精神科医の平均年収はいくら?相場や割合、働き方、キャリアアップのポイントを解説

精神科医の平均年収はいくら?相場や割合、働き方、キャリアアップのポイントを解説

精神科医の平均年収はいくら?相場や割合、働き方、キャリアアップのポイントを解説

精神疾患の診断・治療を専門とする精神科医。
日本における精神疾患の患者数は年々増加しており、それに伴い精神科医のニーズも増加傾向にあります。手術などの特別な手技を必要とせず、比較的ワークライフバランスが取りやすいことから、転科先としても人気の診療科です。
そこで今回は、精神科医の年収相場や働き方、キャリアアップのポイントなどを詳しく解説します。

精神科医の平均年収

労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、病院に勤務する精神科医の平均年収は1230.2万円となっています。この調査における全診療科を含めた平均年収は1261.1万円であることから、精神科医の平均年収は医師全体と比較してやや低いことが分かります。
また、中央社会保険医療協議会「第24回医療経済実態調査報告(令和5年実施)」によると、精神科の開業医の平均年収は1959.8万円となっています。こちらも全診療科を含めた平均年収の2776.8万円と比較すると、低めの金額となっています。
これらを鑑みると、精神科医の平均年収は全科平均と比較して、低めの水準であることがわかります。
なお、勤務医と開業医では平均年収にかなり差があるようにみえますが、勤務医は給与収入、開業医は事業収入であることから、一概に比較できない点には注意が必要です。

他科目の医師の平均年収

では、精神科以外の各診療科の平均年収は、それぞれどのくらいの水準にあるのでしょうか。労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、病院勤務医の診療科別の平均年収は以下の通りとなっています。

▼診療科別にみた医師の平均年収

科目 平均年収
内科 1247.4万円
外科 1374.2万円
整形外科1289.9万円
脳神経外科 1480.3万円
小児科 1220.5万円
産科・婦人科1466.3万円
呼吸器科・消化器科・循環器科 1267.2万円
精神科 1230.2万円
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 1078.7万円
救急科 1215.3万円
麻酔科 1335.2万円
放射線科 1103.3万円
その他 1171.5万円

出典:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査

平均年収が最も高いのは「脳神経外科」の1480.3万円で、精神科より250万円ほど高くなっています。逆に平均年収が最も低いのは「眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科」の1078.7万円で、こちらは精神科より150万円ほど低くなっています。
手術対応があったり時間外勤務が発生しやすかったりと、ハードな働き方を求められる診療科ほど平均年収が高くなっており、逆に身体的負担が少なく、比較的余裕を持って働ける診療科ほど平均年収が低い傾向にあることがわかります。

精神科医の年収ごとの割合

労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、病院に勤務する精神科医の年収分布は以下の通りとなっています。

▼精神科医の年収分布

主たる勤務先の年収 全体に占める割合
300万円未満 1.8%
300万~500万円未満 4.1%
500万~700万円未満 7.3%
700万~1000万円未満 18.3%
1000万~1500万円未満 33.0%
1500万~2000万円未満 24.8%
2000万円以上 10.6%
500万円未満・計 5.9%
1000万円以上・計 68.4%

出典:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査

最も多いのが1000万~1500万円未満の年収帯で、33%と全体の約3割を占めています。次に多いのが1500万~2000万円未満の年収帯で、24.8%という結果です。1000万~2000万円未満の年収帯がボリュームゾーンとなっており、全体の約6割を占める形となっています。
また、2000万円以上の高年収を得ている医師も10.6%おり、他科と比較しても決して少なくない割合です。一方で、年収が500万円未満の医師も5.9%おり、年収300万円未満の医師もわずかながらいることから、精神科は収入格差が大きい診療科ともいえるでしょう。

同調査では給与・賃金の額に対する満足度の調査も行っており、精神科は「満足している」「まあ満足」と回答した割合が45.8%と全科のなかで3番目に高くなっています。一方で、「少し不満」「不満」と回答した割合も34.7%と少なくなく、この結果にも収入格差が反映されていると考えられます。

精神科医の収入格差が大きいのはなぜか

精神科医の収入に差が出る一つの要因として、資格の有無が挙げられます。精神科医の主な資格には「精神保健指定医」と「精神科専門医」がありますが、この二つのうち特に収入を左右するのが「精神保健指定医」の資格です。
精神保健指定医は、厚生労働省認定の国家資格です。指定医を取得することで、本人の意思によらない入院の判定や、身体拘束を含む行動制限の判定といった、いわゆる指定医業務を行うことが可能になります。対応できる業務に差が出ることから、病院勤務では指定医を持っているか否かによって、給与などの待遇に差が付くケースが多いです。
また、クリニック勤務であっても指定医と非指定医とでは診療報酬にわずかながら差が付くため、指定医の方が厚待遇となるケースが多いです。もちろん、指定医を取得していなくても精神科医として働くことは可能ですが、高収入を目指すには欠かせない資格と言えるでしょう。

また、これは他の診療科にも言えることですが、勤務している医療機関の種類や規模、勤務条件や経験年数によっても年収水準は変わってきます。一般的に、勤務先の規模が大きくなればなるほど、年収水準は低くなる傾向にあると言われています。

精神科医の仕事内容

精神科医は、精神疾患の診断および治療を行います。扱う疾患は幅広く、うつ病や気分障害、統合失調症、依存症、睡眠障害、摂食障害、PTSDなどのほか、認知症や発達障害なども含まれます。
精神疾患の診断は問診が中心となり、必要に応じて血液検査や画像診断、心理検査なども行います。診断が確定した後は、患者さんの症状に合わせて心理療法や薬物療法といった治療を行い、症状の改善を目指す流れが一般的です。
精神疾患が身体面にも悪影響を及ぼしている場合や、内科疾患を併発している場合などは、他の診療科と連携して治療に当たるケースも多いです。また、身体疾患に伴う精神症状に対して、リエゾン・コンサルテーションを行うこともあります。

