雇用保険料率が引き上げに!雇用保険制度も併せて解説します

雇用保険料率が引き上げに!雇用保険制度も併せて解説します

雇用保険料率が引き上げに!雇用保険制度も併せて解説します

新型コロナウイルス感染症が日本で初めて騒がれ始めてから、早いことに既に2年が経過しました。

2年の内に外食産業や旅行業界、一部のレジャー産業などに大きな打撃を与え、暗いニュースばかりが続いてきました。

また2年のうちに「パンデミックをどう終わらせるか」・「パンデミック終息後の世の中」という考えから、「パンデミックと今後どう付き合っていくか」という考えにシフトしています。

先生方に関係のあるところでは、新型コロナウイルス感染症の影響として医療ひっ迫を筆頭に多くの医報道が見受けられました。

そしてその影響は、雇用保険にも表れる形となりました。

今回は、雇用保険とは何かという話と、2022年度の引き上げが正式に決定した雇用保険料率に関してのお話です。

雇用保険とは

そもそも雇用保険というのは、雇用保険法に定められた失業・休業で収入減となった場合に労働者の生活を保護したり、雇用機会の増大・労働者のスキル開発などのためのものです。

保険者は日本政府自身であり、財源は雇用主・労働者が社会保険料として負担するだけでなく、国費も使われています。

ちなみにこの雇用保険に関しては、強制保険制度であり、労働者負担分は毎月の給与から天引きとなります。

厳密には、「週の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込みがある従業員を雇った場合」に加入義務が発生します。

とはいえ、もちろん、雇用保険法第6条に記されているとおり、適用除外となるケースもあります。

また、当然ですが、個人事業主の方も適用されません

法人の役員は適用になる?

弊社で転職をお手伝いしている先生からご質問を受けたことが何度かございますが、法人の役員になった場合の雇用保険はどうなるでしょうか。

回答としては、原則、法人の役員は適用除外となります。

ただし、厚生労働省は以下の基発をもとに法人の役員と同時に診療部長など労働者として雇用されている方は雇用保険が適用になると回答しています。

法人の重役で業務執行権又は代表権を持たない者が、工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は、その限りにおいて本条(労働基準法第9条)の労働者である。

昭和23年3月17日 基発第461号

参考:Q&A~事業主の皆様へ~|厚生労働省

医療機関側が処理してくれてるから大丈夫という場合にも、転職して初めての給与支給日には念のため明細の確認をしておいた方が良いかと思います。

雇用保険の特長としては、加入にあたって企業自体の規模や業種、労働者の雇用形態が無関係なところにあります。

上記の条件を満たす労働者を一人でも雇っていれば、事業主は雇用保険へ加入させる義務が発生します。

雇用保険料の引き上げ

2022年2月1日、政府は雇用保険料の引き上げを柱とする雇用保険法などの改正案を閣議決定しました。

そして翌月3月30日、改正雇用保険法などが参院本会議で賛成多数で可決・成立し、雇用保険料率の引き上げが確定となりました。

内容を挙げると、今回の柱の一つである雇用保険料の引き上げに関しては、現在労使あわせて賃金の0.9%を負担している雇用保険料率を2段階に分けて引き上げることが決定になりました。

これにより4~9月は労使合計0.95%、10月~翌3月は計1.35%の負担へ増加します。

事業主負担分・労働者負担分の料率引き上げに関しては、下記の流れとなるイメージです。

2021年3月まで2022年4月~9月2022年10月~2023年3月
労働者負担0.3%0.3%0.5%
事業主負担0.6%0.65%0.85%
総計0.9%0.95%1.35%

※なお、農林水産業及び清酒製造業、建設業については料率が異なりますが、今回は割愛します。

引用:雇用保険料率について|厚生労働省

%で見るとそこまで大きな料率増加ではないように思えます。

しかし、月の給与の総支給額が100万円の場合、月3,000円から月5,000円へ値上げする形になり、年間では24,000円の負担増となるため、意外と家計に直撃します。(※1)
※1)算出した際に1円以下の端数が出た場合:50銭以下の場合は切り捨て、50銭1厘以上の場合は切り上げます。

また、雇用保険料は健康保険などとは異なり、月の賃金総額となるため、通勤手当などの各種手当も含んだ額で計算するのも特徴的です。

基本給などが低いから大丈夫……と思っていると、10月度の給与支給の際に「思ったより雇用保険料が上がってる……!」となってしまうかもしれません。

事前にいくらくらい上がるのか、計算してみると良いかもしれません。

引き上げの背景

そもそも、何故雇用保険料の引き上げを行うのでしょうか?

