【医師ジョブマガジン】自己研鑽の時間~労働時間の問題

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◇ 医師ジョブマガジン 2023.08.22号 ◇
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先週末のお話ですが、2022年5月に兵庫県の専攻医(旧 後期研修医)が自殺した件で、病院が会見を開いたことが報じられていました。
既にご覧になっている先生方も多いのではないでしょうか。

この専攻医は2020年4月より研修医として勤務を開始し、2022年4月から消化器内科専攻医として勤務を始めたばかり。

しかし、亡くなる1ヶ月前の残業時間は月およそ200時間となり、強い鬱状態だったという報道がありました。
※国が定めた精神疾患における労災認定ラインは、直近の残業時間が月160時間以上です。

また、休日は2022年2月が最後で、働き通しの環境であったこともわかっています。

当然、遺族は2022年9月頃に労災申請を行い、2023年6月に労働基準監督署が労災として認定しました。

病院側も何もしていなかったわけではありません。
遺族の要望を受けて、外部の医師や弁護士らで構成される第三者委員会を設けて聞き取り調査を実施・調査報告書をまとめています。

現在、問題になっているのは、病院側の主張だと「学会準備などの研鑽の時間が含まれているため、(月およそ200時間の)全てが労働時間ではない」という点です。

先生方もご存じの通り、2024年4月から始まる働き方改革を前に、厚労省がこの件について指針を出しています。

結論を述べると、個別のケースで変わるものの、上司の指示がある場合は自己研鑽の時間が労働時間にあたります。
逆に言えば、自発的かつ業務を離れた状態などでの自己研鑽の時間は労働時間に含まれないことになります。

今回のケースでは、第三者委員会・労働基準監督署とも労災認定ライン以上の時間を残業時間として認定しているため、自己研鑽の時間とは認められなかったのではと考えられます。
(表現があやふやですが、病院側は第三者委員会の調査報告書を遺族にすら公開していないという異例の状況であり、どのような認定がされているかが正確には不明なためです。)

なお2024年4月以降、このようなケースの場合に病院側などへの罰則なども想定されています。

今後重要になる点は、労働時間と労働ではない時間を正確に把握できるような体制・システムの整備を行うことです。
その一環が、働き方改革における残業時間の上限帰省や、自己研鑽の時間などの把握や、宿日直許可の申請などだと言えます。

本件の専攻医の方のご冥福をお祈り申し上げるとともに、今後の病院側の意識変革も早急に望むばかりです。

※このコラムは2023年8月に配信した記事です


 

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