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◇ 医師ジョブマガジン 2023.10.17号 ◇
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昨年の11月から糖尿病の病名変更のニュースが度々流れてきます。
内分泌・糖尿病などがご専門の先生を中心に行方を見守っている方も多いかと思いますが、9月中旬に新たな動きがありました。
9月22日、日本糖尿病学会・日本糖尿病協会から新呼称候補「ダイアベティス」の提案がありました。
患者から「糖尿病」という名称への誤解・偏見が多いという意見もあり、変更を求める声が上がっていたことがきっかけです。
元々「糖尿病」は、1907年に日本内科学会にて統一された言葉です。
それ以前は、中国の文献から「消渇」と呼ばれ、西洋医学が入ってきた江戸時代ごろになると、文献のオランダ語から翻訳された「尿崩」と表記されるようになったそうです。
その後、時代を下ると「密尿病」の記載が見られるようになり、明治に入った1876年頃には「糖尿病」の表記も見られるようになったという背景があるようです。
複数の案から選ばれた「ダイアベティス」は、言うまでもありませんが、英語の「diabetes」の流用です。
しかし、この名称には既に異論が出ています。
・ カタカナでは患者に疾病のことが伝わりづらいのではないか
・ 患者に多い老齢者が発音しづらいのではないか
・ 前例は漢字への変更で、英語表記の流用は普及しづらいのではないか
この前例というのは、認知症(旧 痴呆症)や色覚異常(旧 色盲・色弱)などのことを指すのだと考えられます。
別の候補「糖代謝症候群」などを推す声もありましたが、結局学会・協会が提案したのは英語表記の流用でした。
言葉とは変容するものではありますが、確かに前例に比べるとわかりやすさは欠如しているように感じます。
なお、病名自体の正式な変更はすぐには難しいということもあり、あくまで新呼称は外部への手続きが不要な啓発活動などで使用していくとのことです。
つまり、患者さんや社会などに対しての合意はこれからというのは、こちらに記載しておきます。
しかし患者さんが呼称しやすいか・耳で聞いた時や目で文字を見た時に疾病を理解できるかについては、議論の余地があると言えます。
※このコラムは2023年10月に配信した記事です