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◇ 医師ジョブマガジン 2024.03.26号 ◇
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毎年敬老の日に合わせて、総務省から発表される日本の高齢者人口。
2023年度高齢者人口は3,623万人、人口割合は29.1%と、高齢者人口割合でみると過去最高記録を更新しました。
そんな超高齢化社会が進むと切り離すことができない疾患として、「認知症」が挙げられます。
日常では認知症を疑えばすぐに医療機関に連れていくことができますが、災害時となると話が変わってきます。
今年の元日に発生した能登半島地震。
その被災地でも高齢者の方が実際に多くいらっしゃることから、避難生活による高齢者の認知機能の低下で認知症疾患が認められる高齢者の増加が懸念されていました。
先日、金沢大学などからなる研究グループが、被害が大きい地域に住む65歳以上の高齢者およそ2400名に対し、大規模な認知機能の調査を開始することを発表しました。
この調査は3年間を目途に、避難生活の期間・飲酒量や睡眠量などの聞き取り調査を実施しながら、認知機能の検査との画像診断を実施する予定です。
研究グループは同地域に以前から認知症の疫学調査を実施している実積があり、今回の調査で震災前後の比較が可能となるようです。
以前、東日本大震災後に福島県の病院や東北大学など複数の研究などで、災害後に既に認知症と診断されていた患者の認知症増悪が多数報告。
自然災害が高齢者の認知機能を低下させる可能性があることが示されていました。
さらに2022年には広島大学の研究グループにより、2018年の西日本豪雨災害の後に認知症治療薬の処方人数が増加した研究結果が発表されています。
今回の研究は、それら先行研究の裏付けとなるような「災害によって認知機能にどのような影響が及ぶのか」という詳しい研究が報告されるのではないかと期待されているようです。
そもそも、高齢者の認知機能の低下は、長年生きてきた中で蓄積された職業や周囲との人間関係などの「社会的因子」のほか、環境の急激な変化によるストレスも認知症の進行と大きく関係していると言われています。
「地震大国」とも呼ばれる日本だからこそ、災害による認知機能への影響の有無、また早期に防止できるような対策の検討は不可欠と言えます。
人口の3割が65歳以上の高齢者である日本では、社会の様々な場面に高齢者がいることが当たり前の光景です。
社会保障制度の見直しをはじめ、近年すすんでいるIT化に関しても高齢者のライフスタイルやニーズを理解した高齢者への対応が必要となります。
年末には認知症の治療薬が保険適用となり国内でも販売開始となりました。
今後も超高齢者社会の進展と並行して、認知症の予防治療などの発展に注目です。
このコラムは2024年3月に配信した記事です