手術による治療を特徴とし、医師の花形とも言われる外科医。
漫画やドラマの影響から、外科医に憧れを持つ人も少なくないでしょう。しかし、激務のイメージも強く、研修医や医学生のなかには外科に進むか迷っている方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、外科医の実際の仕事内容や平均年収、また外科医に向いている人の特徴などを解説します。
外科医とは
外科医とは、手術などの外科的処置によって病気や外傷の治療を行う医師です。内科医が投薬など身体の内側から働きかける治療を行うのに対して、外科医は手術など身体の外側からアプローチする治療を中心に行います。治療対象は内臓・骨・神経など幅広く、投薬治療では回復が見込めない重篤な疾患や緊急性の高い症例を扱うことも多いです。
外科全般を幅広く扱う一般外科のほか、消化器外科・呼吸器外科・心臓血管外科・脳神経外科など、専門とする領域によって診療科は細分化されています。泌尿器科や耳鼻咽喉科なども、手術を行うという意味で広義の外科医に含まれます。
なお、世間一般では外科医=外科系診療科の医師を指すことが多いですが、医療現場で外科医という場合は主に消化器外科医を指すことが多いです。
外科医の主な仕事内容
手術のイメージが強い外科医ですが、実際には手術だけでなくさまざまな業務を担当します。ここでは、外科医全般に共通する主な仕事内容について解説します。
1.診察や各種検査の実施
外科医の仕事内容として、外来や病棟の受け持ちがあります。問診や触診・視診といった診察や各種検査などを行い、患者さんの症状を把握したうえで傷病名の診断や手術適応の判断、治療の調整などを行います。
主に手術前後の患者さんの通院治療や入院管理を受け持ち、必要に応じて処置や経過観察、コメディカルへの指示出しなどを行います。
2.手術および前後の業務
手術前には術前準備として患者さんの病歴や健康状態を評価し、必要な検査や治療を行います。また、手術内容やリスクなどについて、患者さんやご家族に説明を行うのも外科医の仕事です。
手術は事前に立てた手術計画に沿ってチームで行います。患部の切除や外傷部位の修復、人工物の留置など、疾患によって手術内容はさまざまで、腹腔鏡や手術支援ロボットを用いる場合もあります。
手術後は合併症の兆候がないかなども含め慎重に経過観察を行い、処置が必要な場合には対応や指示出しを行います。
3.診療以外の業務
診療以外にも、業務の一環としてカンファレンスや症例検討会・研修会・委員会への参加や、書類作成などの事務作業もあります。学会シーズンには学会に参加したり、人によっては論文執筆や発表準備を行ったりと、学術的な仕事にも取り組みます。
また、役職によっては若手医師の指導など、後進の育成に携わる場合もあります。
外科医の年収・給与目安
労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、病院に勤務する外科医の平均年収は1374.4万円となっています。これは本調査における全科平均よりも高い水準で、「脳神経外科」「産科・婦人科」に次いで全診療科の中で3番目に高い金額です。
外科医は手術などで高い技術力が求められることに加えて、緊急対応のために夜間や休日の時間外勤務も発生しやすく、勤務時間が他の診療科と比較して長くなりがちです。こうした多忙を極める働き方が、収入にも反映されていると考えられます。
数ある診療科のなかでもハードワークのイメージが強い外科医。独り立ちするまでの修行期間が長く、多忙な割に低賃金というイメージを持たれがちです。こうしたイメージは、果たして外科医の実態に即したものなのでしょうか。今回は、外科医の年収[…]
外科医のやりがい・魅力
外科医のやりがいとして、まず手術を通じて自分の手で患者さんを救えるということが挙げられます。他の医師や看護師をはじめとしたチームで連携し、難しい手術を成功させたときには大きな達成感が得られるでしょう。術後に患者さんが喜ぶ姿を見たり、感謝の言葉を貰ったりすることは、大きなやりがいにつながります。
また、手術を重ねるなかで、自身の技術向上を実感しやすいというのも外科医ならではの魅力です。近年は手術の高度化や低侵襲化が進んでいますが、技術の進歩と共に新鮮な学びや刺激が得られるというのも魅力でしょう。
外科医の仕事が大変といわれる理由
外科医の仕事が大変と言われる理由としては、体力的・精神的な負担が大きいことが挙げられます。
手術では何時間も立ちっぱなしで集中力を保ち続けなければならず、体力や気力が求められます。生死に関わる手術は責任やプレッシャーも大きく、結果次第で医療訴訟に発展するリスクもゼロではありません。また、夜間や休日に緊急の呼び出しがかかることも多く、不規則かつ長時間の勤務に陥りがちです。
やはり人の命を預かる手術を行うという点が、外科医ならではのやりがいであると同時に大変な部分でもあります。
外科医になる方法とは
外科医になるには、どのようなプロセスを踏めばよいのでしょうか。ここからは、外科医になる方法について解説していきます。
1.高校卒業
外科医に限らず、医師になるには6年制の大学医学部に進学し、医師免許を取得する必要があります。高校卒業後は、まず大学医学部の入試合格を目指しましょう。
高校卒業後に違う道に進んだ場合でも、医学部に入り直せば医師を目指すことが可能です。いずれの場合でも、医師国家試験の受験資格を得るためには、まず大学医学部への進学が必須となります。
