令和4年(2022年度)診療報酬の改定ポイント!医師の働き方改革や医療DXも解説

令和4年(2022年度)診療報酬の改定ポイント!医師の働き方改革や医療DXも解説

令和4年(2022年度)診療報酬の改定ポイント!医師の働き方改革や医療DXも解説

診療報酬は診療行為の対価として保険者や患者から受け取る対価のことであり、公定価格として全国一律に決められています。そのうち、検査、手術、入院などの医療行為の公定価格については2年に1度見直しがなされ、診療報酬の改定と呼ばれます。診療報酬の改定は人口減少や高齢化、物価や賃金の変動、医療費の増加、といった様々な社会情勢を反映しています。裏返すと、改定のポイントを理解することで日本の医療制度が抱える課題点や、今後目指していく方向性を読み取ることが出来ます。本稿では令和4年の診療報酬の改定ポイントを読み解きながら、医師の働き方改革や医療DXについて概説します。

 

令和4年(2022年度)診療報酬の改定における基本的視点

2021年12月10日に厚生労働省が発表した「令和4年(2022年度)診療報酬改定」においては、今後来るべき超高齢化社会に向けた効率的な医療の提供への道筋を示すこれまでの流れを踏襲しています。その上で、基本的視点として

1.新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築
2.安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進
3.患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現
4.効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上

の4点が示されました。特に①と②は重点課題と位置づけられており、住み慣れた地域で暮らし続けることができるための地域包括ケアの重要性や、医療分野におけるICT技術の活用推進の必要性についても触れられています。
このことから、今回の診療報酬改定のポイントは感染症対策、働き方改革、地域包括ケア、医療DXの4つであることが読み取れます。この4点について、解説していきます。

 

【感染症対策】令和4年(2022年度)診療報酬改定のポイント

感染症に対する診療報酬の改定については、これまでも医療費抑制の目的で医療関連感染対策についての診療報酬加算などの施策が行われてきました。
しかし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受け、平時からの感染防止の重要性が周知され、感染防止に対する加算などの項目が大きく見直されることになりました。

 

感染対策向上加算の見直し

COVID-19の拡大の影響を鑑みて、感染防止対策は点で行うのではなく地域ベースで行うことの重要性が認識されました。感染対策向上加算はこのような取り組みを評価するための加算です。感染対策向上加算はその対象となる医療機関毎に1−3の区分が存在します。

区分対象医療機関
感染対策向上加算1地域の感染対策のリーダーシップをとる施設であり、地域の他医療機関と連携して組織的な感染防止対策の基幹的役割を果たすものとされています。一定の経験年数を有する医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師から成る感染対策部門を擁する必要があります。
感染対策向上加算2加算1取得医療機関と連携しつつ、感染制御チームの構成員についても加算1に準ずる条件が課されています。
感染対策向上加算3加算1取得機関と連携しつつ、医師・看護師による感染対策防止部門が置かれているといった条件を満たす施設となります。

加算1,2は入院初日にそれぞれ710点、175点が加算されます。一方で加算3では入院初日及び90日を超えるごとに1回75点が加算されます。

 

医療機関同士の連携等の評価(入院)の新設

地域ベースで効果的な感染症対策を実施するには、前項の加算1−3の対象医療機関同士が有機的に連携をとる必要があります。今回の改定では、この連携を評価する項目が新設されました。本項目は、以下の3つの加算で構成されます。

強化加算対象補足
指導強化加算
30点
感染対策向上加算1の医療機関感染対策向上加算1の対象医療機関が、加算2−3または外来感染対策向上加算(後述)の医療機関を訪問して院内感染対策について助言を行うことに対する加算です。
連携強化加算
30点
感染対策向上加算2-3の医療機関こちらは逆に、感染対策向上加算2−3の医療機関が、加算1の医療機関に対して年4回以上、感染症の発生状況や抗菌薬の使用実態について報告を行うことへの加算です。
サーベイランス強化加算
5点
感染対策向上加算2-3の医療機関地域や全国のサーベイランス(発生動向調査)に参加することに対する加算です。

 

外来感染対策向上加算の新設

前項は基本的に入院時の加算でしたが、本加算は診療所や在宅医療といった外来診療においても、特定の施設基準を満たせば加算されるものになります。
患者1人につき月1回まで、6点を上乗せすることができます。

 

医療機関同士の連携等の評価(外来)の新設

入院の場合と同様に、外来においても医療機関同士の連携について評価するための加算が追加されています。

・連携強化加算 3点(患者1人につき月1回)
年4回以上、感染対策向上加算1の医療機関に対して感染症の発生状況や抗菌薬の使用実態について報告を行うことへの加算です。

・サーベイランス強化加算 5点(患者1人につき月1回)
地域や全国のサーベイランス(発生動向調査)に参加することに対する加算です。

 