今回の原因は、新型コロナウイルス感染症による影響です。

コロナ禍により多くの企業が「雇用調整助成金」の支給を申請し、雇用調整助成金の支給決定額が5兆円を超えたという報道もありました。

それによって、雇用保険料で賄っている財源が枯渇する恐れがあるため、保険料の引き上げに踏み切った形となりました。

雇用調整助成金
経営が悪化した事業者が労働者の雇用を調整した際の休業手当などを支払う際に一部を助成するもの。

新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例で設置されました。

財源は当初、企業が負担する雇用保険の保険料を積み立てた雇用安定資金で賄っていましたが、すぐに枯渇しました。

その後、失業給付などのために企業と従業員双方が負担する雇用保険料の積立金や一般会計などから繰り入れていましたが、やはり不足分を補い切れない状況が報道されています。

参考:雇用調整助成金(新型コロナ特例)|厚生労働省

実際、この雇用調整助成金の特例措置は期限が迫る度に期限が延長され続けており、今後もしばらく申請数は落ちることがないと考えられています。

引き上げの実態

と、ここまで読んでいると、ただただ雇用保険料が引き上がったように感じられるのではないでしょうか。

実のところ、ただ引き上がったのではなく、引き下がった額が戻ったが正しい状況であり、細かに説明すると法律でしっかりと定められている正規の料率変更として解釈できます。

というのも、2017年度以降、財源に余裕があるのを理由とした「労使あわせて賃金の0.9%を負担」という料率が続いてきました。

そして、2015年度の料率、2016年度の料率、2017年~2021年度の料率を比較すると以下の通りとなります。

2015年度2016年度2017年度~2021年度
労働者負担0.5%0.4%0.3%
事業者負担0.85%0.7%0.6%
総計1.35%1.1%0.9%

実は、雇用保険料率というのは、年度毎にかなり上下しています。

初めて知った!という方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

そもそも料率は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第12条4項で定められ、同法附則 第11条1項によって2017年度~2021年度までの料率として以下に定められています。

(一般保険料に係る保険料率)
第十二条 一般保険料に係る保険料率は、次のとおりとする。
(中略)
4 雇用保険率は、千分の十五・五とする。ただし、次の各号(第三号を除く。)に掲げる事業(第一号及び第二号に掲げる事業のうち、季節的に休業し、又は事業の規模が縮小することのない事業として厚生労働大臣が指定する事業を除く。)については千分の十七・五とし、第三号に掲げる事業については千分の十八・五とする。

労働保険の保険料の徴収等に関する法律

(雇用保険率に関する暫定措置)
第十一条 平成二十九年度から令和三年度までの各年度における第十二条第四項の雇用保険率については、同項中「千分の十五・五」とあるのは「千分の十三・五」と、「千分の十七・五」とあるのは「千分の十五・五」と、「千分の十八・五」とあるのは「千分の十六・五」として、同項の規定を適用する。

労働保険の保険料の徴収等に関する法律 附則

さらに、この雇用保険率に関しては、雇用保険の財政状況を鑑みて年度毎に以下の変更が可能とされています。

  1. 失業等給付額等を踏まえた変更
    ※労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第 12 条第5項
  2. 雇用安定事業及び能力開発事業に要する費用に充てられた額等を踏まえた変更
    ※労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第 12 条第8項

そのため、上記事項などを鑑みて、2017年度以降は0.9%と改正雇用保険法にて定められていました。

法律的にも特段今回だけ引き上がったという状況ではなく、財源の枯渇という深刻な状況がしばらく続くことを考えると、今回の料率は令和5年度以降も続くと考えられます。

とはいえ、コロナ禍真っただ中であるために雇用などが改善したわけではありません。

事業主・労働者ともに負担増となる今回の引き上げには、やはり難色を示す声も上がっているようです。

最後に

いかがでしたでしょうか。

今回は雇用保険という制度の説明と、雇用保険料率の引き上げに関しての解説でした。

雇用保険は労働者・事業主をいざとなった時に守ってくれる制度の財源などになっており、非常に重要な保険制度の一つです。

しかし、働き方の多様化で個人事業主などで働く方などの増加、今後は少子高齢化で労働人口の減少も予測され、雇用保険料の徴収先の減少も心配されています。

今後の雇用保険料率の動きは、毎年追った方が良いかもしれませんね。

また将来的なことを考えて転職などをお考えの方は、一度医師ジョブまでご相談いただけますと幸いです。


>医師ジョブの求人紹介サービス

医師ジョブの求人紹介サービス

クラシスのコンサルタントが、先生の転職、バイト・非常勤の求人探しを全面サポートいたします。
情報収集から転職相談、条件交渉・面接設定など、全て無料にてご利用いただけます。
理想の求人探しをクラシスにお任せください!