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◇ 医師ジョブマガジン 2023.05.23号 ◇
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「心理的安全性」という言葉をご存じでしょうか。
1990年代に、組織行動学を研究するアメリカの学者エイミー・エドモンドソン氏が提唱した概念です。
この言葉は、「個人が誰かに批判されることを恐れることなく、自分の考えや感情をオープンに表現すること」を意味します。
「心理的安全性」が高いと何が良いのか?というと、複数のメリットが考えられます。
・意見を率直に表現することでコミュニケーションが活発になる
・ミスなどの報告も早いため、問題の早期発見・解決ができる
・互いに尊重し合うことで、個人のパフォーマンス能力が向上する
もともと、この概念が提唱されるきっかけになったのは、彼女も加わったアメリカの病院の医療ミスの調査研究からです。
その調査では、医療従事者同士が日頃から隠さずに細やかにミスの指摘やヒヤリハットなどの報告をしあえる環境では、実際に医療過誤が少なかったという結果が出ています。
つまり、医療現場においても、心理的安全性が高い環境を構築することが、医療の安全性を向上させる上でも重要ともいえるのではないでしょうか。
「いや、それだったら人間関係を築いて信頼を得ている職場環境ならいいのでは?」と考えられるかもしれませんが、それは違います。
エドモンドソン氏の報告を見る限り、「心理的安全性は人間関係(各人の性格)によって変動することはない」のです。
心理的安全性で重要なことは、ミスをしたり、ミスの指摘をしたり、反対意見などを言ったりしても、周りから非難や拒絶をされないことです。
特に職場では、立場や年齢はもちろん、家庭環境、文化や意見などが異なる人が様々在籍しています。
そんな環境で自分の思ったことをオープンに伝えるとなると、勇気が必要ですよね。
特に日本人は、従来から「空気を読む力」が重視されたり、対立・衝突をさけるように振る舞う傾向があります。
意見を言うことで、相手にネガティブな印象を与えてしまわないか、対人関係が破綻したりしないかなどを懸念してしまう方が多いように思います。
そう考えると、医療ミス報告のように、細かなヒヤリハットまで含めて報告の義務化は必要なことなのかもしれません。
ただし、その過程でなじられること、拒絶されること、馬鹿にされることなどはあってはならないのです。
確かに、「心理的安全性」は簡単に高めることができるわけではありません。
しかし「イエスマンすぎないこと」、「反対意見があるなら述べること」、「質問すること」などを皆が行えるようになれば、いずれ状況の好転をもたらします。
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※このコラムは2023年5月に配信した記事です