一般的に、医師は高給取りというイメージを持たれています。
確かに、平均的なサラリーマンと比べれば高い収入を得ている医師が多いでしょう。しかし、一口に医師と言っても、診療科や働き方によって収入は大きく変わります。そのため、「他の医師はどのくらい稼いでいるのか?」ということに関心をお持ちの先生も多いでしょう。
とはいえ、収入というのはセンシティブな情報です。自ら進んで公開する人は滅多にいませんし、だからといって周りの医師に直接聞くのも憚られるものです。そこで今回は、医師の平均月収はいくらくらいなのか、データを基にその目安を男女別・年齢別・診療科別・働き方別に比較し、あわせて月収アップの方法もご紹介したいと思います。
医師の月収は高い?
「令和4年度賃金構造基本統計調査」によると、全国の医師の平均月収は109万円となっています。こちらの調査は、事業規模が10人以上の事業所を対象としたものです。規模別に見ると、10~99人の事業所が最も平均月収が高く、1000人以上の事業所が最も平均月収が低いという結果となっています。
一方、「令和3年度民間給与実態調査」によると、日本人の平均年収は約443万円となっています。こちらの調査は、民間の事業所に勤務する給与所得者を対象としたものです。これを12ヵ月で割ると、平均月収は約37万円となります。
これらの調査結果を踏まえると、医師は平均的なサラリーマンの3倍近く稼いでいることがわかります。この結果は、医師は高給取りという一般的なイメージと一致していると言えるでしょう。
ただし、上述の通り医師のなかでも勤務先の規模によって月収には差があります。また、性別や年齢、診療科や働き方によっても平均月収は変わってきますので、次項以降で詳しくご紹介していきます。
転職活動をするにあたって、「年収はどのくらいが相場なのか」、「平均年収はいくらなのか」、知っておくことで転職市場や求人の…
医師の平均月収<男女別>
「令和4年度賃金構造基本統計調査」によると、医師の男女別の平均月収は以下の通りです。
<男女別> 医師の平均月収
性別 | 平均月収 |
男性 | 116.0万円 |
女性 | 87.7万円 |
出典:「令和4年度賃金基本統計調査」を基に作成
男性医師は女性医師に比べて平均月収が1.3倍ほど高くなっています。これは、出産や子育てなどのライフステージの変化により、男性よりも女性のほうが働き方をセーブする傾向が強いことが影響していると考えられます。
医療業界でも、近年は女性医師の増加に伴い、女性活躍を筆頭としたダイバーシティの観点からの施策が必要とされています。現在の…
医師の平均月収<年齢別>
「令和4年度賃金構造基本統計調査」によると、医師の年齢別の平均月収は以下の通りです。
<年齢別>医師の平均月収
年齢 | 平均月収 |
20~24歳 | 42.0万円 |
25~29歳 | 56.0万円 |
30~34歳 | 77.0万円 |
35~39歳 | 110.3万円 |
40~44歳 | 111.7万円 |
45~49歳 | 153.4万円 |
50~54歳 | 135.3万円 |
55~59歳 | 141.9万円 |
60~64歳 | 136.0万円 |
65~69歳 | 142.3万円 |
70歳~ | 126.5万円 |
出典:「令和4年度賃金基本統計調査」を基に作成
20代は研修医や専攻医として学ぶ期間でもあるため、一般的なイメージより月収は低めです。その後、年齢が上がりスキルが身につくと共に月収もアップし、45~49歳でピークを迎えます。50代以降は体力的に働き方をセーブしたり、定年を迎えたりといった影響から、月収は徐々に下がっていきます。
医師の平均月収<診療科別>
「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、医師の診療科別の平均月収は以下の通りです。
<診療科別>医師の平均月収
診療科 | 平均月収 |
内科 | 103.9万円 |
外科 | 112.2万円 |
整形外科 | 107.4万円 |
脳神経外科 | 123.3万円 |
小児科 | 101.7万円 |
産科・婦人科 | 122.1万円 |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 105.6万円 |
精神科 | 101.2万円 |
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 89.8万円 |
救急科 | 101.2万円 |
麻酔科 | 111.2万円 |
放射線科 | 91.9万円 |
その他 | 97.6万円 |
出典:「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を基に作成(年収データを12分割して算出)
内科系よりも外科系診療科のほうが平均月収は高めです。内科系と比較して、外科系は手術で高度な手技を求められることや、オンコールなどの時間外勤務が発生しやすいことが要因となっています。特に脳神経外科や産婦人科は緊急性の高い症例が多く、勤務時間も長くなりがちなため高収入の傾向が顕著です。
一方、眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科・放射線科などは時間外対応や夜間対応が少ないため、その分月収は低くなっていると考えられます。
医師の平均月収<働き方別>
「第23回医療経済実態調査報告」によると、勤務医および開業医の平均月収は以下の通りです。
