新専門医制度が始まり、近年、医師の働き方も色々な道が増えてきました。
最近は先生方の中にも専門医取得についてご相談を受けるケースも増えてきました。
率直なところで言うと、専門医は取得された先生の方が医師として一定の経験が保証されるため、転職活動においては優位に働くことが多いです。
ただし、業務内容や業態によって、専門医を所持していることの有利性は大きく異なってきます。
今回は、業態ごとで専門医の有利性がどのくらい変わるのか、を簡単にご紹介させていただきます。
キャリアに関してはこちらでも詳しく触れていますので、キャリアプランなどは省略させていただきます。
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業態ごとに見る、転職時の専門医の有利性
先生方の中には「専門医なんて必要ない」・「手間が多いだけで何もプラスにならない」とお考えの方も居ることかと思います。
そもそも、専門医に関しては、転職時において資格の所持はわかりやすい経験症例やスキルの提示にもなります。
我々のような紹介会社を利用して転職する場合、履歴書などの書類をご覧になる先方の担当者は先生のことをまったく知らないことも多いためです。
(中には、院長先生などの人事権をお持ちの方が先生のことをよくご存じだったりすることもありますが、正直そのような例はほんの一握りと言っても良いでしょう。)
そうなると、先生方のスキルなどを客観的に判断できる材料として「専門医」などの資格は有用です。
とはいえ、業態ごとによって専門医をお持ちの先生の有利性が異なるのは、言うまでもありません。
こちらでは専門医を中心に扱いますが、後述のとおり科目によっては指定医の方が有利性が大きい場合もございます。
また、先生のご専門の診療科によっても有利性は異なりますので、その点も頭の片隅に置いていただければ幸いです。
(1)病院
専門医を所持していることが最も優位となる施設です。
特に300床以上の大規模病院や急性期病院などは診療科が細かく分かれており、より専門性の高い医療がが求められることが多い環境です。
専門医や指導医などをもっていると、今までの経験や努力が評価されて採用に繋がるケースが多く見受けられます。
また、病院として研修施設の認定や診療報酬の都合により、専門医資格などをお持ちの先生をお探しのケースもございます。
先生の目線から見た時にも、自身の専門性やスキルなどを高める働き方を求められる場合にも、専門医という資格はプラスに働くことでしょう。
(2)クリニック(保険診療)
病院より専門性を求めている施設が少ないため、専門医を必須としていないところも多いと言えます。
ただし、専門医を持っているに越したことはありません。
クリニックの場合は、比較的内科全般など幅広い診療科に対応できる「ジェネラリスト」な先生が重宝される傾向があります。
また、専門医の有無を重視しない代わりに臨床経験年数を注視する施設もございます。
(おおよそ後期研修修了後の臨床経験5年~10年以上が目安となります。)
一方で管理医師の求人の場合には、医師会や系列院の医師とのバランスから専門医を求められるケースも多く見受けられます。
(3)施設や療養型病院
クリニック同様、「ジェネラリスト」としての対応や経験が求められることが多く、専門性を求めている施設が少ないと言えます。
基礎疾患を抱える患者様への初期対応や全身管理がメインとなるため、幅広い診療科の疾患に対応できることが有利に働きます。
ご家族と患者様の接する機会やコメディカルとの連携も重要になってくるため、コミュニケーション力を重要視する施設も多くなっています。
ただしスキル面の証明として専門医資格などを求められるケースはゼロではないため、詳細に関しては求人要件をご確認ください。
(4)クリニック(自由診療)
自由診療については保険適用外となるので専門医の有無は特段関係がありません。
ただし、診療領域によっては親和性の高い専門医の所持を求めるケースもございます。
美容領域は、保険診療における基本的な手技の証明として、親和性のある「皮膚科専門医」・「形成外科専門医」を求めるクリニックも少なくありません。
また不妊治療(自由診療領域)においては、親和性のある「産婦人科専門医」や、スペシャリストとして「生殖医療専門医」を求めるクリニックも多く見られます。
求人要件に必要資格の記載があるかと思いますので、まずは希望求人の記載を見比べてみてください。
(5)健診センター
健診においても手技ができれば問題ないというところが多く、専門医の有無を重視するところは少ないと言えます。
