HPKIカード(医師資格証)とは?所持するメリット、発行手順、普及率を紹介

HPKIカード(医師資格証)とは?所持するメリット、発行手順、普及率を紹介

HPKIカード(医師資格証)とは?所持するメリット、発行手順、普及率を紹介

先生方は、HPKIカード(医師資格証)をお持ちでしょうか。
HPKIカードは、医療福祉分野の公的資格を証明するための電子認証機能を持つカードです。ICチップが搭載されており、物理的にも電子的にも医師資格の証明に使うことができます。

今回は、HPKIカードを所持するメリットや発行手順、普及率などについて、2024年8月時点の情報を基に解説します。

HPKIカードとはどんなカード?

HPKIとは、保健医療福祉分野の公開鍵基盤(Healthcare Public Key Infrastructure)の略称で、医療現場において公的資格の確認機能を有する電子署名や電子認証を行う基盤です(※)。

HPKIカードとは、医療福祉分野の公的資格を証明するための電子認証機能を持つカードです。カードのICチップに格納された電子証明書を用いることで、電子化された医療文書への電子署名や、医療情報にアクセスする際のログイン認証などに利用することができます。また、医師免許証に代わる物理的な身分証としても利用することが可能です。

HPKIカードは保有資格によって呼称が異なり、医師の資格を証明するHPKIカードは「医師資格証」と呼びます。

※ 出典:HPKI認証局運用規約関連資料・証明書類|厚生労働省

HPKIカードの対象資格

HPKIカードの対象は、医師や薬剤師・看護師などの27種類の保健医療福祉分野の国家資格と、院長や管理薬剤師などの5種類の管理者資格です。

▼ HPKIカードの対象資格

国家資格(27種類)

医師・歯科医師・薬剤師・臨床検査技師・放射線技師・看護師・保健師・助産師・理学療法士・作業療法士・視能訓練士・言語聴覚士・歯科技工士・管理栄養士・社会福祉士・介護福祉士・救急救命士・臨床工学技士・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・歯科衛生士・義肢装具士・柔道整復師・衛生検査技師・公認心理士

管理者等資格(5種類)

病院長・診療所院長・管理薬剤師・薬局開設者・その他の保健医療福祉機関の管理責任者

出典:HPKIの目的・対象資格|HPKI 保健医療福祉分野公開鍵基盤 電子認証局のご案内

また、国家資格を所持していない医療機関の事務職員向けの、hcRole(医療従事者の資格)の記載がないHPKIカードの発行も行っています。

HPKIカードの記載事項

HPKIカードは物理的な身分証としても使えるよう、資格保有者であることが券面にも記載されています。HPKIカードの記載情報は以下の通りです。

▼ HPKIカードの記載事項

例)医師資格証の場合
・ 資格証の名称(医師資格証)
・ 氏名・生年月日
・ 日医会員ID(日医非会員の方は「非会員」と印字)
・ 医籍登録番号
・ 医師資格証の有効期限
・ 医師資格証所持者の写真
・ カードID
・ 医師資格証の発行日

出典:医師資格証について│医師資格証(HPKIカード)について│日本医師会電子認証センター

なお、HPKIカードには国家資格について証明する加入者証明書と、組織の管理者であることを証明する管理者証明書がありますが、2つを1枚のカードで発行することはできません。

HPKIカードを持つメリット

HPKIカードを持つ主なメリットとしては、以下の二つが挙げられます。

 医師資格を簡単に証明できる
 電子処方箋の発行をはじめとしたIT利用ができる

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

医師資格を簡単に証明できる

HPKIカードはカード型で携帯性に優れており、顔写真が付いているため容易に本人確認を行うことができる身分証です。医師資格の証明には、従来「医師免許証」が用いられてきましたが、厚紙でできた賞状のような医師免許証は持ち運びには非常に不便でした。一方で、HPKIカードであれば運転免許証のように簡単に持ち歩くことが可能です。

HPKIカードの身分証としての利用シーンは、たとえば採用時の資格確認が挙げられます。無資格者による医業防止の観点から、これまで医師採用時の資格確認には医師免許証が用いられていましたが、現在は医師免許証の原本確認に代えて、HPKIカードでの資格確認も認められています。

