転職先選びの判断材料の一つとなる「病院見学」。
医学生が研修先を選ぶ際に病院見学をするように、医師の転職においても事前に病院見学を行うのが一般的です。面接と一緒に行われることも多く、病院担当者の案内のもと院内を実際に見て回ることができます。
病院見学は、職場について気になる点を直接質問できる貴重な機会です。しかし、漠然と見ているだけでは本当にただ見学するだけで終わってしまい、せっかくの機会が無駄足になってしまう可能性もあります。
そこで今回は、病院見学で聞くことリストとして、病院見学時に確認しておくべきポイントや見ておくべきポイント、そしてなかなか聞きづらい待遇面に関して質問するコツなどをまとめて解説いたします。
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病院見学の質問を考える際の留意点とは?
病院見学は入職前に実際に現場を見て、勤務している方々に直接お話を聞ける数少ない機会です。こちらでは、病院見学を有益なものにするための留意点を解説いたします。
病院見学と面接はセットで考える
病院によっては、病院見学と面接をセットで行うケースもあります。事前に選考の流れを確認し、必要に応じて一緒に面接対策も進めることが大切です。
また、面接とは別に病院見学を行う場合でも、先方からはあくまでも転職希望者として見られていることを忘れてはいけません。見学の際の印象が選考に影響する可能性もあるため、病院見学からすでに選考は始まっていると考えた方がよいでしょう。
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事前の情報収集を怠らない
病院見学が決まったら、事前に病院概要・採用条件などをしっかり確認しておくことが大切です。受け身の姿勢で臨むと、ただ院内を巡るだけで終わってしまい、後からもっと確認しておけばよかったと後悔することにもなりかねません。
また、情報収集が足りないと的外れな質問をしてしまう可能性もあります。病院のホームページや募集要項などを確認したうえで、事前にチェックポイントを整理しておくと安心でしょう。
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院内スタッフだけが知っている情報を聞き出す
診療の実情や職場の雰囲気などは、院内で働く人にしかわからない情報です。せっかく直接話を聞けるチャンスですので、募集要項ではわからないような具体的な情報を聞けるとよいでしょう。病院の詳しい情報を聞くことで、前向きな姿勢をアピールすることもできます。事務長や採用担当者のほか、可能であれば現場の医師やコメディカルとも話ができるとよいでしょう。
質問に優先順位を付ける
積極的に質問することは悪いことではありませんが、無遠慮に何でも聞いていいというわけではありません。時間にも限りがあるため、質問の仕方やタイミングには配慮が必要です。例えば、いきなり待遇面について質問すると、担当者に悪い印象を与えかねません。まずは業務内容や労働環境についての質問を優先し、待遇面に関してはどうしても譲れない点に絞って質問するのがよいでしょう。
病院見学の際に避けた方がいい質問
病院見学で質問する際には、答える側への配慮も必要です。気になることをなんでもストレートに聞いてしまうと、内容によっては心証が悪くなり、その後の採用選考に影響する可能性もあります。こちらでは、病院見学の際に避けた方がいい質問について解説いたします。
待遇や福利厚生に関する質問
給与や賞与、手当、休暇といった待遇や福利厚生に関する質問は、なるべく避けた方が無難です。働くうえで重要なポイントではありますが、他に聞くべきことを差し置いて待遇面の質問ばかりしてしまうと、「待遇にしか興味がない」と判断されてしまう可能性があります。
基本的な内容は募集要項や求人票に記載されているケースが多いため、まずはそちらを確認するとよいでしょう。記載がない事項について確認したい場合には、タイミングや聞き方を工夫することが大切です。
調べればわかる質問
求人票に記載されている内容や、病院のホームページに記載されている内容など、調べればすぐにわかる内容についての質問も避けるべきです。何も知らない状態で見学に臨むのは、失礼に当たります。また、事前に情報収集をしていないことが先方に伝わり、志望度が低いと受け取られてしまう可能性もあります。