診療報酬上の臨時特例措置の継続

新型コロナウイルス感染症の発症が疑われる患者に対しては入院、外来、在宅等における特例的な評価や措置は、今回の改定においては基本的に継続する方針となりました。改定項目については経過措置が設けられることになり、それに伴い2020年度の診療報酬改定における経過措置は終了となります。

 

【働き方改革】令和4年(2022年度)診療報酬改定のポイント

働き方改革とは、労働者がそれぞれの状況に応じた柔軟な働き方を自身で選択できるようにするための改革のことです。その背景には、少子高齢化、女性の社会進出、長時間労働の蔓延による労働生産性の低下などの要因が挙げられます。医療現場でもそれは例外ではなく、医師の地域偏在や女性医師の増加、長時間労働による過労死などの事例から、医師の働き方改革の必要性が叫ばれています。

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医師の働き方改革が進んでいますね。この記事ではその働き方改革についてのそれぞれのメリットやデメリットについてや実際の問題…

 

医師の働き方改革については、労務管理や労働環境改善のためのマネジメントシステムの実践と推進、高い専門性を充分発揮するための勤務環境の改善、業務効率化に資するICT利活用の推進、といった方向性が示されています。また、地域包括ケアやDX(後述)とも関係してきます。本項では診療報酬改定から見える、医師の働き方改革のポイントを解説します。

 

地域医療体制確保加算の見直し

都市と地方間での医師の地域偏在により、地方では医師不足が進行しています。その結果、地域医療を担う医師の労働環境は過酷さを増し、更に医師離れが進行するという悪循環に陥ります。地域医療の確保を図り、医師の働き方改革を実効的に進めるために、地域医療体制確保加算の要件と評価の見直しが為されました。
主な変更点は以下の通りです。

・周産期医療又は小児救急医療を担う医療機関を地域医療体制確保加算の対象に追加
・上記の評価の改定 520点→620点
・「医師労働時間短縮計画作成ガイドライン」に沿った計画の作成が加算の要件に追加

手術および処置の休日加算・時間外加算・深夜加算の要件見直し

勤務医の負担を軽減し、予定手術の安全性を確保するために、休日・時間外・深夜における手術の加算の条件が変更されました。これまでは診療科全体の日数が定められていましたが、特定の医師に負担が偏る恐れがありました。こちらを踏まえて、今回の改定では診療科の各医師について「予定手術前日の当直が年4回以内」かつ「2日以上の連続当直が年4回以内」に算定要件が変更されました。

 

医師事務作業補助体制加算の見直し

多くの勤務医は診療行為以外にも、診断書や診療録などの作成といった事務作業で忙殺されているという実態があります。医師事務作業補助者を設置しその負担を減らす(=タスクシフティング)ことで、労働時間の短縮や、本来医師がするべき業務への集中が可能となり、医療の質が向上します。このことから、本改定では医師事務作業補助体制加算の要件と評価が見直されることになりました。

医療事務作業補助者体制管理加算には加算1と加算2があります。厚生労働省によると、医師事務作業補助者の「延べ勤務時間数の8割以上の時間」において、医師事務作業補助の業務が病棟又は外来において行われている場合、加算1となり、それ以外は加算2となるとされています。その加算は医師事務作業補助者の配置数によっても異なり、15対1〜100対1の間で段階的に変動します。

今回の改定では、医療事務作業補助者体制管理加算1では300〜1050点に、加算2では260〜975点に変更されました。また、加算1については、保険医療機関での3年以上の勤務経験がある作業補助者を配置区分ごとに5割以上にすることが施設基準として義務化されました。

 

医療機関におけるICTを活用した業務の効率化・合理化

コロナウイルス感染症への対応において、我が国のデジタル化の遅れが露呈しました。その反省もあり、医療現場においてはICT技術を活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進による作業効率化が求められています。

 

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情報化社会において、様々な業界で電子化・データ化が推進される昨今。 医療分野でもICT化が進められており、働く側にもIT…

 

本改定においては、医療従事者等により実施されるカンファレンス(会議)などに関して、ビデオ通話が可能な機器を用いて非対面で実施する場合の入退院支援加算などの要件が緩和されました。

 

【地域包括ケア】令和4年(2022年度)診療報酬改定のポイント

高齢化が進行する日本では、地域ベースで医療や介護を必要とする人を支える仕組みの構築が求められています。そんな中、「医療や介護が必要な状態でも、住み慣れた地域に住み続けて自立した生活ができるように包括的に支援すること」が地域包括ケアという考え方になります。地域包括ケアの推進を後押しする方向での診療報酬の改定も為されており、本項ではそれらについて解説します。

 