2.大学医学部卒業
大学医学部では、座学や実習を通じて医学について幅広く学びます。1~4年までは座学中心、5年からは実習中心のカリキュラムとなっており、5・6年時には医師国家試験の前に、多くの大学でまず卒業試験があります。
卒試で大学側が提示する合格基準を満たすことができなかった場合、大学によっては国試の受験資格を失い、留年や放校となる恐れもあります。国試よりも卒試の方が難しいと言われることもあり、まずは卒試をパスすることが肝心です。
3.医師国家試験を受ける
医師国家試験は、通常大学6年次の冬に受験することになります。試験は2日間に渡り、1日200問、計400問が出題される形式となっています。合格率は毎年90%程度ですが、合格基準に相対基準が含まれるため、高得点が取れれば合格できるという単純なものではありません。
この医師国家試験に合格し、医師免許の申請手続きを行うことで、医師免許が取得できます。
4.臨床研修を受ける
医師免許取得後はまず2年間の臨床研修を受け、医師としての基本的な診療能力を身につけます。研修はスーパーローテート方式が採用されており、外科医を目指す場合でも、内科や救急科などさまざまな診療科を回って研修を受ける必要があります。
医師として診療に携わるためには、必ずこの臨床研修を修了する必要があります。
5.外科の修練・外科専門医試験を受ける
臨床研修の修了後には自身の専門分野を選択することになり、そこで外科を選択することで外科医としてのキャリアがスタートします。
専門医の取得を目指す場合には、まず基本領域となる「外科専門医」の取得を目指します。外科専攻医として指導医のもとで3年間の専門研修プログラムを修了し、外科専門医試験に合格することで外科専門医の取得が可能です。外科専門医を取得できるのは、最短で卒後6年目となります。
6.専門分野で訓練
基本領域の外科専門医を取得後は、より専門性を高めるためにサブスペシャルティ領域の専門医取得を目指します。消化器外科・呼吸器外科・心臓血管外科・小児外科・乳腺外科・内分泌外科のうち、希望する専門分野を選択し、さらに数年の専門研修を修了することでサブスペ領域の専門医が取得できます。
領域によっては基本領域との連動研修が認められており、たとえば消化器外科専門医の場合、最短で卒後8年目に取得が可能です。
7.専門分野を極める
サブスペ領域の専門医を取得すると、その領域において一人前の外科医になったといえるでしょう。
その後はさらに修練を重ねながら、エキスパートとして科を牽引したり、後進の育成を引き受けたりと、診療科のリーダー・指導者としての役割を担っていきます。より専門分化された専門医・認定医や指導医の資格取得を目指すことも可能です。
なお、外科医として働くうえで、最低限必要なのは臨床研修の修了です。専門医の取得以降はあくまでも任意となり、必ずしも取得が義務付けられているわけではありません。
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外科医に向いている人の特徴
外科医に向いている人の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
- プレッシャーに強くバイタリティがある
- コミュニケーション能力が高い
- 向上心があり研鑽を厭わない
外科医のメイン業務は手術であり、手術を行うにはプレッシャーに負けない精神力や集中力が求められます。緊急の呼び出しも多いため、激務に耐えうる体力も必要です。また、チーム医療が基本となるため、周囲とのコミュニケーション能力も欠かせません。さらに、高度な手技を身につけるためには、自己研鑽が必須です。地道なトレーニングにも向上心を持って取り組む必要があるでしょう。
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医師の転職・バイトなら医師ジョブ
外科医として働くなかで、多忙を極める働き方にお悩みの先生もいらっしゃるでしょう。そういった場合には、転職を検討するのも一案です。近年は働き方改革により、ワークライフバランス重視で働ける病院も増えてきています。
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まとめ
外科医は、手術などの外科的処置を特徴とする医師です。診療科の特性として体力的・精神的な負担が大きいという側面もあるものの、手術を通じて人命救助に直接貢献できるというのは、外科医ならではのやりがいでしょう。近年は働き方改革の推進により、勤務環境の改善も進んできています。
激務が辛いという場合、転職するのも選択肢の一つです。業務量が割に合わない、ワークライフバランスを改善したいなどのお悩みがある場合には、ぜひ医師ジョブにご相談ください。
▼ 参考資料
外科医 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
調査シリーズ No.102 勤務医の就労実態と意識に関する調査|労働政策研究・研修機構(JILPT)
つらいときを乗り越えた先に、外科医としてのやりがいは必ずある | 小濵 和貴 先生(京都大学医学部附属病院)のストーリー | メディカルノート
やっぱり外科が好き!(山本雅一,高橋慶一,北川雄光) | 2009年 | 記事一覧 | 医学界新聞 | 医学書院
一般社団法人 日本専門医機構一般社団法人 日本専門医機構
資格制度|日本大学医学部外科学系消化器外科学分野