また、災害時や緊急時にも、HPKIカードがあれば医師であることを簡単に証明できます。日本医師会では、JMATなど災害時における医療チーム派遣時にも、HPKIカードを携帯することを推奨しています。
医師会は今後もHPKIカードによる資格確認の範囲を広げるべく各方面へ働きかける意向を示しており、HPKIカードを身分証として利用できる場面は今後さらに増えていくと考えられます。

電子処方箋の発行をはじめとしたIT利用ができる

HPKIカードにはICチップが搭載されており、このICチップには電子証明書が格納されています。この電子証明書によって、電子的な医療文書への電子署名や、さまざまな医療情報へのアクセスが可能になります。

2023年から運用が始まった電子処方箋への電子署名も、HPKIカードで行うことが可能です。また、地域医療連携システムのログイン認証や、各種研修の受付手続き、受講した研修会の履歴管理などにも、HPKIカードの電子認証を活用することが可能です。

このように、HPKIカードは物理的にも電子的にも医師資格の証明に使うことが可能です。

HPKIカード発行の流れ

HPKIカードの発行は医療情報システム開発センターで行っているほか、医師については日本医師会電子認証センターでも発行しています。発行手数料は申請先によって異なりますが、日本医師会の会員・非会員ともに電子認証センターでの発行の方が割安です。
ここからは、日本医師会電子認証センターでのHPKIカード発行の流れを解説します。

申請書類の送付

HPKIカードの申請は、郵送またはマイナンバーカードを使用したWEB申請が可能です。
郵送の場合、下記の必要書類を配達記録の取れる簡易書留やレターパックなどで電子認証センターに郵送します。

< 申請に必要な書類 >
 発行申請書(顔写真貼付)
 住民票の写し(原本提出)※発行日から6ヶ月以内のもの
 身分証のコピー
 医師免許証のコピー

発行申請書は、日本医師会電子認証センターのホームページからダウンロードすることが可能です。
なお、申請書にはHPKIカードの受取場所を記載する欄があります。原則所属する医師会での受取となりますが、例外もあるため事前に受け取り可能な医師会一覧で確認のうえ記入するようにしましょう。

マイナンバーカードを使用したWEB申請の場合、マイナポータルサイトから申請する方法と、日本医師会電子認証センターのホームページから申請する方法があります。いずれも住民票の取得や、書類郵送の手間を省くことが可能です。

費用の支払い

日本医師会会員の場合、新規発行手数料は無料です。
一方、日本医師会非会員の場合には、5,500円の発行手数料がかかります。ただし、マイナポータルから申請した場合に限り、当面の間は日医非会員も発行手数料が無料となっています。
発行手数料が発生する場合には、お支払い用払込票が郵送されます。

発行完了通知の受け取り

電子認証センターで医師資格の確認やデータ登録・二重審査などを行い、HPKIカードの発行作業と引き渡し準備が整うと、連絡先住所に発行完了通知(ハガキ)が届きます。

発行完了通知にはHPKIカードを受け取れる期間・場所・受取時の必要書類などが記載されているため、あらかじめ受取希望場所の担当者と連絡を取り、受取日時を相談します。

HPKIカードの受け取り

HPKIカードの受け取りは、新規発行の場合は対面での身分証明書の確認が必須となります。下記の受け取りに必要な書類を持ち、あらかじめ相談した予定日時・場所でHPKIカードを受け取ります。

< 受け取りに必要な書類 >
 身分証明書(原本)※原則申請時に送付したものと同じ身分証明書
 発行完了通知(ハガキ)

身分証明書は、原則申請時に送付した証明書と同じものを持って行くようにしましょう。

申請してからカードが届くまでの期間

HPKIカードは、書類に不備がなかった場合でも発行に数ヶ月かかります。おおよその目安は、日本医師会会員であれば申請から1.5ヶ月程度、非会員の場合は発行費用の支払いから2.5ヶ月程度です。ただし、時期や状況によってはもっと時間がかかるケースもあります。

