | 15,986,200円 |
三重県 | 13,819,200円 |
滋賀県 | 16,229,600円 |
京都府 | 14,975,200円 |
大阪府 | 14,576,400円 |
兵庫県 | 14,571,300円 |
奈良県 | 12,335,100円 |
和歌山県 | 15,732,100円 |
鳥取県 | 13,869,800円 |
島根県 | 12,431,600円 |
岡山県 | 12,790,600円 |
広島県 | 16,663,100円 |
山口県 | 15,260,000円 |
徳島県 | 15,377,100円 |
香川県 | 17,075,900円 |
愛媛県 | 18,008,000円 |
高知県 | 12,604,200円 |
福岡県 | 13,032,500円 |
佐賀県 | 17,614,000円 |
長崎県 | 14,543,200円 |
熊本県 | 14,711,900円 |
大分県 | 15,593,200円 |
宮崎県 | 14,678,100円 |
鹿児島県 | 12,745,100円 |
沖縄県 | 14,021,900円 |
※令和2年賃金構造基本統計調査(地域別年収)
一般的に企業に勤める会社員の場合、大手企業の本社などが集中する東京都の年収が高い傾向にあります。しかしながら、医師は会社員とは逆に、東京都の年収が一番低いと言えます。原因を断言することはできませんが、東京都に関しては、以前より医師の一極集中が叫ばれて久しい状況です。
離島や無医村などに対するへき地医療は住み込みなどになりますが、手当が期待できます。その分、総合診療のスキルなども要する為、やりがいがある臨床の現場でもあります。
【経営形態・勤務形態別】医師の年収傾向
厚生労働省の「第20回医療経済実態調査の報告(平成27年実施)」によれば、勤務医と病院長(開業医を含む)の平均年収は以下の開きがあるようです。
国立病院の病院長 | 約1,934万円 |
国立病院の医師 | 約1,425万円 |
医療法人の病院長 | 約2,930万円 |
医療法人の医師 | 約1,544万円 |
法人その他全体の病院長 | 約2,541万円 |
法人その他全体の医師 | 約1,456万円 |
個人の医師 | 約1,436万円 |
院長に就任すると、常勤医などと比べて1.5~2倍もの年収が期待できることがわかります。
これらのデータは、開業などによって経営サイドにまわるか、どういった法人(民間病院・大学病院など)で働くかなどのキャリアによって年収が大きく変わることを表していると言えるでしょう。
医師が年収アップをするために実践したい5つの方法
先生方は労働条件通知書を見直したことはありますでしょうか。
こちらには、契約期間に関する事項を必ず提示されています。(これは法律上必須事項であるためです。)
病院によっては契約期間を設けているところもあります。大抵1年間のところが多いですが、1年後に契約更新の可能性もあるため、1年後に絶対に契約が切られるということではありません。
またそうでなくても、昨今は民間病院でも人事考課制度や昇給制度があるところもあります。
その際、面談などが組まれることが一般的であり、ご自身の実績や病院への収益などへの貢献度のアピールを直接訴えてみるのも手です。
「病院に必要な人材」として認められ、昇給など待遇面が向上する可能性もあります。
ただし、民間病院の中には、昇給額があらかじめ定まっている場合もありますので、まずは制度を確認してみてください。
まずは、自分の専門分野における各学会の資格(認定医、専門医、指導医など)の取得を目指すことをオススメします。
言うまでもありませんが、大抵は指定された症例数といった実績提示などが必要であるため、目に見えたスキルの証拠にもなります。
資格手当などの制度を設けている法人などでは給与アップも期待できます。
また医師の場合、自分の専門外でも取得できる資格(産業医、認知症サポート医、臓器移植院内コーディネーター、インフェクションコントロールドクターなど)が多く、資格の取得は多くの関係者との関わりや連携・コミュニケーション力の上昇、活躍分野が広がるメリットがあると言えます。
大学病院などの研究・教育に力を入れる医療機関では、給料が低額であるために、若手がアルバイトや外勤を行うことが一般的となっています。
例えば、弊社でお預かりする求人データでは、東京都で一般内科外来の非常勤求人の時給10,000円が相場です。
1日8時間勤務だとしても日給8万円となり、週1回勤務(1ヶ月4週計算)だとしても月30万円程度稼ぐことが可能です。
勿論、アルバイトを増やせば収入が増える!という単純な話ではありませんが、時間的余裕がある場合は、他の勤務先での定期非常勤や副業アルバイトを検討することも選択肢の一つです。