かかりつけ医機能の評価を見直し

地域包括ケアにおいては、患者を最も近くで診療している「かかりつけ医」の存在が欠かせません。その機能評価を推進するために、本改定では地域包括診療加算の対象疾患に慢性心不全と慢性腎臓病が追加されました。また、機能強化加算については、在宅医療の実績や専門医療機関への紹介、健康管理の相談、保険・福祉サービスの相談などの要件が盛り込まれ、かかりつけ医としての機能が明確化されています。
また、連携強化診療情報提供料の新設や、小児かかりつけ医診療料の見直しなどの措置も行われます。

 

外来医療の機能分化

日本の医療はフリーアクセスと呼ばれ、各個人はクリニックから大病院まで、自分の行きたい病院を自由に選択して受診することができます。ただしこれは欧米と比較すると標準的ではありません。多くの軽症患者が一部の大病院を受診することで、負担の格差が生じ、大病院に本来求められている機能が果たせなくなる可能性が高まります。
そこで本改定では、紹介状なしの患者から定額負担を徴収する責務を課す病院の範囲が拡大します。「紹介受診重点医療機関」のうち一般病床200床以上の病院が対象となり、これまでと比して範囲は大幅に拡大します。また、当該医療機関における定額負担の対象患者においては、定額負担額が初診で7000円、再診で3000円に増額されます。

 

外来から在宅への切れ目のない在宅医療の推進

本改定では、外来通院患者から在宅医療へのスムーズな移行を推進する目的で外来在宅共同指導料1・2が追加されることになりました。
指導料1(400点)は在宅療法を担う保険医療機関において算定が可能であり、指導料2(600点)は外来診療を行う保険医療機関での算定が為されます。
また、地域の医師会や市町村が構築する当番医制度などに加入し、在宅医療体制を提供した場合には新たに在宅医療移行加算1・2が算定できることになりました。加算1(216点)では24時間往診体制・24時間連絡体制の場合算定可能であり、加算2(116点)では往診体制・24時間連絡体制の場合に算定が可能となります。

 

リフィル処方箋

本改定ではリフィル処方箋が導入されました。これは、一定期間内では同じ処方箋を繰り返し利用できるという制度です。慢性疾患の患者においては通院の負担を減らすことができるため、欧米諸国では既に導入されている国もあります。患者の負担が減る一方で、通院間隔が長くなるため、患者の状態を正確に把握することが困難になり、合併症などの発見・治療が遅れてしまう可能性があるということには注意が必要です。

 

【医療DX】令和4年(2022年度)診療報酬改定のポイント

昨今のICT技術の普及を鑑み、2022年の診療報酬改定では医療DXやデジタル化の導入についての項目が特徴的となっています。働き方改革で触れたビデオ会議によるカンファレンスの実施以外にも、次のような改定が行われました。

 

オンライン診療・服薬指導

これまでは新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、特例措置としてオンライン診療が認められていました。本改定では現行のオンライン診療料(71点)を廃止し、「情報通信機器を用いた場合」として新たに初診料(251点)・再診料(73点)・外来診療料(73点)を設定しました。再診料については対面診療と同じ点数になったことがポイントです。
また、オンライン服薬指導についても同様に改定が為されました。これまでは情報通信機器を用いた服薬指導では43点の算定でしたが、改訂後は、原則3月以内に再度処方箋を提出した患者では45点、それ以外の患者では59点に増額されています。

 

オンライン資格確認

オンライン資格確認とは、マイナンバーカードのICチップや健康保険証の番号などを用いてオンラインで患者の資格情報(医療保険や自己負担限度額など)が確認できるシステムのことを指します。
従来の資格確認作業では、レセコンに患者情報を入力して確認していましたが、レセプト請求後でなければ最終確認が出来ない状況でした。このシスデムではその確認作業がオンライン上で可能になるため、事務作業のスピードが上がり、事務作業の負担が減少する等のメリットを享受できます。
このシステムを利用して患者の薬剤情報や特定健診情報を取得し、診療に活用した場合には初診料(7点)、再診料(4点)、外来診療料(4点)がそれぞれ加算されます。算定のための施設基準は、

① オンライン請求を行っていること

② オンライン資格確認を行う体制を有していること

③ オンライン資格確認について当該医療機関に見やすく経時していること

が挙げられています。

 

まとめ

本稿では2022年の診療報酬の改定から見えてくる、これからの日本の医療の方向性について概説しました。医療というのは社会情勢の影響を大きく受ける分野であり、そのため時代によって求められるニーズは常に変化します。
しかし、限られた医療資源を適切に配分し、多くの人が適切な医療を受けられるような制度設計が重要となる事はこれからも変わらないでしょう。また、医療の世界においてもサステナビリティは重要であり、医療従事者の持続可能な働き方を社会で担保することは、良質の医療を受けるという点からも喫緊の課題と言えます。
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