精神科医の勤務先・働き方

精神科医の活躍の場は、病院やクリニック以外に公的機関や産業医という選択肢もあります。それぞれ詳しくみていきましょう。

専門病院・一般病院・療養型病院

精神科医の勤務先として、まずは病院があります。病院勤務では、外来診療に加えて患者さんの入院管理も担います。
精神病院では比較的重症の患者さんの受け入れが多く、強制入院や行動制限などが必要となる場合も多いです。緊急の呼び出しが発生する可能性もあり、特に急性期メインの病院ではハードワークになりやすい傾向があります。
一般病院では精神病床を備えておらず、外来メインの勤務となるケースが多いです。病棟においては、他科患者さんに精神症状が生じた際の対応や、精神疾患を抱える他科患者さんのコンサルテーションを求められるケースが多くなります。
療養型病院ではリエゾンチームの一員としての勤務や、認知症の対応などを求められるケースが多いです。比較的病状が安定した患者さんが中心となるため、精神病院や一般病院と比べるとゆとりのある勤務が可能になります。

公的機関

精神科医は、各自治体にある精神保健福祉センターなどの公的機関でもニーズがあります。精神保健福祉センターでは、精神科医のスキルを活かして幅広く福祉業務や医療行政に携わります。
主な業務としては、メンタルヘルスや依存症で悩む方の相談対応やアウトリーチ支援、デイケアにおける就労支援のための診療、精神医療審査会、精神障害者保健福祉手帳等の認定業務などが挙げられます。
基本的に土日祝休みで時間外勤務も少なく、ワークライフバランスに優れた働き方が可能になります。一方で、地方公務員という扱いになるため給与水準は低めです。また、業務によっては法律などの知識が必要になるため、臨床以外の部分で自己研鑽が必要になります。

産業医

精神科医は、産業医としてもニーズが高いです。産業医は、企業などにおいて主に従業員の健康管理に携わります。
産業医の業務には従業員のストレスチェックや休職者の復職支援なども含まれるため、精神科医としての知見を活かすことが可能です。特に近年は従業員のメンタルヘルスに関する問題が増えていることもあり、そういった対応に長けた精神科医は重宝されます。
診察や治療は行わないため、業務量は比較的少なめです。基本的に企業の営業日に合わせた勤務となり、残業もほとんどありません。
産業医になるには規定の要件を満たす必要がありますが、所定の研修を受講すれば資格を取得することが可能です。資格取得のハードルはさほど高くありませんが、希望する医師が多いうえに求人枠が少ないことから、採用ハードルは高く狭き門となっています。

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クリニック

精神科医の勤務先として、病院と並んでメジャーなのがクリニックです。メンタルクリニックの勤務では、外来診療が基本となります。
比較的軽症の患者さんの対応がメインで、入院治療が必要になるような重症患者さんは病院へ紹介する流れとなります。基本は対面診療となりますが、近年はオンライン診療を導入するクリニックも増えているようです。
当直やオンコールがないため、病院勤務と比較するとワークライフバランス重視で働くことが可能です。ただし、初診は〇分、再診は〇分というように枠が決まっていることが多く、収益確保という点からもテキパキとした診療が求められる傾向にあります。
また、精神科医は在宅医療クリニックでのニーズも高く、訪問診療に従事するケースもあります。その場合、クリニックによっては内科領域の対応や、夜間オンコールの対応が求められる場合もあるようです。

精神科医のキャリアアップのポイント

精神科医のキャリアアップのポイントとして挙げられるのが、資格の取得です。また、転職や開業によってキャリアアップを図ることも可能です。

精神保健指定医を取得する

精神科医としてキャリアアップを図るには、まずは資格の取得がポイントになります。精神科医の主な資格には「精神保健指定医」と「精神科専門医」の二つがありますが、特に取得すべきなのが「精神保健指定医」です。
精神保健指定医の有無は、強制入院や行動制限といった指定医業務ができるかどうかに関わります。指定病院では指定医の配置が義務付けられていることから、採用基準として指定医を必須としているケースもあり、指定医の取得はキャリアの選択肢を広げるという意味でも重要です。
一方で、精神科専門医の有無は業務内容に直接的な影響がありません。そのため、できれば取得した方がよいという程度で、さほど重視されない傾向にあります。

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転職する・独立(開業)する

転職や独立(開業)によってさらなるキャリアアップを目指すことも可能です。
キャリアアップのための転職では、転職の目的を明確化することが大切になります。一口にキャリアアップと言っても、スキルアップを目指す場合と収入アップを目指す場合とでは、転職先の探し方も変わってきます。キャリアの方向性を定め、自身の希望が叶えられる職場を選ぶことが重要です。
キャリアの最終目標として、開業するという選択もあります。精神科は大型設備などが不要なため、他科と比較して開業費や運営コストを抑えやすく、開業しやすい診療科と言われています。上手くいけば、勤務医よりはるかに高い収入を得ることも可能です。ただし、開業医として成功するには経営手腕も問われます。向き不向きや失敗するリスクもあるため、慎重に判断する必要があるでしょう。

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まとめ

精神科医の年収水準は他科と比較すると低めであるものの、業務における身体的な負担は少なめで、ワークライフバランス重視で働きやすい診療科と言えます。病院やクリニック以外にも、公的機関や産業医など幅広い職場でニーズが高いのも特徴です。
収入格差が大きいという一面もありますが、資格の取得や転職・開業などによって、キャリアアップを目指すことが可能です。特に精神保健指定医の取得は、キャリアアップの大きなポイントになります。

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