特にホスピタリティだけでなく、ある程度の人数を捌く必要がある施設などはその傾向が強いケースが多いように感じます。
ただし「人間ドック健診専門医」があると有利となるケースもございますので、取得しておいて損はありません。
なお、消化器内科医の場合は内視鏡を行うこともあるため、「内視鏡専門医」をもっていると良いかもしれません。
他にも、場合によってはフォロー外来などの対応もお願いされるケースがあるため、ご専門の専門医(乳腺専門医、循環器専門医など)を求められるケースも見られます。
補足:指定医
基本的には専門医の有無でお話をしてきましたが、先述のとおり専門医よりも指定医の方が有利性が大きいケースがあります。
また、指定医ごとによって専門医の有無の重要性が異なってくるケースもあり、多種多様な制度だとも言えますね。
精神保健指定医
言うまでもないかもしれませんが、精神科における「専門医」と「指定医」は有利性が逆転しがちな珍しいケースと言えます。
こちらも説明するまでもないかと思いますが、精神科の場合、「精神保健指定医」が必要となるのは病院です。
ただそうかといってクリニックにおいて必要ではないかといわれるとそうではありません。
精神科の重要資格となる「精神保健指定医」を必須とするクリニックは比較的多く、一定のスキル力という意味合いから理由があって指定医を求めるケースまで理由は様々です。
精神科医の場合、専門医はなくても、指定医さえお持ちであれば転職におけるリクルートに困ることはあまりないので精神科保健指定医の取得はしておいた方が無難です。
とはいえ、「精神科専門医」が全く必要ないという話ではなく、実際には双方を要するケースもありますので、取得に悩まれているのであれば双方取得しておきたいところです。
母体保護法指定医
また産婦人科の場合において、「産婦人科専門医」と同じく「母体保護法指定医」に関しても質問をいただくことがございます。
確かに「母体保護法指定医」を申請する場合、経験さえ満たしていれば、「産婦人科専門医」を所持していなくても取得できます。
しかし転職市場においては、「母体保護法指定医」を必須とする求人の場合、多くは「産婦人科専門医も所持していてほしい」というお話を先方の担当の方からお聞きします。
要件的には確かに「母体保護法指定医」はなくても申請に問題はありません。
ただし目に見えるスキル力・専門性の証明という意味合いからも、「母体保護法指定医」・「産婦人科専門医」の双方を取得しておきたいところです。
その他指定医
他、「15条指定医(身体障害者福祉法第15条指定医)」や「難病指定医」などの指定医資格に関しても同一です。
過去に面接後、15条指定医の先生がそれを理由に求人でご案内した上限額以上の年俸をご提示いただいた実例もございます。
指定医全体に言えることですが、もちろんアピールポイントの一つになりますので、忘れずに書類にはご記載ください。
結論
結論を述べると、業態において病院>クリニック(保険診療)>他という有利性となります。
例外は精神科のみで、指定医の取得の方が有利性が大きいと言えますが、専門医が不要ということではありません。
しかし「精神保健指定医」を持っていなくても「精神科専門医」を持っている方を歓迎する求人要件も見られます。
また他の指定医の場合は、専門医とは状況が少し異なりますが、所持していることが有利に働くケースもございます。
要件に専門医の取得もしくは経験年数と書いてあれば、その記載の専門医も取得しておいた方が何かと有利に働く可能性が高いと言えます。
基本的に共通して言えることですが、資格の類は取得することでプラスになることはあっても、マイナスになることはありません。
迷っている方がいらっしゃれば、取得や申請を挑戦してみてはいかがでしょうか。
最後に
以上、簡単にご紹介させていただきました。
現在の医師の世界において働き方は多々あるものの、まだまだ専門医は就職において重要視される傾向が強いです。
専門医を取得すべきかどうかでお悩みであれば、我々転職支援会社としては「是非取得してください」とお答えいたします。
確かに取得・更新には経済的なご負担も多く、またすんなりと更新できるものでもないため、専門医取得のメリットはあまり感じられないかもしれません。
しかし将来的に、専門医資格が必ずご自身にとってプラスになる時が来ます。
それは求人の選択肢が広がることや、人脈そのものなど、客観的に見れば本当に小さな事柄かもしれません。
ですが反して専門医資格を持っていなければ、違う選択をしなければならなかったり、選択肢が狭まったりする可能性が否めないところです。
進路・キャリア自体をお悩みの先生がおりましたら、専門医の有無による働き方も考えてみてもいいかもしれませんね。