さて、新年度へ向けた準備をし始めた先生方も多いかと思います。
その中で、自身の年齢を重ねたキャリアプランをイメージするのは転職をするしないに関わらず重要なポイントとなってまいります。
今回は、高齢化社会に伴う「ベテラン医師の働き方」についてのお話です。
「まだ医師としてのキャリアは走り始めたばかりだから関係ない」という方も、是非今後のために一度お目通しいただければ幸いです。
定年後の働き方
皆様もご存じの通り、医師免許に有効期限はありません。
そのためご自身のやる気があれば、生涯現役を貫くことも可能です。
しかし近年、病院の多くは、一定の定年年齢を設ける傾向にあります。
一番多くみられるのが「定年年齢の設定+5年間継続雇用(再雇用制度)」といった定年制を定めるケースです。
失礼ながら、先生方はおいくつでしょうか。医師として医業に携わる一方で、「何歳まで働こう?」「何歳まで働けるのだろう?」「定年を迎えたら次のキャリアはどうしたらいいんだろう?」と考えたことはありませんか?今回は、人生の分岐点ともい[…]
現在は移行期間ですが、2013年の高年齢者雇用安定法の改正によって2025年4月からは定年制を導入しているところは「定年65歳」or「定年+継続雇用で65歳までの就労の確保」or「定年制撤廃」のいずれかが義務になります。
(尚、2021年の高年齢者雇用安定法の再度の改正により、「定年65歳」or「定年+継続雇用で65歳までの就労の確保」の場合には「~70歳の就労制度」導入へ向けた努力を行う必要があります。)
ただしいくら生涯現役を貫くことができると言っても、定年65歳・無期雇用という就業先の求人に対して73歳の先生がお問い合わせをしても色良いお返事はもらえないでしょう。
というのも、そのような場合には、雇用対策法施行規則にて事業主が年齢を理由にお断りすることが可能であると定められているためです。
(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保)
第九条 事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。──昭和四十一年法律第百三十二号「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律*1」
*1) 2018年7月施行「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(通称:働き方改革関連法)」により「雇用対策法」から改称。
第一条の三 法第九条の厚生労働省令で定めるときは、次の各号に掲げるとき以外のときとする。
一 事業主が、その雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをしている場合において当該定年の年齢を下回ることを条件として労働者の募集及び採用を行うとき(期間の定めのない労働契約を締結することを目的とする場合に限る。)。──昭和四十一年労働省令第二十三号「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則*2」
*2) 2018年7月施行「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(通称:働き方改革関連法)」により「雇用対策法施行規則」から改称。
もちろん、定年を設けないケースや開業医で定年という概念がないというケースもあります。
その場合には、ご自身の体が動く限り医療に携わっていただくことが可能です。
継続雇用制度も終えられた先生方ですと、ご縁もあり、そのまま非常勤にてご勤務を続ける方もいらっしゃいます。
しかし、一方で新たな環境を求めてご転職を検討される先生も多く、大変ありがたいことに弊社にも多くのご相談をいただきます。
一般的にそのような先生方にご相談いただいた際、働き方のご提案として下記の5種類のご提案を行っております。
(1)慢性期・療養期での勤務
慢性期や療養病棟を主とした病院ですと、比較的容体の安定した患者様の担当がメインになります。
もちろん、重症度の高い慢性期病院もございますが、その場合でも言うまでもありませんが急変時対応などに関して事前の患者様本人やそのご家族との話し合いで決定されています。