勤務医ではどうしても相場の限界があることから、開業することも一つの選択肢と言えます。
開業医は、勤務医をはるかに上回る高収入も期待でき、また地域医療に貢献できるため、やりがいも得られる環境です。
ただし、マーケティング調査を行う必要性や、開業後に周辺地域における競合クリニックの開業やコロナ禍などの影響で経営が上手くいかないリスクも否めません。
また税金・社会保険などの手続きを行う必要性、開業時の設備投資・人件費などの運営資金もかかり、さらには経営手腕も問われます。
ただし雇われ院長としての開業という手や、院長候補として入職して経営を学び後に法人からクリニックを譲渡してもらうという選択肢もあるので、お悩みの方はまず知人の方や紹介会社などに相談してみることもオススメします。
長年働いている病院で交渉をしても、病院利益に貢献する大きな実績でも出さない限り、大幅な年収アップというのは中々難しいものです。
さらに病院で医局派遣の受け入れや、学閥があったりすると、役職が大学関連の医師たちしか付くことができない……なんてことも。
したがって、先述の資格や経験、実績をお持ちであれば、現状よりも好条件の病院に転職をするということも選択肢の一つです。
さらに転職は、独立開業と比べてリスクが低いメリットもあります。
忙しい先生はご自身での応募・知人などの伝手だけでなく、紹介会社のご利用も視野に入れて動くと良いでしょう。
医師の転職における高年収求人の探し方と注意点
医師が年収アップに向けて求人探しをするときには、以下のポイントを大切にする必要があります。
年収だけに注目すると、交通の便が悪く通勤が大変だったり、過酷な労働環境で医師の入職・退職が激しかったり、という病院・クリニックを選んでしまう可能性もあります。
転職先で「こんなはずじゃなかった……」という失敗をしないためにも、年収以外に重視するポイントも考えましょう。
- 勤務地(路線・駅、駐車場の有無、自宅からの距離)
- ワークライフバランス(勤務日数・休日・勤務時間など)
- スキルアップ(症例数)……など
「転職で何を大事にするのか?」を深掘りすると、自然な志望動機を履歴書や職務経歴書に記載でき、面接時のやり取りでもしっかりとお伝えできます。
仕事やキャリアアップへの価値観や意味付けでもあるため、新しい勤務先の病院と先生とのマッチングもうまくいきやすくなります。
ご自身で探している場合はもちろんのこと、知人の伝手の場合でも、就業条件だけを見て決めてしまうのではなく、各病院の公式サイトなども確認しましょう。
病院のサイトなどでは、経営理念や行動指針、設備・学会関連施設の説明、地域医療への貢献、症例数といった就業条件以外の特徴も確認できます。
そうすることで入職後のミスマッチなども防ぐことができます。
気になる求人があれば、まずはどのような特徴がある病院なのか、確認してみましょう。
ご自分に合う転職先やアルバイト先を、毎日求人サイトや伝手などから探し回るのは、多忙な医師の先生方にとって大変なことです。
初めての転職活動の場合、業態や勤務形態が多彩すぎて、自分に合った優先項目を絞りきれない!なんてお声もお聞きします。
そんなときには、転職求人サイトや転職エージェント・コンサルタントを活用するのがおすすめです。
特に医師を専門とする転職エージェントに相談すれば、自分のニーズに合った高額求人など、条件に合った求人を探してくれます。
また、自分からは医療機関に言いづらい条件交渉も手伝ってくれ、条件通知や日程調整などもエージェントが行ってくれます。面接におけるポイントやアドバイスなどもしてくれますので、初めての転職!という方こそ、利用してみてください。
初めて探す際には「高収入求人の特集」なども一通り見てみることもおすすめします。ご興味がある方はぜひチェックしてみてください。
まとめ
医師の平均年収に関しては、年齢、経験、勤務地、企業規模などで大きく変動します。
しかしながら、専門医の取得や学会への参加で新しい知識の取得など、しっかりとしたご経験などを積んでいくことで、給与アップはある程度期待できます。
ただし、勤務先の制度などによっては同一勤務先での給与アップにも限界はありますので、開業や転職といった選択肢を見据えることも選択肢として有用です。初めて医局から抜ける方や初めて転職される方は、転職求人サイトや転職エージェント・コンサルタントを活用することも視野に入れてみてください。
とはいえ、税金面や働きやすさの面から考えても、年収が高ければ高いほど良い!という単純な話ではありません。
給与の次に何が大事か?といった部分を改めて考え直してみることで、現状のご自身の道を振り返る良い機会になります。気になる点がございましたら是非クラシスの医師ジョブにご用命ください。