<働き方別>医師の平均月収
働き方 | 平均月収 |
一般病院の勤務医 | 109.5万円 |
一般診療所の勤務医 | 88.5万円 |
一般診療所の院長 | 223.5万円 |
出典:「第23回医療経済実態調査報告」を基に作成(年収データを12分割して算出)
診療所の院長=開業医は、勤務医に比べて2倍以上の収入を得ていることがわかります。ただし、開業医は医師としての業務に加えて経営も担うことになります。経営手腕によって収入は青天井である一方、経営状態が厳しければ勤務医よりも収入が減少する可能性もあるでしょう。
なお、一からの開業ではなく雇われ院長として就任されているケースもあるため、全てが上記に当てはまる訳ではありません。とはいえ、雇われ院長であっても給与にプラスして院長手当がつくため、一般的な勤務医と比べて給与相場が高いことに変わりはありません。
医師の手取り額の目安
勤務医の場合は給与収入になるため、会社員と同じく額面からあらかじめ各種税金や保険料が差し引かれる形になります。月々の手取り額は、天引きされて額面の60~70%になることが多いです。給与が上がった場合、所得税率も上がるため丸々そのまま手取りの増加とはなりませんが、基本的には額面の増加に比例して手取り額も上がっていきます。
一方、開業医の場合は事業収入となるため、収入から必要経費を支払った後に自分の所得が決まる形となります。そのため、手取りとしていくら手元に残るかは、収入ではなく利益に左右されます。開業資金の借入返済や設備投資なども収入から支払う形になるため、収入と手取り額は必ずしも比例するわけではありません。
医師が月収をアップさせる方法4選
ここまでは、データを基に医師の月収についてカテゴリー別にご紹介してきました。では、医師が月収アップを目指す場合には、どのような方法があるのでしょうか。こちらでは、医師の月収アップの方法を4つご紹介いたします。
転職する
会社員と同じく、医師も職場によって収入の差が大きいです。そのため、給与水準が高い民間病院や地方の病院に転職すれば、比較的簡単に収入アップが見込めるでしょう。
ただし、転職先は収入だけではなく、勤務時間や業務内容も踏まえて検討する必要があります。収入が上がってもそれ以上に忙しくなれば、時給換算では転職前の方が稼げていたということにもなりかねません。また、収入を優先して自分のやりたい業務に携われなくなるのは本末転倒です。
直接的な収入アップを狙うのではなく、転職によって勤務時間や拘束時間を減らすことで時間単価を上げる、というのも一つの方法と言えるでしょう。
アルバイトをする
すでに実践されている先生も多いと思いますが、副業でアルバイトをすれば手早く稼ぐことが可能です。日給10万円のアルバイトに週1回入れば、月収は10万×4回=40万円アップします。医師としての経験も蓄積できるので、スキルアップにつながるというメリットもあります。
ただし、勤務先や身分によっては副業が禁止されている場合もあるので注意が必要です。例えば、初期研修医や立場上公務員となっている医師は、原則的にアルバイトは禁止となっています。アルバイトをする場合、事前に規則を確認しておいたほうがよいでしょう。
医師の働き方を適正化し、心身共に健康に働ける体制を作るための「時間外労働の上限規制」が2024年よりスタートします。副業…
クリニックを開業する
先述したように開業医は高収入であり、経営が軌道に乗れば勤務医の2倍以上稼ぐことも可能です。ただし、クリニックを開業するためには多額の資金と念入りな準備が必要になります。医師としての業務のほか、集患施策やスタッフ採用など、勤務医時代より業務量が増えることも覚悟しなくてはなりません。
なお、一からの開業ではなく、雇われ院長という働き方もあります。その場合、勤務医に近い働き方で給与相場より高い収入を得ることも可能です。収入アップを目的に開業を検討している場合は、雇われ院長も有効な選択肢の一つになるでしょう。
フリーランスになる
フリーランス医師の働き方は、常勤先を持たずにアルバイトやスポット勤務の組み合わせで生計を立てる形になります。アルバイトやスポットは時給換算すると常勤医師より高給になるため、短期的に収入アップを実現できるでしょう。
ただし、実績とスキルがなければ安定して仕事を得るのが難しい場合もあります。福利厚生や医療事故への補償もないため、勤務医と比べて安定性に欠けることは理解しておく必要があるでしょう。また、個人事業主となるため、自身で税金処理や確定申告などをしなければいけない点も注意が必要です。
特定の企業や団体に属さず、個人として仕事を請け負うフリーランス医師。そのメリットやデメリットについて、常勤医師との比較を…
まとめ
今回は、医師の月収に関してさまざまな切り口でご紹介しました。
一般的なイメージの通り、医師の月収はサラリーマンと比べるとかなり高めです。とはいえ、医師のなかでも職場の規模や診療科、年齢、働き方などによって平均月収には差があります。
月収アップを目指す場合、転職やアルバイト、開業、フリーランスなど方法はいくつかあります。大幅な月収アップを狙うなら開業ですが、向き不向きやリスクもあるため慎重に判断する必要があるでしょう。手軽に月収アップを狙うなら、まずは転職やアルバイトから検討するのがおすすめです。
医師ジョブでは、収入面はもちろんその他条件も含め、先生の希望が叶う職場探しをサポートいたします。常勤・アルバイト共に対応しておりますので、是非お気軽にご相談ください。