そのため、オンコール出動がない働き方や、そもそもオンコール自体がないという働き方も少なくありません。
また当直などにおいても、非常勤医師や医局などによって当直勤務が行われるために当直がない働き方をとっているところも見受けられます。
夜間の対応がきつくなってきた……という方でも、「ワーク・ライフ・バランスを保った働き方」が目指せることが強みと言えます。
ちなみに最近転換が促されている介護療養病床(転換後は介護医療院)は、医療療養病床などの慢性期と老健の間のような働き方になることが多いようです。
施設から慢性期や慢性期から施設に行ったけど思ってたのと違ったな……と思った場合には、介護医療院も検討してみると良いかもしれません。
慢性期や療養病院の場合、スキルとしては一般的には内科的な全身管理ができれば問題ないケースが多いようです。
ただし、病院によっては人工呼吸器管理、胃ろうなどの造設・管理、透析管理が必要な場合もあり、それらのご経験がある方は強みとなることもあります。
年収面に関しては施設や業務内容にもよるものの、およそ【1,400万円~1,500万円(週4日~5日)】が相場です。
(2)回復期・亜急性期での勤務
回復期や亜急性期においては、先程の比較的容体の安定した患者様よりも更に安定した患者様の対応が中心です。
そして何よりも、回復期などは基本的に快方に向かう患者様の診療が中心となります。
弊社の登録者の中にも、「快方へ向かっていく患者様の姿は医師冥利に尽きる」という方がいらっしゃいました。
また、リハと整形外科、高齢者疾患との親和性が高い神経内科や脳神経外科出身の先生などは病院のニーズとも合いやすく、ご自身の今までのご経験も活かしていくことができます。
ただし総合的な診療の視点も必要なため、ある程度、内科的な診療や呼吸器・循環器などの他科の知識も必要になることは注意が必要です。
しかしながらコメディカルなどのスタッフ、地域や他科との連携も必要不可欠なことが多いため、コミュニケーション能力が大変重要視されます。
さらに回復期リハビリテーション専従医の場合には、体制強化加算などの関係で講習会への参加が必須の求人もあります。
求人に応募する際、応募要件などはよく確認した方が良いでしょう。
年収面に関しては施設や業務内容にもよるものの、およそ療養期と変わらず、概ね【1,400万円~1,500万円(週4日~5日)】が相場です。
(3)介護老人保健施設の管理医師(施設長)
介護老人保健施設は、入所者の健康管理と健康指導主な業務です。
また経営面などにも携わることができ、今までとは違ったキャリアを積むことができます。
ただし関わるスタッフなどが今までよりも増え、また通所・入所利用者やそのご家族も含めた多くの方とのコミュニケーションを今まで以上に重要視される現場でもあります。
そして先述の通り、介護医療院(旧介護療養病床からの転換先の一つ)は医療療養と老健の間の立ち位置のため、業務的な面などもそのような認識で問題ありません。
求人としては、エリアさえ選ばなければご相談可能な年齢の幅が広い傾向にあり、ある程度、長期的な勤務をご希望される先生にはおすすめの働き方です。
しかしながら、やはりある程度の体力が求められることには変わりなく、場合によっては夜間のお看取り対応や時間外のオンコール待機がある求人もございます。
とはいえ、病院併設施設などで当直医が対応する場合などはそれらがない働き方も可能なところや、オンコールなし相談可という求人もあるのも事実。
ご不安な方は実際にお問い合わせして確認してみるのも手です。
年収面は【1,100万円~1,300万円(週4日~5日)】が相場となっております。
- 特別養護老人ホームと介護老人保健施設の違い
- 特別養護老人ホームとの違いを尋ねられることがありますが、特養とは介護を受けつつ、比較的長く生活をする施設です。
そのため、老健よりも入居条件が厳しく、より重い介護者が多いことから、体力面や呼吸器などのスキル面があった方が良いでしょう。
しかし、より福祉・介護に興味を持ったという方も多いため、大変ではありますがやりがいや学びを得られる現場でもあると言えます。
(4)自由診療領域での勤務
自由診療といっても、専門診療科における自費検査などやよくある美容皮膚科・美容外科だけではありません。