なお、情報収集をしたうえで、それをさらに深掘りするような質問であれば問題ありません。事前にしっかり調べていることが伝われば、好印象につながる場合もあるでしょう。
回答に困る質問
担当者が回答に困るような質問も控えた方がよいでしょう。たとえば、病院の経営状況や離職率、個人の給与や賞与額、他の候補者の選考状況などが当てはまります。相手の立場的に答えづらい、話しづらいと考えられる質問は避けた方が無難です。
ストレートに聞いてしまうと、相手を困らせるだけでなく、デリカシーに欠けると判断されてしまう可能性もあります。自分の興味関心だけでなく、答える側への配慮も忘れないようにしましょう。
要領を得ない質問
質問をする際には、相手に分かりやすいよう簡潔に話すことも大切です。思いつきで質問していると、話がどんどん脱線してしまい、何を聞きたいのかわからなくなってしまう可能性もあります。質問意図がわからないと相手も答えづらいため、事前に質問リストをまとめておくなど、端的に伝えられるようにしましょう。
また、一度聞いた内容を再度質問するのも印象が良くないです。必要に応じてメモを取るなど、話の内容を忘れないようにすることも大切です。
病院見学で質問する際のポイント
病院見学を有意義なものにするためには、積極的な姿勢で臨むことが大切です。しかし、質問の仕方やタイミングには注意が必要な部分もあります。こちらでは、病院見学で質問する際のポイントについて解説いたします。
自分から積極的に質問する
限られた時間で多くの情報を得るためにも、気になることは積極的に質問するとよいでしょう。受け身の姿勢でいると文字通りただ見学するだけで、これといった収穫もなく終わってしまう可能性もあります。
ただし、その場で思いついたことをなんでも質問するのではなく、事前に情報収集を行い、聞きたいことをまとめておくことが大切です。聞きたいことを全て聞けるとは限らないため、あらかじめ優先順位をつけておくとよいでしょう。
質問するタイミングに気を付ける
質問する際には、場所やタイミングに配慮することも大切です。見学中は基本的に自由に質問して問題ありませんが、患者さんが近くにいる場合や、周囲が慌ただしい場合には質問を控えましょう。周囲の状況を確認し、落ち着いたタイミングを見計らって質問した方が話もゆっくり聞けるでしょう。
また、診療科のトップに話を聞きたい場合や見たい設備などがある場合には、調整が必要なケースもあるため事前に伝えておくとスムーズです。
病院見学で聞くことリスト<業務編>
病院見学では、具体的にどのようなことについて質問すればよいのでしょうか。こちらでは、まずは業務に関して積極的に聞いておくべきポイントを解説いたします。
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医師体制・スタッフ体制
所属する診療科の常勤医師の人数や非常勤医師の割合、役割分担などを確認しておくと、おおよその業務量や忙しさが推測できます。内科と外科の関係性や、スタッフ体制・スタッフとの関係性も重要です。
また、医療クラークなどの事務サポートの有無によっても業務負担は変わります。病院全体でタスクシフティングが進んでいれば、診療に集中しやすい体制が期待できるでしょう。
・ この診療科には何名の医師がいますか?
・ 常勤と非常勤で役割分担はありますか?
・ スタッフ体制を教えてください など
患者数や主な症例
1日の来院数や入退院数のほか、診療体制を確認しておくと具体的な忙しさがイメージしやすくなります。
また、診療科や病床区分が同じでも、病院によって主な症例や患者層などは変わってきます。病院ごとの傾向も確認しておくと、ミスマッチが起こりにくくなるでしょう。
・ 外来は何診体制ですか?
・ 病棟は主治医制ですか?
・ どんな症例や患者層が多いですか? など
診療設備
設備が整っているかどうかという点も、業務量を推し量るための指標になります。医療機器に関しては、型やメーカーなども気になるポイントです。事前にお願いしておけば実物を見せてもらえる場合もありますので、病院のホームページなどで導入設備を確認しておくとよいでしょう。
また、診療科の拡大を目的に募集をしている場合などは、新しい機器の導入を検討している場合もあります。
・ 電子カルテやPACSは導入されていますか?
・<医療機器>はいつ頃導入されたものですか?