▼ 2024年8月現在の状況

2024年8月現在は、ICカード不足によりHPKIカードの発行は一時停止されており、代わりに「HPKIセカンド電子証明書」の先行発行が行われています。
HPKIセカンド電子証明書は、HPKIカードに格納されている電子証明書の代替として利用できる、カードレス型の電子証明書です。あらかじめスマートフォンと紐付けることにより、HPKIカードが手元になくても生体認証で電子署名が可能になります。
呼称に「セカンド」と付いている通り、本来はHPKIカードに次いで2番目に発行される電子証明書です。電子処方箋への電子署名も、このHPKIセカンド電子証明書で行うことが可能です。

HPKIカードのPINコードを忘れた場合の対処方法

HPKIカードを使用するには、PINコード(暗証番号)の入力が必要です。忘れてしまった場合には、電子認証センターに開示手続きを行う必要があります。

開示手続きは、郵送で行います。まずは必要事項を記入した「医師資格証の暗証番号(パスワード)開示申請書」と、HPKIカードのおもて面のコピーを同封し電子認証センター宛に送ります。その後、センターからPINコードが記載された用紙が住民票住所に郵送で届く形となります。

PINコードを忘れてしまうとすぐに確認ができず時間も手間もかかるため、なるべく忘れないように気を付けましょう。

HPKIカードの普及率

医師におけるHPKIカードの普及率は、どのくらいなのでしょうか。ここからは、現在の普及率や今後の見通しについてみていきます。

現在のHPKIカードの普及率

日本医師会電子認証センターによると、2024年7月末時点でのHPKIカードの取得率は、セカンド電子証明書の先行発行も含め以下の通りとなっています。

日医会員:30.3%
全国医師:23.6%

出典:日本医師会 電子認証センター「医師資格証 発行状況

電子処方箋の運用が始まったこともあり、特に2023年以降HPKIカードの取得率は上がっているものの、全医師のうち23.6%とまだ広く普及しているとは言えません。

全医師と比較して日本医師会会員の取得率の方が若干高くなっているのは、費用面が関係していると考えられます。日本医師会非会員の場合、基本的に新規発行時と5年毎の更新時に5,500円の発行手数料がかかります。一方、日医会員はいずれも無料となっているため、日医会員の方が取得ハードルが低いと考えられます。

今後の見通し

まだ十分に普及が進んでいないHPKIカードですが、電子処方箋の運用が始まった2023年以降は以前と比較して取得率の上昇が顕著です。電子処方箋の普及と共に、電子署名に使えるHPKIカードも今後普及が進んでいくと考えられます。

ただ、電子処方箋への電子署名に関しては、2023年末よりHPKIカードを未発効でもマイナンバーカードで行えるようになりました。そのため、現在は電子処方箋の導入にあたりHPKIカードが必須というわけではありません。既にマイナンバーカードを持っているという場合には、HPKIカードの必要性はあまり感じないケースもあるでしょう。

とはいえ、HPKIカードは電子処方箋への電子署名以外にも活用できます。医療DXが推進されるなかで、HPKIカードでできることは今後さらに増えていくでしょう。


まとめ

HPKIカードは、医療福祉分野の公的資格を証明するための電子認証機能を持つカードです。医師資格を証明するHPKIカードのことは、「医師資格証」と呼びます。ICチップが搭載された物理的なカードであり、物理的にも電子的にも医師資格の証明に使うことが可能です。

電子処方箋への電子署名にも使うことが可能で、医療DXが推進されるなかで今後も活用シーンの拡大が期待されています。まだお持ちでない先生は、発行を検討されてみてはいかがでしょうか。

なお、2024年8月現在は、ICカード不足によりカードレス型の「HPKIセカンド電子証明書」の先行発行が行われています。今後状況が変わる可能性もありますので、最新情報につきましては各発行元をご確認ください。

▼ 参考資料
HPKI認証局運用規約関連資料・証明書類|厚生労働省
日本医師会電子認証センター
HPKI 保健医療福祉分野公開鍵基盤 電子認証局のご案内
医療等分野の電子署名利用申請について | マイナポータル
日本医師会「医師資格証に関する厚生労働省通知について」

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