例えば、健診・人間ドック領域もそうですが、性感染症領域の検査やAGA・ED領域、痩身(メディカルダイエット)など、かなり幅広い領域にまたがります。
もし先生ご自身が男性であれば、健診・人間ドック領域でも会員制の場合やメンズデーなどがある場合、また男性の来院が多いAGA・EDの領域だと安心感を与えられます。
女性であれば、健診・人間ドック領域のレディースデーや女性フロアなどがある場合は受診される方も安心感がありますし、女性の多い婦人科・乳腺外科や女性医師の少ない外科・泌尿器科などですと女性向けの医療サービスを展開するという選択肢も考えられます。
また来院される方は健康な方が中心ですので、診療時間は日中となり、QOLも保たれやすい環境です。
メインは問診・カウンセリングとなることが多いですが、時折、施術や処方指示などが入ることも。
ただし、自由診療領域は基本的に健康な方が来院される都合、保険診療よりも「ホスピタリティ」や「見た目の清潔感」、「コミュニケーション力」を非常に重要視されます。
さらに自由診療領域は定年を定めている事例が多いため、先述の通り、定年年齢・継続雇用の年齢以上であるという理由で御断りされるケースもございます。
このリスクは避けられませんので、頭の片隅にでも置いていただけますと幸いです。
年収面は例えば健診領域だと【週5日1,200万円~】が相場となっております。
もちろん、自由診療でもどういった領域なのか?で年収面は大分変わってきますので、詳細は担当者にご確認ください。
(5)非常勤医として掛け持ち勤務
ご自身のペースで働くことができるのは非常勤での就業です。
概ね専門性を活かした仕事をお探しすることもでき、勤務もほぼ日勤帯のみとなるため身体的負担も少ないと言えます。
非常勤の場合の年収は、終日働いた場合は概ね日給8万円×週4日分働いた場合には換算で【1,600万円前後】となります。
しかしながら、非常勤の場合だと常勤医の採用や情勢などにより契約終了を告げられるケースもみられ、あまり安定的とは言えません。
また現在の市場の話をいたしますと、感染爆発後から全体的な非常勤の求人数が圧倒的に少ない傾向が続いています。
今後コロナ禍が続かなかったとしても、2024年には働き方改革を控えており、できれば常勤勤務をご検討いただいた方が安心かと存じます。
ほかの選択肢は?
クラシスでご案内できるのは上記4点になりがちですが、もちろんほかの選択肢も有り得ます。
医師ジョブにご相談いただく際に、産業医やスポット勤務などはどうでしょうか、という声も聞かれます。
しかし産業医は経験者でないと難しいこと、専属産業医の場合には「企業の定年」に準拠する必要があることを忘れてはいけません。
また、スポット勤務は安定した収入や勤務場所が選びにくいこと、求人数が常に一定数担保できる保証がないことが不安要素として挙げられます。
開業という選択肢に関しては、医師会や周辺の医療機関などとコネクションなどがあればそれでも問題ないかと思います。
他には、医師としてではなく、医師免許や博士号などを活かして別領域に羽ばたく方もいらっしゃいます。
弊社でも企業を立ち上げた方や、企業や法人の役員や理事として活躍している方、またご自身の著作物などで生活してらっしゃる方もいらっしゃいました。
結局のところは「何がしたいのか」という部分になってきますが、生涯現役を目指すのであれば、やはり50代のうちにその後のキャリアについてよく考えておきたいところです。
最後に
何よりも大事なことですが、言うまでもなく、最近の医療は以前よりも「チーム医療」を大事にしている傾向にあります。
これは働き方改革に伴うタスク・シフトも影響していると言えますが、それ以前からもずっと医師以外のスタッフともしっかりと連携して事にあたることが当たり前になっています。
医師以外のコメディカルへ「命令」するのではなく、同僚として誠意をもち医師として「指示」をすることが大事です。
そもそも定年後のキャリアにおいては、今までのようなスムーズな転職や年収面の維持などは難しい傾向にあります。
そのため、立地や業務内容、年収面や自身のキャリアなど市場も鑑み、自分の中の優先順位を決めて転職することで長期的なご勤務にもつながります。
上記以外にも科目によって他の働き方もご提案できるケースがございます。
情報収集からでも結構ですので是非お気軽にお問い合わせくださいませ。