・ 新しい機器の導入予定はありますか? など
病院見学で聞くことリスト<労働環境編>
続いて、労働環境に関して聞いておくべきポイントを解説いたします。
医師の構成・勤続年数
在籍医師の年齢構成や勤続年数がわかると、労働環境のイメージが湧きやすくなります。一概にそうとは言えませんが、勤続年数の短い医師が多かったり中堅層の医師がいなかったりする場合には、入退職者が多い職場の可能性もあるため注意が必要です。
また、中堅~ベテラン医師の転職の場合、院長や診療科のトップが自分より年下というケースもあり得ますので、事前に確認しておいたほうがよいでしょう。
・ 私と同年代の先生はいますか?
・ 部長の先生と私の年齢が近いですが、気にされないでしょうか?
・ 今いる先生方はどのくらい勤務されているのですか? など
職場の雰囲気
実際の職場の雰囲気は院内で働く人にしかわからない部分ですが、質問しても当たり障りのない回答しか得られない場合も多いです。ストレートに質問するより、まずはすれ違うスタッフや医師の表情、挨拶の有無などに注目するとよいでしょう。勤務中の医師やスタッフの様子を注意深く見ることで、リアルな雰囲気を垣間見ることができます。
また、病院見学の時間帯にもよりますが、職員食堂の様子や定時後の医局の様子などからも勤務実態を窺い知ることができるでしょう。
・ 皆さんはどのように食事をとられていますか?
・ 医局内では皆さんどのように過ごされていることが多いですか?
・ 病院主催の懇親会やイベントはありますか? など
必要な手技・教育体制
同じ診療科の募集でも、病院の特性や患者層、担当病床によって求められる手技やスキルは変わってきます。特に、転科や医療区分の異なる病院への転職の場合には、必須スキルや入職後の指導環境について事前に確認したほうがよいでしょう。
また、勉強会や研修制度、学会参加などについて知ることで、今後のキャリアアップの参考にもなります。
・ 他科入院患者さんに対するコンサルなどはありますか?
・ 研修制度や院内勉強会などはありますか?
・ 学会参加時の費用補助はありますか? など
病院見学で待遇面について質問する際のコツ
病院見学でも面接でも、一般的に待遇面に関する質問はあまりしない方が無難とされています。しかし、入職後のミスマッチを防ぐためにも、うやむやなままにしておくのは得策ではありません。どうしても聞きたいことがある場合には、他の質問がすべて終わった後に以下を意識しながら聞くとよいでしょう。
前置きをする
聞きづらいことを質問する場合、前置きの一言を添えると理解を得やすくなります。「仕事とは直接関係のない質問で恐縮ですが~」「念のための確認なのですが~」などワンクッション置くだけでも、待遇ばかりが気になっていると思われるリスクは減らせるでしょう。
オブラートに包む
同じ内容の質問でも、聞き方によって印象は大きく変わります。知りたい情報を上手く聞き出すためには、オブラートに包んだ聞き方を意識すると悪い印象になりにくいです。
たとえば、有給休暇が取りやすい環境か気になる場合、「有給休暇はちゃんと取れますか?」とストレートに聞くよりも、「お休みが取りづらい時期はありますか?」など、遠回しに質問意図が伝わるような聞き方のほうが印象はよいでしょう。
質問の意図を伝える
なぜ待遇面について聞いたのか理由を伝えると、誤解からマイナスなイメージを持たれるのを防げます。たとえば、残業や早番・遅番の有無について聞きたい場合、「子どもの送迎があるので~」などの事情を伝えれば、働く意欲が低いと勘違いされずに済むでしょう。やむを得ない事情がある場合には、正直に話したほうが後々のトラブルも避けられます。
まとめ
今回は病院見学で聞くことリストとして、事前のチェックポイントや実際の質問例などを詳しく解説いたしました。
病院見学は、入職前に直接院内を見て回り、話を聞いたり雰囲気を感じたりできる貴重な機会です。せっかくの機会ですので、気になることは聞き方やタイミングに配慮しながら積極的に質問し、転職先選びに活かせるとよいでしょう。
とはいえ、病院見学という限られた時間ですべてをチェックするのは難しいのも事実です。そのような場合、スポットや非常勤などでトライアル勤務を検討してみるのも有効です。また、情報収集や日程調整などに十分な時間を割けない場合には、転職エージェントを活用してみるのもよいでしょう。
医師ジョブでは、病院見学含め先生の転職活動をトータルサポートいたします。トライアル勤務の打診なども承りますので、是非お気軽にご相談ください。